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014.教会


 オム子、オムイさんのことだ。

 そのオム子はクロスボウは至近距離だからか、そこそこの命中率を誇った。

 使用済みの矢は折れなければ再使用が可能でまだ損失は出していない。

 これが一回ごとに消えてなくなると、辛い。

 魔法のほうがいいかもしれないし、メイスも検討に入れておこう。

 というのも、打撃が弱点だったり、刺撃が弱点だったり、魔法だったり、色々あるようだ。

 刺すのに弱いタイプは弓矢系も結構いける。

 皮が厚いと打撃系になると思われる。


 何故かるんるん気分のオム子を連れてこの狭苦しい草原から帰還する。


「帰りも薬草採っていきますか」


「どっちでもいいよ。ウサギの毛皮も10枚は取れたろ。そこそこお金になるよ、多分」


「お金♪ お金ですぅ」


「守銭奴ババアは勘弁してくれ」


「わざとやってるんですよ。分かりません?」


「どこから演技かなんて、分かんねえよ」


「頑張って観察眼を鍛えてください」


「まだ会って2日目だろうが」


「そうでした。もう2週間以上一緒にいるみたいな気分してました」


「相性いいのかな」


「はい。ガイドロボさん、頼りにしてますよ」


「俺昨日ログアウトした後の記憶ちゃんとあるよ。よかった」


「今日、記憶をマージ、えっと合成したのかもしれないでしょ」


「ぐう。確かに」


 そうなると、ガイドロボット疑惑は、二人で現実に会うしか、疑惑を晴らせないことになる。

 あー悲しいな。

 俺にそんなチャンスが来るなんてとても思えない。


 西門を通過して、冒険者ギルド西門支店に入る。


「ウサギの毛皮の買い取りしてます?」


「依頼は壁にあるので見てくださいね」


 案内係の美人さんに言われてしまう。

 どれだろう。

 ランク分けとかもない。

 収集依頼系のところに貼ってあった。


「ウサギの毛皮、一枚1.5kラリル、大量購入、200枚まで、ギルド代理処理か」


 俺は11枚。オム子は13枚だった。


 カウンターで依頼番号を暗記して案内してもらう。


「ウサギの毛皮ですね。異世界人の依頼です。代金と毛皮は代理で処理しますね」


 16.5kラリルの収入になった。

 何に使用するか、非常に気になる。

 露店で買い取りもできるけど、そうすると身動きができなくなる。

 売っているのを買い集めるのも面倒だと、買い取り依頼を出すらしい。

 なるほど。


 お肉は合計8個持っている。

 串焼きお姉さんのところへ行こう。


 歩いていき、串焼き露店に顔を出す。


「お姉さん、こんにちは」


「また買いに来てくれたの?」


「実はウサギ肉をドロップしまして、買い取りか調理指南をしてもらえないかなと、思いまして」


「あー。いいよ。珍しいね。みんなめんどいからギルドで売る人が多いね。町の肉屋や料理屋に卸してるらしいよ」


「なるほど」


「じゃあ、買い取って、作業を見せればいい?」


「はい。お願いします」


 俺はウサギ肉8個を全部トレードした。

 値段は3kで24kラリル。

 思ったより高く買ってもらえた。


「お肉を切るんだけど、初心者ナイフでみんなやってる。包丁でもいいけどね。包丁が高いからさ」


「ふむふむ」


「バジルと塩コショウして、串に刺したら終わり。簡単でしょ」


「ひとつなら簡単そうです。全部だと面倒くさそうで」


「慣れよ。慣れ。あはは」


「そんなもんですか」


「うん。一本ずつ味見してって。タダだから」


「ありがとう」


「すみません。私の分まで。ありがとうございます」


「いいのいいの。肉屋とかギルドで買うともっと高くなるから、普段出せないのよね。メニューが増えたほうが客も喜ぶよ」


「そうなんだ」


 オム子もお肉をお金に変えた。

 俺の持ち金は42.5kラリル。

 オム子も同じぐらいだと思う。

 親しいとはいえ、別人なのでお金やドロップなどは共有するわけにもいかない。

 全部持たせて行方をくらまされても困るし、逆も責任持てないから困る。


「オム子、次、教会行ってみないか?」


「教会ですか? へぇどこです?」


「中央広場の横にあったでしょ」


「ありました。ありました。ステンドグラスのでっかい建物ですよね」


「そうそう」


「ここから近いですね。すぐ行きましょう」


 中央広場に行き『教会』に入る。

 中は通路が3本あり、座席がずらりと並んでいる。

 いわゆる普通の教会だった。


 教会はよく復活ポイントとして使用されることが多い。

 RPGあるあるだ。

 このゲームでは分からないが、どうだろうか。

 他には町の中央広場が復活地点になるのが別のあるあるだ。


 信者の人たちが何人か来ていて、お祈りをしている人もいる。

 この世界の宗教については調べていないので、分からない。


 一番前の演説台みたいなところに神父さんがいて、たまに信者に聖印を切ってお祈りをしているようだ。

 信者さんはお祈りをしてもらうと、神父さんにお金を渡していた。


「私たちは信者じゃないけどいいのかな」


「いいんじゃないかな」


 神父さんに近づいて、問いかける。


「神父さん、俺たち異世界人なんだけど、お祈りしてもらえるの?」


「もちろんです。神は何人なんぴとたりとも差別いたしません。罪深き者、普段信仰心のないものであっても望むのであるならば、道を示すのが神です。博愛の精神は健在です」


「なるほど。では、よろしくお願いします」


「冒険者の無事を祈っておきますね。マーリラハイン、リバゲルド」


 俺は前で頭を下げてそれをじっと待つ。

 聖印を切る動きをして終わった。


「ではお気持ちで結構ですので、ラリルをいただきます」


 俺は1kラリル硬貨を実体化して、神父に差し出す。


「貧乏冒険者ですみません」


「いいえ。その、気持ちが大切なのです」


 次はオム子の番だ。


「ではお願いします」


「冒険者たち特にお連れの方の無事を祈っておきますね。マーリラハイン、リバゲルド」


「ありがとうございました」


 オム子も同じ1kラリルを渡した。


「すみません。私もまだ貧乏なもので。お金が集まったらまた伺います」


「はい。いつでも、いらしてください。神はいつでもあなたたちを歓迎するでしょう」


「そういえば、ここって孤児院とかもあるんでした?」


「はい。右の通路を出たところが孤児院。反対側の左が墓地です。墓地には地下もありまして、最近変な人たちが集まるようになってしまって地下には入れないと思います」


「そうですか。ありがとうございます」


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