俺とアカリはギルドを出て腕章をつけて道を歩く。
「なるほど、雑草ね」
俺たちは、道をいきつつ、大きい草が生えていたら抜いて歩く。
すごく小さい草は無視していいようだ。
道の中央は馬車が通る。
そして道のわきには街路樹があり小さな花壇みたいになっている。
そこに雑草がよく生えている。
家と道路の境目付近にもぽつぽつ大きいのが生えていることがある。
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▽オクシ草
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鑑定というかマーカーで見ると生えている状態でも名前はわかる。
しかし詳細が見れない。
アイテムボックスに放り込むと、名前の一覧になるだけだった。
アイテムボックスには、サブの袋に分ける機能があり、これで今とったものと、前のものなどを区別できるような機能もあった。
今は、もともと何も持っていないのでとりあえず放り込んでいる。
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▽イチゴ草
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あれ、これイチゴだ。
これは抜いていいのだろうか。
勝手に生えているみたいなので、いっか。抜いてしまおう。
なかには実が生っている草なんかもある。
実が鈴なりになっていた草は「ルーデ草」だった。
「この実、青くてきれいだね、お兄ちゃん」
「ああ、なんだろう」
「なにかの材料になるんじゃないのかな?」
「なるほど、きっとそうだ」
俺とアカリは実を見て、ニコニコした。
なんだか平和ですごくいい雰囲気で、ほのぼのする。
こんな生活なら、ずっとしていたい。
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▽小石
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「小石は小石だったのだ」
「なにそれ、お兄ちゃん」
「ちょっと格言っぽく」
「あはは」
彼女は沸点が低いというか、俺のつまらないダジャレとかでも笑ってくれる優しい子だった。
雑草抜きは順調に進んだ。
町を一回り、すべてを回るには町が広すぎた。別にある程度やってくればいいらしい。
通りとかも指定すれば、もっと効率よくみんなが雑草抜きの仕事をできるのにとは思う。
冒険者ギルドで腕章を返却して、報酬の500イジェルを受け取った。2人分で1,000イジェルだ。
「お金、手に入ったね」
「どれくらいの価値なんだろうな」
「そうですね、それで全然違いますね」
「パン1つで50イジェルぐらいだったっけ」
「あっちの露店の肉串は100イジェルでしたよ」
「じゃあ、500イジェルで500円ぐらいかな」
「でもですね、お兄ちゃん。物価ってものによっても違うので、安易な円換算は無理なんですよ」
「ああそうか、そうだよな」
「はい」
つまり、パンが50円で肉が1つで100円でも、宿屋がいくらとか剣がいくらとかは、現実とは全然違うってことだ。
つまり円換算は意味がない。
「次は何しよっか?」
「おなかすいてきたな」
「お兄ちゃんは肉串だよね?」
「おお、俺の趣味は把握済みと」
「もちのろんでありますよ」
広場の露店で肉串を売っている人に1つずつ、1つ100イジェルで購入した。
「おお、肉、さすが肉、うめえ」
「美味しいですね」
焼けたいい匂い、香ばしさと、旨味と、肉汁。
普段の冷凍食品とは比べるのも悪いくらい、うまい。
「いやぁゲームとはいえ、よく再現してるな。現実でも肉焼いて食うかな」
「現実では本物のお肉は高価ですし、しょがないですよ」
「そうなんだよな、21世紀初頭ぐらいに生まれたかった」
「そうですね」
人口増加問題は、当然のように食糧問題になる。
お肉は野菜に比べて、必要とするコストが高いので、当然肉の値段は跳ね上がるようになった。
これは発展途上国が豆とかだけの食事から肉などを食べるようになったことも影響している。
先進国が肉を独り占めしていた時代は終わったのだ。
今は大豆とかの合成肉が主なタンパク源になっていた。
というわけで、仮想のお肉おいしーです。
「よし次は何するか?」
「そうですね。どの草が何かとか調べたらどうです?」
「ああ、そうだな。そうだ。名前だけじゃ捨てていいかもわからんな」
「はい」
「どこで聞こう。俺、コミュ障だからわからんちん」
「そうですよね。えっと露店のところがいいと思います」
「露店か」
「はい。つまりこの周りってことです」
ここは噴水広場、かなりの大きさで空き地になっている。
周りにはNPC、現地の人の肉串はじめ、食べ物とかを売る店がいくつか出ている。
そして、気が早いプレイヤーが露店を並べ始めていた。
なるほど、おなじプレイヤーたちならいろいろ知っているかもしれない。
でも、まだゲームが始まって3時間ぐらい。
このゲームは加速倍率があり、現実よりも4倍速になっている。
3時間は、45分ということだ。つまり今は午後0時45分ぐらい。