そうそうに露店でハーブサラダを売り切った俺たちは、次の行動をすることにした。
まずは、サラダの材料になる草をたくさん、効率よく集めたい。
一番いいのは専用の畑を持つことだけど、まだ無理っぽいので、次善策を探そう。
「冒険者ギルドへ」
「はいはい」
ご機嫌でアカリは俺の手をとって歩いていく。
異世界ファンタジーがそんなに好きなのだろうか。
「うふふ、お兄ちゃんがまじめに働くなんて」
「アカリなんか言ったか?」
「いえ、なんでもないですぅ」
ごまかしてきたけど聞こえてるぞ。
冒険者ギルドで仕事を探した。
そして、俺たちが探し求めるいいやつを見つけた。
「これだ」
「なるほどぉ」
アカリは感心しきりだ。
俺たちは町の中、空き地に来ていた。
今日の仕事は、ここを農地にする依頼者さんの頼みで、雑草抜き、小石取りをすることだった。
「じゃあはじめましょうか?」
「はい、お願いします」
「抜いた雑草は、ステファン君がほしいと」
「はい、そうです」
「わかった。全部あげよう。ついでに小石もいるなら持って行っていいよ」
「ありがとうございます」
もらえるものはなんでももらっておこう。何かに役立つかもしれない。
アイテムボックスはほぼ無限らしい。
土地はそこまで広くない。
しかし一面に雑草が生えている。ほとんどはサラダのメインになるルク草だった。
「こんなに生えてるなら当分困らないな」
「そうですね。どんどん取りましょう」
草を次々にアイテムボックスに入れていく。
ははは、宝の山だ。
草を抜いたら、今度は石拾いだ。
小石、小石、小石、鉄鉱石、ガラスの破片。
なるほど、ここにもいろいろ落ちている。
俺たちはホクホク顔で、作業をしたのだった。
作業賃は、1人1,000イジェル。
「ありがとうございました」
「こっちこそ、ありがとうよ」
「いえいえ、では失礼します」
夕方になる前ぐらい、作業が終わった。
よし、夜ご飯の需要に何とか間に合いそうだ。
「じゃあ次はパン屋に行こうか」
「ええ、いいですよ」
俺たちはパン屋に行き、白パンの残りを買えるだけ買ってきた。
あとサラダに入れるクルトンも購入した。
これでサラダはバージョンアップだ。
雑貨屋にもよりナイフを1本、そしてお皿とフォークを追加で20皿ほど購入する。
ナイフが1,000イジェル、お皿とフォークで2,500くらいだった。
残金は3,500イジェルくらい。
そうして夕ご飯に間に合ってまた、噴水広場の肉串屋のお姉さんの横に露店を構えた。
朝と違い、今晩はメニューが増えた。
ハーブサラダそして、ハーブのサンドイッチだ。
丸長のパンをナイフで横に2つに切り込みを入れて、雑草、薬草を挟む。
しかしそれだけだ。
ただのサラダサンドになっているけど、違うんだ。
「肉串屋さんのお肉を挟んで食べるとおいしいよ、おひとついかがでしょうか」
つまりそういうことだ。
肉を自分たちで焼けないので、隣の肉串屋さんに便乗して、ハンバーガーみたいにしようという作戦なのだ。
もちろんお隣には事前に許可を取った。
「おおいいな、これで肉サンドになるわ」
「こっちにも2つちょうだい」
さっそく買ってくれる人がいる。
「ごちそうさま。お土産にするから5個ください」
そう、サンドイッチならお皿問題も解決する。
これで一気に売れて、結構な売り上げになった。
普通のサラダも今回も好評だった。
サラダやサンドを鑑定やマーカーで見ても、雑草を使っているとは表示されないので、わからないのだ。
何の葉っぱかはだから、一応企業秘密だ。もちろん知っている人が見ればすぐわかる。
18,000イジェルの利益になった。
「ふう、今日も働いた、働いた」
「お疲れさまです。お兄ちゃん」
このゲームでは、ゲーム内でもお腹がすく。ステータスでは見れないが感覚でわかる。
どうやら、お客さんの風の噂によると、お腹がすきすぎるとキツいらしい。
現実とほぼいっしょということだ。
ご飯は重要なファクターになっていた。
NPCのごはんも美味しいものが多いが、食文化がちょっと違うようだ。
「よし、じゃあログアウトしようか」
「はい、お兄ちゃん」
広場の隅でログアウトを呼び出す。
俺より先にアカリがログアウトしていった。
体が粒子に分解されて、鱗粉みたいのに包まれて消えていった。幻想的だった。
俺もすぐに続く。
戻ってきたのは自分の部屋のベッドだった。
寝ているときみたいに、体は勝手に寝返りを打ったりはするらしいので、大丈夫だ。
ARモードになっていて、アカリが俺の近くに立っていた。
「こっちのは猫耳がなくて、逆に変な感じしてくるな」
「そんなぁ、こっちが本来の姿なのに」
「まあいいじゃん。じゃあ飯にするわ」
「はい。冷凍庫から今日の分のメニューを出して温めてくださいね」
「あーあ、ゲーム内みたいにアカリに手伝ってほしいよ」
「わたしも、できるなら、手伝いたいですよ」
「無理なもんは、無理だよな。ごめんアカリ」
「いいえ、いいえ。わたしの気持ちをさっしてくれるだけで、うれしいですよ」
「うん」
ご飯を食べて、干してあった洗濯物を処理してシャワーを浴びて、着替えて、さらに勉強タイムを挟んでゲーム内が朝になるころに再びインすることにする。
「夜もゲームしていいのかな。けっこう遊んだけど」
「まだ大丈夫ですよ。制限時間などは特に決まっていないようです。ただ長時間プレイをすると、休憩のお願いというのが出るらしいです」
「なるほど。強制はしないっていうことか」
「はい」
「んじゃリンクスタート、アナザーワールド」
『フルダイブモードに移行します』
システムアナウンスが聞こえたら、すぐにまたログインをした。
脳波認証なので、IDやパスワードを入力する必要がない。
そのため他人と偽って、ログインしたりハッキング被害などもないらしい。