町に戻ってきた。俺たちは門をくぐる。
そこで衛兵が話しかけてくる。
「お、珍しいな。グリーンクローラーか」
「あ、は、はい」
俺はびくびくしながら答えた。
「取ってきたばっかりなのか」
「そうです」
「ウサギやスライムくらいならいいんだが、大きなモンスターは迷惑になることがあるから、場所によっては魔石化するんだぞ。クローラーくらいの大きさなら通りを連れて歩くくらいなら構わないけど」
「魔石化ですか?」
「そうだ。召喚獣みたいに、モンスターが依代の魔石になる状態だな」
「そんなことができるんですか」
「そうだ」
「へぇ、ありがとうございました」
「なに」
魔石化の話は知らなかった。
ある意味、ゲーム的要素だろう。確かに巨大なドラゴンとかテイムして、宿屋や武器屋とかに入れないし道路に置いておくのも邪魔かもしれない。
あと、ログアウト中どうすんべって問題もあるんだろう。
クローラーを連れている俺たちを、町の人や他のプレイヤーは不思議そうに見てくる。
「キュ」
「あ、鳴いた、かわいいね」
「えーキモイじゃん」
「いやいや、キモかわでしょ」
とかなんとか言ってるのが聞こえてくる。
噴水広場まで戻ってきたので、小休止だ。お水もいるし。
噴水に頭を突っ込んで飲むイモムーもそれはそれでかわいい。
「そんじゃ、適当にドロップを露店で売ろう」
「はい」
そうしてゴザを敷いてウサギ肉、ウサギの皮などを並べる。
イモムシのドロップは、イモムシ肉だ。緑色をしている。これ誰が食べるのだろうか。
まあ用途はわかんないけど、いいか。
俺はアカリを見ながら、うんうんと作業をしていた。
アカリは器用な手先でミサンガを作っている。
俺も真似しているけど、ちょっと編目が不均一とかになっていまいちだった。
────────
▽白いミサンガ
────────
魔防力 +2
────────
鑑定ではないけど、基本のマーカー表示の拡張でも基本情報だけは表示される。
うん、ミサンガにも補正がある。
服とかにも補正があるので、アクセの補正があるのは別に不思議でも何でもなく、この世界では普通のことだと受け止められていた。
実はすごいと思ったのは、本当に杞憂らしい。
魔防力が上がっても、この周辺のモンスターはあんまり魔法を使ってこないので、あんまり意味がない、気がする。
俺が知らないだけかもしれないけど。
ただ、このマーカーの鑑定もどきは、すべての能力を完全に説明してないという疑いがある。
ミサンガといえばお守りだから魔法防御なのは理屈にかなっているけど、身代わりになる特殊効果とかあるかもしれないし。
そうして、露店をしながらイモムーに糸を吐いてもらい、ミサンガを量産した。
合計24個のミサンガができた。
これもついでに並べて売っていく。
こんな地味な白いミサンガだけど、この世界にはなかったらしく、あるのはプレイヤーメイドのお手製だけなのだろう。
たまにプレイヤーの人が買っていった。
お値段500イジェル。
なんか高い気がしたけど、俺が露店を見て回ってアクセとかの値段を見ると、思ったよりどれも高かったので、これぐらいが適正だと判断したんだ。
値段調査のために、声をかけて回るのは結構疲れた。
「このミサンガ、シンプルだけど補正もついてていいですね」
女の子が声をかけてきた。
まだ初心者装備だ。俺たちもだけど。
「いくらですか?」
「500イジェルだよ」
「そっか、どうしようかな。うーん」
アカリがひらめいたという風に手を打って話しだす。
「そうだ、自分で編んでみる? そしたら材料代だけで300イジェルってどう? ご主人様もいいですか?」
「ああ、俺はいいよ」
「ほんとですか。是非に」
女の子は2人組だったので、2人がこちら側に自分のゴザを敷いて座った。
そうして、女の子たちの編み物教室になった。
「こうして、こうして、こうです」
「なるほど~」
「こうやって編むんですね」
なんだか楽しそうだ。俺も仲間に入りたいような、女の子の輪には入れないような感じもする。
ただ俺ももう慣れたもので、黙々と編んでいた。
そうするうちに、また女の子3人組が声をかけてくる。
「編み物教室ですか?」
「何編んでるんです?」
「ミサンガだよ」
「あ、これですね。シンプルだけどいいですね」
こうしてまた女の子が増えてアカリを入れて全部で6人の女子たちが、黙々とミサンガを作るという作業をしだした。
できた人も、結局1つではなくて、複数作って下取りとか友達用とかで何個も作っていた。
イモムーは女の子に頭を撫でてもらって、糸を吐くのをうれしそうにやっていた。
表情とかはわからないけど、なんとなくね。
イモムーは男の子なのかな、それとも女の子なんだろうか。