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002.ダウンロード&キャラメイク


 電源を入れたら、ネットの接続確認をされて、そのままファームウェアの更新になった。

 データセンターが混んでいて、なかなか終わらない。

 30分掛かってやっと終わった。


 初回、および二回目の出荷台数は発表されていないため、分かっていなかった。

 関係者筋によると、国内で初回が4万台。今回が8万台。合計12万台の出荷になったようだ。

 この関係者筋だって、本当かどうかなんて誰にも分らない。

 全世界、同日発売で他国ではもっとたくさん販売しているらしい。


 初回セットアップの設定などをした。

 脳波キャリブレーションという、身体との調整もする。

 身体スキャンも行われた。

 これに、さらに30分必要だった。


 俺がやりたいのはMMORPG「VRファンタジー」だ。

 それのセットアップに1時間必要だった。


 ソフトウェアのパッケージなるものは、この世の中、販売されていない。

 『ダウンロード』と最適化作業とかで時間が掛かるらしい。

 最初から入れておいてほしいけど、そうもいかないらしい。

 こんなに掛かるなら、ソフトウェアという旧世紀の代物でもいいから、ハードにしてほしい気がする。

 ソフトが本当に「データだけ」になったので「ゲーム屋」も死んだんだ。

 それが進化なのか退化なのかは、一言ではとても議論できない難しい問題だと思う。


 ゲームができるまでに、2時間を要した。

 これは酷い。


 ベッドでスタンバった俺がバカだった。

 頭から外して、セットアップだけやって他のことをしていればよかった。

 注意書きというか、時間が掛かるなら言ってくれれば、他のことぐらいしたよ。


 VRファンタジーを起動。


 タイトル画面を眺める。

 文字の後ろでは、世界の風景が流れていた。

 タイトル音楽も流れている。

 西洋の民族楽器風の音楽で、クラシックではなかった。

 これはこれで、雰囲気があっていい。

 特にこのリュートみたいな素朴なギター系の音が好きだった。


 演出方法はPCゲームと同じだけど、リアリティ、臨場感が凄かった。

 すでにゲーム内にいるみたいだ。


 10分ぐらい「タイトル画面」を眺めた。

 それぐらい凄かったんだ。

 幽霊で世界中を旅しているみたいに感じる。


 その後は『キャラメイク』をする。

 身体スキャンの結果を使用して、俺っぽい見た目にした。

 ランダムチェンジを5回、イケメン補正機能を2回押した。

 キャラメイクはリアルの体は無関係にして、サンプルとかから作ることも可能だ。


 種族、え、そんなのないよ。

 人間しかなかった。

 掲示板情報によると「人間たるもの、人間たれ」だそうだ。

 確かに身体的特徴が、自分と乖離かいりしていると、操作が難しいという、噂がある。


 キャラメイクは10分で済ませた。


 場所は首都セントラルシティーのよく分からない広場。

 とりあえず新規組の観察をする。

 周りでは「自分と同じような容姿」の黒髪、黒目、東洋顔のおじさんたちが、何人も新しく現れて、移動を始めていた。

 たまにイケメン風もいるが東洋顔なのには変わらない。

 違うタイプも混ざっている。彼らの多くは「青髪で、デザインされたイケメンの青年」の顔をしている。

 全員同じ顔だった。

 これを「デフォ男」と俺は呼んでいる。MMORPGあるあるだった。

 旧世代から存在する「初期設定アバター」でプレイする、ゲーム初心者だ。

 自キャラをカスタマイズするタイプのゲームをしたことがないヤツがやってしまう、失敗の一つだ。

 中には単純に面倒くさいという人もいる。

 そのための身体データスキャンだが時間が掛かりすぎるのが悪い。

 もしくは目立たないためにわざとデフォルトアバターでプレイする歴戦の勇者、ツワモノである。

 さらにもしくは、ネナベである。彼女たちは男性アバターを愛好する。腐っている可能性があるため要注意だ。


 そして意外に多いのが、女性アバターちゃんたちだったりする。

 女性アバターはどの子も可愛い顔をしていて、一定以上の水準をしている。

 どことなく似ている顔ではあるが、少しずつ違う。

 こいつらはネカマである。

 自分の容姿にもこだわるので、デフォルト女性アバターをカスタマイズして、顔を自分好みにするのだ。

 でも自分の顔を見るのは自分ではないと、ログインしてから気づくのだろう。

 少し恥ずかしそうな、モテそうな表情はするのに、がに股で歩く残念な子が多い。

 自分が女性キャラを使っているのに、まだ慣れきっていない。


 そしてその中にはたまに本当の女性が混ざっている。

 彼女たちはネカマだと思われてこのゲーム世界を旅しなければならない運命だった。


 残りはレアなタイプ。

 それは女性が自分の身体データを使った子たちだ。

 顔が東洋顔であるので、だいたい判別可能だ。

 あと、すぐに移動しないでしばらく様子を見る子が多い。

 この子たちは、自分に自信があるか、または初心者で顔バレやストーカーの被害にあっていない無垢な子が多いイメージがある。

 たまに女力士みたいな凄い子も混ざっている。

 一発で覚えそうだ。


 第一陣の情報によれば、首都は広く、広場もたくさんある。

 どこに出現するかはランダムで「冒険者ギルド」なんて場所には行く必要がない。

 自由だが、自由すぎて、何したらいいか誰も分からない。


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