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9話 次なる料理


 そうそうに露店でハーブサラダを売り切った俺たちは、次の行動をすることにした。

 まずは、サラダの材料になる草をたくさん、効率よく集めたい。

 一番いいのは専用の畑を持つことだけど、まだ無理っぽいので、次善策を探そう。


「冒険者ギルドへ」

「はいはい」


 ご機嫌でアカリは俺の手をとって歩いていく。

 異世界ファンタジーがそんなに好きなのだろうか。


「うふふ、お兄ちゃんがまじめに働くなんて」

「アカリなんか言ったか?」

「いえ、なんでもないですぅ」


 ごまかしてきたけど聞こえてるぞ。


 冒険者ギルドで仕事を探した。

 そして、俺たちが探し求めるいいやつを見つけた。


「これだ」

「なるほどぉ」


 アカリは感心しきりだ。



 俺たちは町の中、空き地に来ていた。

 今日の仕事は、ここを農地にする依頼者さんの頼みで、雑草抜き、小石取りをすることだった。


「じゃあはじめましょうか?」

「はい、お願いします」

「抜いた雑草は、ステファン君がほしいと」

「はい、そうです」

「わかった。全部あげよう。ついでに小石もいるなら持って行っていいよ」

「ありがとうございます」


 もらえるものはなんでももらっておこう。何かに役立つかもしれない。

 アイテムボックスはほぼ無限らしい。


 土地はそこまで広くない。

 しかし一面に雑草が生えている。ほとんどはサラダのメインになるルク草だった。


「こんなに生えてるなら当分困らないな」

「そうですね。どんどん取りましょう」


 草を次々にアイテムボックスに入れていく。

 ははは、宝の山だ。


 草を抜いたら、今度は石拾いだ。


 小石、小石、小石、鉄鉱石、ガラスの破片。

 なるほど、ここにもいろいろ落ちている。


 俺たちはホクホク顔で、作業をしたのだった。

 作業賃は、1人1,000イジェル。


「ありがとうございました」

「こっちこそ、ありがとうよ」

「いえいえ、では失礼します」


 夕方になる前ぐらい、作業が終わった。

 よし、夜ご飯の需要に何とか間に合いそうだ。


「じゃあ次はパン屋に行こうか」

「ええ、いいですよ」


 俺たちはパン屋に行き、白パンの残りを買えるだけ買ってきた。

 あとサラダに入れるクルトンも購入した。

 これでサラダはバージョンアップだ。


 雑貨屋にもよりナイフを1本、そしてお皿とフォークを追加で20皿ほど購入する。

 ナイフが1,000イジェル、お皿とフォークで2,500くらいだった。


 残金は3,500イジェルくらい。



 そうして夕ご飯に間に合ってまた、噴水広場の肉串屋のお姉さんの横に露店を構えた。


 朝と違い、今晩はメニューが増えた。

 ハーブサラダそして、ハーブのサンドイッチだ。

 丸長のパンをナイフで横に2つに切り込みを入れて、雑草、薬草を挟む。

 しかしそれだけだ。

 ただのサラダサンドになっているけど、違うんだ。


「肉串屋さんのお肉を挟んで食べるとおいしいよ、おひとついかがでしょうか」


 つまりそういうことだ。

 肉を自分たちで焼けないので、隣の肉串屋さんに便乗して、ハンバーガーみたいにしようという作戦なのだ。

 もちろんお隣には事前に許可を取った。


「おおいいな、これで肉サンドになるわ」

「こっちにも2つちょうだい」


 さっそく買ってくれる人がいる。


「ごちそうさま。お土産にするから5個ください」


 そう、サンドイッチならお皿問題も解決する。

 これで一気に売れて、結構な売り上げになった。

 普通のサラダも今回も好評だった。


 サラダやサンドを鑑定やマーカーで見ても、雑草を使っているとは表示されないので、わからないのだ。

 何の葉っぱかはだから、一応企業秘密だ。もちろん知っている人が見ればすぐわかる。


 18,000イジェルの利益になった。


「ふう、今日も働いた、働いた」

「お疲れさまです。お兄ちゃん」


 このゲームでは、ゲーム内でもお腹がすく。ステータスでは見れないが感覚でわかる。

 どうやら、お客さんの風の噂によると、お腹がすきすぎるとキツいらしい。

 現実とほぼいっしょということだ。


 ご飯は重要なファクターになっていた。


 NPCのごはんも美味しいものが多いが、食文化がちょっと違うようだ。


「よし、じゃあログアウトしようか」

「はい、お兄ちゃん」


 広場の隅でログアウトを呼び出す。

 俺より先にアカリがログアウトしていった。

 体が粒子に分解されて、鱗粉みたいのに包まれて消えていった。幻想的だった。


 俺もすぐに続く。


 戻ってきたのは自分の部屋のベッドだった。

 寝ているときみたいに、体は勝手に寝返りを打ったりはするらしいので、大丈夫だ。


 ARモードになっていて、アカリが俺の近くに立っていた。


「こっちのは猫耳がなくて、逆に変な感じしてくるな」

「そんなぁ、こっちが本来の姿なのに」

「まあいいじゃん。じゃあ飯にするわ」

「はい。冷凍庫から今日の分のメニューを出して温めてくださいね」

「あーあ、ゲーム内みたいにアカリに手伝ってほしいよ」

「わたしも、できるなら、手伝いたいですよ」

「無理なもんは、無理だよな。ごめんアカリ」

「いいえ、いいえ。わたしの気持ちをさっしてくれるだけで、うれしいですよ」

「うん」


 ご飯を食べて、干してあった洗濯物を処理してシャワーを浴びて、着替えて、さらに勉強タイムを挟んでゲーム内が朝になるころに再びインすることにする。


「夜もゲームしていいのかな。けっこう遊んだけど」

「まだ大丈夫ですよ。制限時間などは特に決まっていないようです。ただ長時間プレイをすると、休憩のお願いというのが出るらしいです」

「なるほど。強制はしないっていうことか」

「はい」


「んじゃリンクスタート、アナザーワールド」

『フルダイブモードに移行します』


 システムアナウンスが聞こえたら、すぐにまたログインをした。

 脳波認証なので、IDやパスワードを入力する必要がない。

 そのため他人と偽って、ログインしたりハッキング被害などもないらしい。


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