畑には少量だけど雑草のうち、いい匂いがするものをいくつか植えてあった。
食べるにはちょっとキツイと思うんだけど、これには別の使い方を試してみる価値がある。
雑貨屋に寄って行く。
「外で調理とかできるものありますか?」
「ああ、あるよ。調理台だね」
いわゆる七輪みたいなものだった。
燃料は魔石で、魔道コンロというべきかもしれない。
2,000イジェル。ちょっと高い。
「高いけど、長持ちするしいいよね」
「はい、もちろんだよお兄ちゃん」
「じゃあ購入」
魔道コンロをお買い上げ。
「あああと、鍋としゃもじとかもください」
「はいはい」
いろいろ料理アイテムでコンロと合わせて合計2,500イジェルになった。
「焼けるとレパートリーは一気に増えるよね。どうするつもりなのお兄ちゃんは」
「うん、どうしようか。ウサギ肉でも焼く?」
「似たようなお店ないの?」
「あると思う」
「まあ大丈夫だよね」
「うん」
ということで、焼いたりしたものを出してもいい。
今までちゃんと考えていなかったけど、料理の材料って、お店で買ってくればいくらでもあるんじゃないですかね。
これはモンスターを倒したり採取とかして、それで何かするって考えてたけど、その必要すら実はないのでは。
ちょっとゲーム脳だったかもしれない。
自ら採取とかしないといけないという風に思っていた。
そのほうが利益率は高いんだけど、数を捌くには難しい。
どうしても取れる数が上限の販売数になってしまう。まあ、それがこういうゲームのだいご味といえばそうだとも考えられるので、どっちがいいかは決められない。
今日もパンを買う。
朝はまだ早い。
噴水広場に行って、露店を開く。
今日は新しいメニューが増えた。
魔道コンロでは噴水の水を沸騰させて、鍋にククル草というのを入れる。
ククル草はちょっと変わったいい匂いのする葉っぱで、食べると苦い。
それをお茶にしようという、目論見だった。
お茶は50イジェルでいいかな。
このククル茶がかなりいい匂いで、周りにも匂いが飛んでいくので、面白いようにお客さんが来た。
「いやぁ、いい匂いだね。なんの匂いっていうのかは難しいけど、さわやかだけど、なんともいえない」
「はい、ありがとうございます」
「それ、ひとつ」
「ああ、お茶とかあんまり現実では飲まないけど、これはよさそう」
こうしてククル茶は売れていく。
お代わりする人もいた。
ちなみにコップは買っていないので、お皿で出していた。
ちょっと雰囲気が異国の飲み物みたいな感じになって、それはそれで面白い。
買ったお皿が深皿でよかった。
サラダやサンドもついでとばかりに売れて、売り上げ18,000イジェルぐらいになった。
「人間は火を使う生き物なのだ。だろ、アカリ」
「はい」
俺もご機嫌だ。アカリも機嫌はよかった。
「んじゃあ、ちょっと雑貨屋、えっと食材屋みたいなところへ行こうか」
「はい」
食材屋さんは、砂糖、塩、コショウをはじめ、いろいろなものが売っていた。
そしてほしいものも当然売っていた。
「あったあった、小麦粉」
「小麦粉ですか? パンでも焼くんですかね」
「えっと、うちは草メインだから、薬草やハーブの天ぷらにしようと思って」
「なるほど、天ぷらですか」
ということで小麦粉を買った。あと油も買う。ついでに器具も売っていたので、油壺というのだろうか、油を入れて保存しておくやつを買った。
それとお持ち帰り用の、経木舟皿、たこ焼きとかを乗せるやつを購入した。
あとは忘れていた割りばしセット。
800イジェルぐらいだった。結構量がある。
お昼のピークまで時間があるので、いつもとは別のパン屋さんに行ってパンも仕入れてくる。
お昼まで時間が余ったので、ちょっと外に行って色々調査したい。
「というわけで外に行くよ、アカリ」
「はいはーい」
町の外は、雑草、薬草がまばらに生えている。
なぜか空き地のほうが密集して草が生えているのは謎だった。
でも冒険者たちが、歩き回っているのを見れば、人が歩くから草がまばらなのかな、と思う。
そして、新しい草がないか見て回る。
葉っぱでも見分けることができるので、適当に見て、見たことがない種類だったら、マーカーで名前を確認して収穫した。
ついでに小石も拾って歩く。たまに鉄鉱石も落ちてるからお得だ。
ウサギも出てくるので、その都度戦闘した。
ウサギぐらいの攻撃では、2人だとたいしたダメージとか受けないけど、試しに攻撃されてみた。
「ああ、一応ダメージくらうんだな」
「そうみたいですね。パーティーを組んでいると、仲間のHPも表示されますね」
「なるほど」
「はい、ヒール」
「おお、回復した」
「癒しちゃいました」
「癒されちゃいました。わはー」
「なんですかわはーって」
「なんとなく」
まあなにはともあれ、俺たちの周りはまだ平和だ。