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6話 続、町探索


 今度はまた、町を歩くことにした。

 もちろんただ歩くだけではもったいないので、先に冒険者ギルドへ行き、雑草抜きのアルバイトを請け負ってきた。


「さて、また歩きますか」

「はい」


 さっきとは反対側を中心に、表通り、一本入ったところなどを見て回った。

 表通りはお店が多い。

 裏通りといっても、一本入ったぐらいはやはりお店が多い。

 それ以上に入っていくと住宅街になっている。

 家はそこそこ発展しているのか、木造と石とか漆喰みたいなものでの三階建てが多い。

 俗にいうマンションみたいになっているようだ。

 お店も上は従業員やギルド員の宿舎になっているみたいな感じに見える。


 そして、意外と空き家も多い。

 たぶんこれは、ゲーム的な配慮、すなわちプレイヤー向けに貸し出しに使われるんだと思う。

 空き家だけでなく、空き地や公園なんかも意外とある。


 ところどころに公園ではなく、大小さまざまな広場もあった。

 まじヨーロッパっぽい感じがする。


 普通、城塞都市みたいになると、人口が増えて土地がない場合が多い気がする。

 でもここはまだまだ発展途上なのか、余裕があった。


 この町をプレイヤーがいっぱいになって、発展すると思うと、ワクワクしてくる。


 そういう話をしながら歩けばいいけど、コミュ障なので、気が付いたら1人で考えて黙って草抜きの作業をしていた。

 これはよくないかもしれない。


「ごめん。アカリ。無言だった」

「いえ、別に集中してるならかまいませんよ、全然」

「そうか」

「はい。それよりも、わたしのことも気にしてくれて、とっても。うん、とってもうれしいです」

「別に……」

「別になんて、とんでもないです。すごくうれしいです」

「そ、そっか」

「はいっ」


 なぜかアカリは力説してくる。

 まあ俺も悪い気はしない。こそばゆいといえばそうだけどね。


 収穫はそれなりだった。

 まず、石ころ、名称は「小石」を20個ぐらい拾った。

 白い石、黒い石、茶色い石、そして「鉄鉱石」を2つ拾った。「銅鉱石」も1つ。

 道端に落ちている鉄鉱石。すごい世界だ。


「なあ鉄鉱石って落ちてるもんなの?」

「別におかしくないでしょう。日本の砂場だって磁石転がすと、砂鉄いっぱい取れるでしょう?」

「ああ、そういえばそうだな」

「そうです、そうです。あれと一緒ですよ、たぶん」

「なるほど」


 電子機器の廃棄品を集めるのを都市鉱山と呼んだりするけど、ファンタジー世界の町歩きも伊達でないということだ。

 そういえば、瓶の破片もよく落ちている。

 拾い集めたので、「ガラス瓶の破片」が20個ぐらいだ。普通ならマジごみなんだけど、どう考えても、これは炉に入れればガラスに戻るつまり資源、というか材料だと思う。


 小さな水路も縦横無尽に走っていて、きれいな水が流れていた。


「ほら、あそこ、カニ」

「ほんとだね。サワガニかな」

「さあ、ファンタジーだから、えっとマーカーでは『カワガニ』みたいだね」

「マーカーってホント便利ですね、お兄ちゃん」

「おお」


 カワガニも食べられるのだろうか。

 ちょっと水量もそれなりにあるので、水の中に飛び込んで、カニを取る気にはならない。

 怒られるかもしれないし。

 いきなり衛兵につかまって、牢屋送りとか勘弁してほしいもん。


 雑貨屋さん、木工屋さん、鍛冶屋さん、布団屋さん、洋服店、防具屋さん、武器屋さんなどを見つけた。

 マップは呼び出せば表示されるんだけども、どこに何があるとかは残念ながら表示されなかった。

 自分でポイントを打つことはできるので、どんどん記入していくことにしている。

 記入の操作は、思考操作でできるので、ちょっとコツが必要だったけど、慣れてしまえばなんでもなかった。


 水路には、カニ以外にもザリガニみたいなもの、小魚、貝類、そして水草各種もちゃんといる。

 生態系は保存されているみたいだ。


 水が汚れないことの1つは、クリーンの魔法があるからだろう。もう1つは排泄という行為がないことだとも思う。

 あとは皿洗いとかで洗剤を使う文化がないからだと勝手に想像している。



 もうすっかり夕方になってしまった。

 冒険者ギルドによって腕章を返却して、報酬をもらう。

 ちょっと長時間たくさん取ってきたから、評価額みたいのがあるみたいで、お値段は1,000イジェルだった。2人で2,000イジェルだ。


 所持アイテムも増えてきた。特にガラス瓶の破片が結構落ちている通りがあった。


 ついでに言えばログインユーザーも増えてきた気がする。

 多くの人は外で戦闘をしているので正確には分からないけど。


 また広場で肉串、今度は豪華バージョン、1つ150イジェルのものを買って食べた。


「肉、うまー」

「うふふ、お肉おいしいですね」


 そうこうしているうちに暗くなってきた。

 広場には魔法のだろうか街頭があって、明かりが灯された。


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