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17話 露店の委託


 イチゴとお焼きの投入は、一定の成果を出した。

 とくに、ごはん時以外は客が減っていて露店を畳んでいたのを、おやつタイムの需要にも応えられるようになったので、午後は丸々営業を続けた。

 特に人気なのはイチゴだけど、意外と雑草お焼きも売れている。

 男女問わず、お焼きは珍しいのか、一度食べてみようという人が結構いた。


 ただ、ちょっとどうしようかなと思うこともある。


 現状、この露店で手一杯なのだ。

 メニューも簡単なものなら増やせる。もしくは作り置きで増やすことはできる。

 そうすると夜間なども下ごしらえとかの作業が必要になってくる。


 これ以上、俺たちが「冒険」的なことをするのに、若干、足枷になっていた。


「どうしようか」

「お兄ちゃんのしたいようにすれば?」

「まぁそうなんだけど」


 俺たちは、翌朝、冒険者ギルドへ行って、クエストを受けるのではなく、クエストを発行するほうへ並んだ。


「というわけでして。誰か薬草料理の露店販売のアルバイトをですね」

「いいですよ。一度に2人ずつ、合計4名をローテーションでどうでしょうか」

「はい、それでいいです」


 その日の午後に面接をして、NPC、地元民のお姉さんを面接して、その中から4人雇い入れることになった。

 そして即日、その日の夜の販売から、まず4人の前で手順を一通り説明して、材料や薬草なんかを渡してNPCだけでお店を維持できるように段取りをした。

 こうして俺たちの手から、野草料理店の仕事が離れるようになった。


「お兄ちゃん、手は空いたけど、なんだか寂しいね」

「そうだな。まあニートに戻っただけだ」


 ちなみに利益の半分ぐらいはバイトの女の子たちへの給料になった。

 この町での水準でいうと、給料は結構高いらしい。


 残りは俺たちの不労所得というか、監督する仕事はある。いわゆる経営ってやつの作業はあるといえばあった。


 鍋とかも、移動して使いたいことを考えれば自分用にまた買い足さなければならなかったし。


 これで手持ちもだいぶ寂しい。

 半固定で、料理露店をいつも出すというのは、意外と苦労も多いということが分かった。

 まあ普通に仕事みたいになっていたから、いいんだ。


 俺たちはこれでも冒険者なんだから。



 露店の手が離れて、やっと他の露店をゆっくり見られるようになった。

 ゲーム開始から、リアルで5日目。


 けっこう長くプレイしてる風に思えるけど、それは加速倍率のせいで、一週間たっていなかった。

 雑草料理店はNPC店舗になって安定して「ゲーム内でいつもある店」になったので、少し有名になりつつあるらしい。


 俺たちがオーナーというのは知られていない。

 なんでも露店の女の子たちがかわいい評判らしい。


 ごほん、ごほん。

 俺の趣味じゃないぞ、たまたま、本当に、たまたまかわいい子ばっかりだったんだ。


 給料もいいからやる気があるらしく、みんな笑顔で仕事をしている。


 結局4人のなかで3人ずつ常駐してて、1人が順番に休みを取っているとかなんとか。


 残った資金をもとに、ご飯は偵察を兼ねてその辺の露店で食べるだけで、ずっと露店を見て回っていた。

 だいぶ、相場とかにも詳しくなったし、出てくるモンスターにもちょっと詳しくなった。


 ワイルドラビット、スライム、ワイルドドッグ、グリーンクローラーが近場のモンスターだ。

 そして森に行くと、ハニービー、ワイルドボア、ワイルドベア、それからゴブリン。

 そう、こん棒のゴブリンがいる。

 あとはポイズンスネーク、ポイズンマッシュ、アシッドアント、サイレントスパイダー。


 こんな感じだろう。


 俺たちはまだ、ワイルドラビットとしか戦ったことがない。

 ははは。まあいいんだ、別に戦闘したいわけじゃないし。



 しかし、これで俺の武器を考えなきゃならんのは、本当だ。

 ゴブリンのこん棒もあんまり使ってないけど、それでも愛着がないとはいえない。


「いっそ、縄文人みたいな装備一式にして、そういうプレイとか」

「いやですよぉ。もっとカッコいいのがいいです」

「だよな」

「はい。カッコいいのお願いします。ご主人様」


 ご主人様というときは、甘えている自覚があるときだろう。


「じゃあ武器どうしよう」

「主人公の武器はだいたいが剣ですね」

「剣かぁ、でも槍のほうが敵が遠くて、怖くないんだよな。普通に巨大な敵相手に、接近戦をわざわざする必要もあるまいて」

「まあそうなんですけど、そうすると魔法とか。でも前衛の人がいないとですよね」

「そうなんだよな。魔法剣って手もあるけども」

「カッコいいですね魔法剣」

「だろだろ」

「でも魔法剣なんて売ってます? それともスキルなんですか」

「ぜんぜんしらん」

「ですよね」


 そうなんだ。まだ開始5日目なので、みんな手探り状態でゲームを進めていた。

 これといった地雷も逆に定番、テンプレといったビルド、構成の事をビルドっていうんだけどそのテンプレビルドも定まっていなかった。

 回復もヒーラーがいれば楽だけど、ポーションもそれなりに使い勝手がいい。

 そもそも序盤ではダメージがあまり痛くないらしい。

 というのもすべてのプレイヤーが運動神経が良くて、回避できまくる、なんてわけがあるわけないので、ある程度ダメージを食らってもそれなりに戦闘になるように調整されているというのが、プレイヤーたちの今のところの所感だ。

 もちろん回復剤よりもヒールのほうが安く済むんだけど、ヒーラーだってMPが無限ではないし。


 このゲームではMPは立っていたり戦闘中でもゆっくり回復する。HPもゆっくりだけど回復はする。

 だからのんびり戦闘して、MP使って回復させれば、HPも危険ではないらしい。

 もちろん座ったほうがMPもHPも回復速度は速い。


 ゲームによってはバランスがけっこうシビアで、序盤からスライム相手に死闘を繰り広げるものもあるので、やっぱりイージーモードらしい。

 ただその序盤を抜け先まで、初心者向け設定であるかは、まだはっきりわかっていないんだそうだ。


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