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040.草原遺跡ボス戦


 お茶会に俺も参加させられる。


「師匠はハーレム員の誰と結婚するつもりですか? ボクなんかお買い得。オタク文化にも詳しいぞ」


「ごほごほ」


「むせるほど酷い?」


「俺はオムイさん一筋だから」


「きゃぁ、やっぱり」


「オムイさんは私のお嫁さんなんですぅ」


「オムイさん大人気だな」


 休憩を終わらせる。


 この先は、攻略情報では中ボスちゃんが出てくるらしい。


「では再開。先頭はルルコとユマル」


「おまかせを」


「お兄ちゃん、頑張るね」


 ユマルはハンマーが重くないのか不思議だ。

 今は2つめの得物に更新して前より大きいヘッドのものを使っている。

 ルルコはまだ最初の棍棒こんぼうを使っている。上級装備の棍棒とはなんだろう。メイスが一番近くて、次がハンマーとアックスだろうか。鈍器系だ。

 まさか釘の刺さったバットがいいとか言いださないといいけど。


 攻撃することを「殴る」と一般的に呼ぶ。だから横から他人の敵を殴るのを「横殴り」といってマナー違反だ。経験値やドロップを分割することになり、利益が減ってしまう。

 パーティーなら共闘ボーナスみたいのがある場合もある。

 「支援」と「横」は紙一重のこともあるので注意だ。


 槍を持ったスケルトンが出てきた。

 特殊個体だ。


「槍持ちだ。気をつけて」


「「はい」」


 リーチが向こうのほうが長いのでやや不利だけどふたりだから大丈夫そうだ。

 支援なしでも倒せた。


「師匠、槍が消えないで残ってます」


 通常、モンスターの武器は敵の一部なので一緒に消える。残ったということはドロップだ。

 ここの特殊個体はあまり出てこないが、出てきたら装備を落としやすい。


「師匠よかったですね」


 ルルコは俺に槍をくれた。

 補正的には今の武器より強い。

 このゲームでは素材を主に落として、プレイヤーメイドの武器を作るのが一般的だ。

 レアドロップの武器は敵が装備しているものか、敵の一部であるものがほとんどになる。

 他の装備は稀に試練を与えてくる敵の報酬くらい。


「みんな、俺が貰っていいの?」


「「いーです」」


 いいらしい。お値段は500kぐらいの価値かなあと、よく分からない相場感で考える。ひとり50kか。まぁ貰ってもいいけど対価がないと悪い気もする。


「オムイさんこの槍いくらだと思う?」


「さあ。100kぐらいじゃないですか」


「ルルコいくらだと思う?」


「200kぐらいでは」


「ユマルはいくら?」


「やはり200kぐらいかな」


 うーん。500kは高いかもしれない。

 200kぐらいなら全員に20kでそんくらいなら俺も払える。


「200kとして20k分けるよ。あとでいい?」


「「いーです」」


 いいみたいなので、ツケにしてもらう。

 レアドロものは、やや補正が高めで同じランクの敵素材製の武器より強いことが多い。

 同じ適正レベルでも、相対的に強いのだ。

 より高レベルの敵のレアと素材のほうが強いが装備するとペナルティがあるので、現在のレベルで装備できる中では最高補正だと思う。

 素材からのプレイヤーメイドでも補助素材を追加したりすれば、強い武器はできるけど、費用対効果があまりよくないので、一部のブルジョアな人専用になる。


 敵を順調に倒して進んでいく。

 中ボス部屋の前フロアだと思われる広場に到着した。


「鉄の扉があるから次の部屋が中ボスだと思う」


「はい。タカシさんにお任せします。みんないい?」


「「はいっ」」


 みんな武器を構えていい返事をした。


「では行きます」


 ドアを開けて中に入る。


「おじゃまします」


『よく来た。冒険者よ。我はスケルトン・ナイト。この墓を守るものなり。ここより奥へ入りたければ、我を倒していくほかあるまい』


「「しゃ、しゃべったああー」」


「うん。その反応は予想してたよ」


 チームを適当に編成して戦闘態勢に入った。

 前衛、正面中央はユマル、回避盾を今回もお願いする。

 後衛は今のところ、オムイさん。

 彼女はウォーターヒールを覚えたので、ヒーラー担当になった。

 ヒールは属性魔法レベル2段階で習得可能で、魔法使いギルドでお買い上げする必要がある。

 武器はまだメイスを使っている。

 メイスは普通の殴る用なので、そろそろ魔法用にしたほうがよさそうだ。


 残りは遊撃、ダメージディーラー、アタッカー。名前はいろいろあるが、隙を突いて物理攻撃を叩き込むことになる。

 魔法攻撃は、フレンドリーファイヤに注意が必要なので、うちのクラブではまだメインになっていない。


『では、まいるぞ』


 ユマルが回避とハンマーでの受けを混ぜて攻撃を回避する。

 まぁ当たってもヒーラーがいるので大丈夫だ。


 ほかの子は左右から中ボスさんに攻撃を合間に叩き込む。

 基礎魔法アタックに加え「ファイヤエンチャント」などの属性魔法付与の魔法があって、攻撃力が増すので使っている。


 属性は好きなだけ使えるが、得意な属性を伸ばしたほうが利点が多いので、各自好きな属性を強化する方針だ。

 俺は火属性なので、ファイヤ系、メイン魔法はファイヤバレット。


 また打撃系応用スキル、ダブルアタックも結構使える。

 これは二連撃をするとボーナスダメージが出る使い勝手のいいスキルで、みんな覚えている。


「あ、ほいっ」


 ユマルが変な声をかけて、敵の剣を避ける。

 そうそう、同じヘルメットに同じ防具だと、後ろから見ると識別が難しいことがある。

 背丈や髪形などで区別しないといけない。

 個性が伸びて、防具がみんなバラバラになれば違うんだろうけど、最初のころはこんなもんだろう。


「おっと、ぎりだった」


 ユマルちゃんはまだ余裕だ。


 果敢に攻撃を続けながら、正面の相手をしてくれている。

 敵さんは頭はいいけど、ヘイト管理系のAIのようで、ユマルを主に攻撃している。

 ぼけっと立っているバカはうちのクラブにはいないらしい。


 おっと、俺が一番ぼけっとしてた。


 戦闘風景を描写するのを俺は苦手としている。

 野球のピッチャーとバッターの駆け引き、サッカーのプレイ、剣道の試合とかのラジオ中継を想像してみてほしい。

 あんまり細かいことは言わないはずだ。


 とっぴな戦略で潜り抜けたり、敵がバカみたいで勝てたり、チート能力で勝ったりするゲームなんて、おかしい。

 こちらはポーションもヒールもある。

 数もこちらが有利。

 それで敵のHPが高いとして、直撃を食らって死ななければこちらが勝つに決まっている。


 で、突飛なことが起きないので、特に書くこともない。

 剣を受けたり避けたりしてもらい、こちらが数でほぼ同時に殴る。


 前衛を2チームに分けて、メインの攻撃と半分休憩のチームにしておくと、長期戦でも耐えられる。

 そしてヒーラーと盾の存在。

 作戦と言ったらそれぐらいだ。


「あうち、痛いなぁ」


 ユマルが直撃を食らった。


「私に任せて」


 長身リリー、パワータイプが正面を交替する。


 ガキン。

 リリーのバトルアックスが敵さんスケルトン・ナイトの剣とぶつかり合う。

 力は互角ぐらいはあるようだ。

 小さいユマルでもなんとか防げるぐらいだから大丈夫だとは思う。


 剣とか使うと、結局何人いても一対一になる。


『なかなかやるな。これならどうだ』


 横ぎの範囲攻撃で長剣を振るってきた。

 3人巻き込まれた。リリーは回避。

 セリナ、タナカ、ニーナの三人が吹き飛んでる。

 カロンとカンナは盾装備なので、回避しつつガードで防いだ。

 ルルコ、ユマルは回避組。

 俺は回避、いや槍なのでちょっと後ろにいたんだ。

 オムイさんも後方待機なので大丈夫だ。


 魔法使いギルドで講習を受けた人はリカバリーを使えるので、お互いに回復魔法を唱える。

 俺もリカバリーでセリナを回復させる。

 ただリカバリーの回復量はそんなに多くないので2人同時とかでしのぐ。

 オムイさんはタナカを独りでウォーターヒールで回復させる。


 正面を交替ユマルに戻す。


『ふははは。愉快愉快』


 敵さんご機嫌の様子だ。


 ユマルが敵の瞬撃を受けて、吹っ飛んだ。

 ユマル、一発死亡。


「あっ、あうー。死んじゃった」


「南無」


 死んだ人に対する返事は「南無」「南無さん」などがあるあるだ。


「俺、蘇生そせいアイテム、復活ポーション持ってないわ」


「私もです。魔法もないです」


 オムイさんもないようだ。


「復活、持ってる人ー」


「(しーん)」


 敵に集中しつつも、みんな返事がない。


「返事がない、しかばねのようだ」


「それ違くね。酷いよみんな。うわーん」


 俺の定型句にユマルも悲しいようだ。


「残り10秒。うわーん」


「すまんな、ユマル。今度からちゃんと用意してくるから。まさか死ぬとは思わなかったんで、今まで持ってなかったわ」


 ソロだと不要だし、複数人だと意外と死なないこのゲーム。

 一発退場は珍しいと思う。


「みんな……村で待ってるね」


「ごめんね、ユマルちゃん」


 こうしてユマルは一人で村へ転送されていった。

 転移するときの体が分解されて粒子になる演出はとてもきれいで、はかなかった。


 正面はリリーが引き継いでる。


「リリー以外全員回避。魔法突っ込んでみよう」


「「はいっ」」


 正面周辺を空けて、全員が一歩引く。


「3、2、1、ファイヤ」


 俺、オムイさん、その他魔法使える子数人が属性魔法を放り込む。


『ぐあああ、魔法とは今回の冒険者はやりおるわ。我もここまでか』


 AIがそれっぽいことを発言する。

 このゲームのNPCは普通に会話できる程度に賢いので、別に敵がしゃべってもおかしくはない。


 今度はスケルトン・ナイトが粒子になって消えていった。

 剣、スケルトンナイトソードが落ちていた。


「お、レアドロかな?」


「師匠。そうみたいですね」



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