「ステファンさん」
「あい」
「マッサンさん」
「あいあい」
俺は適当に返事をする。まったり機織りをして2日ぐらい経った後だった。
相手はつるっぱげの40ぐらいの日に焼けたいい感じの人だ。
「あのですね、俺たちマッサン機織り組なんですけど」
「ちょっとまって、その名前なんなの」
「機織り組ですか?」
「その前」
「マッサン機織り組ですか?」
「そうそう。それなんで俺の名前ついてるの?」
「だってこの機織り機、マッサンさんのじゃないですか、やだなあ」
「そうだね。で名前はいつの間に」
「いや、結構前ですよ」
確認したら、初日だった。知らなかったよ。
「で用件は?」
「そうでした。レベルがもうちょい行ってる人たちはですね、今度、森へ行ってサイレントスパイダーをですね」
「ああスパイダーね」
「ご存知でしたか」
「いや知らない」
「あっはい、そのスパイダーをテイムしようという作戦でして」
「すでにテイムした人はいないの?」
「まだ目撃情報はないですね」
「その前人未踏のテイムをしに行くと?」
「そうです」
「で、なんで俺に聞いたの?」
「一緒にどうですか。ぜひ、テイムの知恵を出してほしくて。あとリーダーとして何となく、それから運が高そうなので、いるとプラス補正かなとか適当に」
「適当なんだ」
「あっはい」
「まあ、いいんじゃないですか、ご主人様」
「ちょ、まあ、いいか」
「はい、もちろんいいですよね。ご主人様」
アカリが割り込んできて勝手に承諾した。
いいのかよ。ホイホイくっついていって、足手まといとか勘弁願いたいんだけど。
もちろん俺のことだ。アカリではない。
むしろアカリはヒーラーとして便利だろう。しかし俺は違う。
「まあいいじゃないですか。ユーザーイベントみたいなものです」
「なるほどユーザーイベントね」
「そうです」
「まあいいか」
「はい」
まるめ込まれた、というかまあいいや。
俺はゲーム内では無職。ニート。行き当たりばったりが人生というものだ。あはははは。
草原を進んでいる。全部で6人だろうか。
このゲームではパーティーの最大数は何人だったかな。そんな細かい仕様までいちいち覚えてるわけないやんけ。
パーティーとかアカリとしか組んでないわ。
とりあえず全員を入れることはできたので、6人以上だろう。サポートAIはカウントされてテイムモンスターはカウントされないみたいだけども。
ほうほう。テイムが入らないということは、最大で12人分まではいけるということだな。
例えば吸血鬼のモンスターを鞭打ってテイムとかすれば、いひひひ。
「あ、ご主人様が悪いこと考えてる顔してます」
「え、そんなことないよ、みんなの前で何言ってるのかなこの子は」
「えーだってぇ」
「極めて健康的です」
「健康的??」
「あ、違った健全的です」
「ああ健全的ね、ふーん」
周りの俺たちを見る目が痛いじゃん。ほらアカリどうしてくれる。
非難の視線をアカリに向けたら、静かになった。ほら俺が正しい。
とにもかくにも、草原を抜け、森に入った。
「俺ここから先、始めてだわ」
「では一応、みんなで周りを固める感じでいきます」
つるっぱげおじさんがカッコいいことを言って、俺たちをガードする陣形になった。
なるほど、これは頼もしい。
ちなみにテイムモンスを連れているのは俺だけの模様。