こんだけプレイしてて、まだ武器も決まってないとか。俺だめじゃんね。
でもさ、大事なことだよ。
そんな、ほいほい決められないよ。
「うーん、武器どうしよ」
「そうですねぇ」
「うーん」
「とりあえず剣でも振って、いまいちなら変えればいいんじゃないですか」
「そうだな、そうしよう」
武器屋に行って剣を見る。
安い剣、鉄の剣、3,000イジェル。
よしこれでいいや。
鉄の剣 攻撃力+10。それなりだ。
剣を振ってみる。お、おもったよりはいい感じ。
剣道なんてやったことないけど、バットを上下に振るみたいな感じでいいみたい。
と、買う前に、ふと棚に飾ってある斧を見た。
あれ、斧って思ったよりかっこよくね。
バトルアックス、戦斧。
英語も日本語もカッコいい。形もカッコいい。
「うし、俺、バトルアックスにするっ」
「もちろんいいですよ」
アカリの許可も出た。バトルアックスだぜバトルアックス。
ハルバードじゃないのかって、残念ながら置いてなかった。
ハルバードもカッコいい。槍斧だね。
ついでに木こりプレイもできるぜ。
鉄のバトルアックスこちらも3,000イジェル。
ちょっと向きに気を遣うけど、やはりバットみたいにぶん回せば、大丈夫、だと思う。
斧には両刃のものと片刃のがあるけど、これは片刃で、まっすぐのほうにスパイクがついている。
これでハルバードほどではないが、槍みたいにも使えるらしい。
「見てみてカッコいい」
「はい、それなりにカッコいいですね」
「あれあんまりうれしくない?」
「まあちょっと野蛮な感じが。筋肉マッチョが持ってるイメージないですか。もしくは戦士、ウォーリアというか」
「あー、あるといえばあるね。でも俺的にはシャープな感じのバトルアックス装備の魔法少女のイメージがあるから」
「ああ、確かに魔法少女の中にはそういう武器の子もいるみたいですね」
「うん、カッコいいんだよ。彼女たちは」
「わかりました。スタイリッシュでカッコいいんですね」
「そそ」
武器屋に行ったら、あっさり決まった。
まあこんなものだろう。
「それじゃあ外に行って、木を切ろう」
「え、敵と戦うんじゃないんですか」
「アックスだよ斧だから木を切るんだ」
「まあそうですけど」
「いいじゃん」
「はい、では外へ行きましょう」
バトルアックスは攻撃力+13だ。剣よりちょっと強い。その代わり振り回すのが大変なので、手数が減る。
アックスは回数じゃなくて、一撃で強い攻撃をするタイプといえるだろう。
草原を通過中、ウサギにも遭遇する。
「おりゃぁ、あ」
ウサギさんは一撃でした。
斧を振り下ろしたら、粒子になって消えて、肉と毛皮になるウサギさんたち。
「さすがですぅ、お兄ちゃん、強くなってぇ」
アカリは楽しそうだ。
まあいいか。
最初はかわいそうなウサギたちだなとか思ってたのに、もうなんだかモンスターにしか見えない。
ウサギを倒して進む。
門からだいぶ離れてきたとこで、敵がグリーンクローラーに替わってきた。
「キュピー」
「お、おう」
「あらイモムシさん」
グリーンクローラーは糸吐きによる妨害と、体当たりをしてくる。
それなりに大きい毛のほとんどない緑のイモムシちゃんだ。
俺たちは大丈夫だけど、人によっては気持ち悪いと思うかもしれない。
次々にイモムシを倒していく。
ウサギと違って、素早さがあってないようなものなので、簡単に倒せた。
これはモンスターとしてどうなんだろうか、とは思う。
「あれ、この子黄色い」
「うん……」
普通のグリーンクローラーは深緑なのだが、1匹だけ黄緑の鮮やかな子を発見した。
「なんだかレア個体だぜ」
「はい」
「よし、決めた。テイムをしようと思います」
「えっ、できるんですか」
「わかんないけど、やってみよう。提案」
「あ、はい」
こうして俺たちとライトグリーンクローラー君とのにらめっこが始まった。
「キュピ、キュピピ」
「おうおう。なるほど葉っぱがほしいと」
「キュピ、キュピ」
「よしよし、じゃあとっておきの雑草をあげよう」
俺は今までの行動により雑草コレクターと化しているので、あらゆる雑草を持っていた。
人間が好きな草が好きとは限らないのだ。
とりあえず、どんどん出して、食べるかどうかを見た。
食べない。また食べない。これも、だめ。
「あー全然食べない」
「そうですねぇ」
「じゃあこれ、変わり種。アマアマ草。甘いの好きか、ん? どうだ?」
「キュピ、キュピ」
お、アマアマ草を少し口に近づけて、おお、いくか、いくんか。
食べたー。
この感動をみんなとも分かち合いたい。
数々の雑草を与えても食べず、そしてメジャーなアマアマ草を食べるクローラーちゃん。
クローラーちゃんは持っていたアマアマ草をすぐに食べ終わると、次の催促をしてくる。
さすが、よく食べる。
「よしじゃあ次もアマアマ草だ。どうだ。うまいか?」
「キュッピー」
お、ちょっと鳴き方に変化が。これはよろこんでいるのかな。
テイムの基本は、餌付けだと、古来からの文書にはある。
基本に忠実なだけだった。
「はいはい、お、システムログにスキル取得のメッセージが」
そこには『スキル、調教Lv1を取得しました』と書かれていた。