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第42話「砂嵐の支配者」

ザハールは僕たちの戦いぶりを無言で観察していたが、その瞳にはわずかな興味の色が浮かんでいた。そして、再びゆっくりと手をかざすと、周囲の砂がさらに激しく巻き上がり始めた。瞬く間に強力な砂嵐が広間全体を包み込み、僕たちの視界は完全にゼロに近づいた。今までとは比べ物にならないほどの嵐だった。

「これが私の本当の力だ。さあ、どうする?」

 ザハールの冷徹な声が、砂嵐の中心から響き渡る。しかし、その姿は完全に見えなくなってしまった。砂が肌を切り裂くように吹き荒れ、僕たちは立ちすくむことしかできなかった。

「くそ……これじゃ戦いにならない!」

 僕は剣を構えながら、焦燥感に駆られていた。このままでは僕たちが押しつぶされるのは時間の問題だ。

「視界が完全に遮られているわ……!」

 アリアも何とか砂嵐に耐えながら、魔法の杖を握りしめていた。しかし、彼女の魔法でさえ、この猛烈な砂の嵐を抑えることはできそうにない。

「この力……今までの戦いとは全く次元が違う……」

 僕は圧倒される状況に思わず言葉を漏らした。体中に砂がまとわりつき、動きが鈍くなる感覚が嫌でも伝わってくる。剣を振りかざそうにも、砂嵐の勢いが強すぎて思うように動けない。

 ザハールの砂嵐はただ視界を奪うだけではなかった。風と共に巻き上がる砂は、まるで鋭い刃のように僕たちの身体に襲いかかり、ほんの少しでも動けば傷を負うほどの威力があった。防御を固めていても、砂は防ぎきれない。全身が次第に痛み始める。

「どうすればいいんだ……?」

 僕は歯を食いしばり、剣を振るうが、まったく手応えがない。砂嵐の中でザハールは、まるで神のように絶対的な存在となっていた。こんなにも強大な力を前に、僕たちは一体どうすれば勝てるのか。

 その時、レオファングが突然鋭く吠えた。空中に舞い上がり、彼の体が炎のように輝き始めた。砂嵐の中で唯一の光源となったその炎は、周囲をかすかに照らし出し、ほんの一瞬だけだがザハールの影が浮かび上がった。

「ありがとう、レオファング……!」

 僕は一縷の望みに賭け、レオファングの炎を頼りにザハールへ向かって突撃した。足元は砂で不安定で、強風が前進を阻んでくるが、それでも僕は一歩一歩力強く進んでいった。

 しかし、ザハールは驚くほど冷静だった。僕の剣が彼に届く瞬間、彼は軽く手を動かし、再び砂を操って僕を弾き飛ばした。

「力だけでは勝てぬぞ」

 彼の冷酷な声が砂嵐の中から響いてくる。僕は砂に叩きつけられ、肺が圧迫されて息ができないほどの衝撃を受けた。立ち上がろうとしたが、砂の嵐が次々と僕を飲み込んでいく。

「くそ……これじゃ……」

 僕は歯を食いしばりながら、剣を杖のようにして何とか立ち上がろうとするが、身体が言うことを聞かない。ザハールの力は、まるで大自然そのもののような圧倒的な力で、僕たちの存在を簡単にかき消そうとしていた。

「レオンくん、大丈夫!?」

 アリアが必死に僕の名前を叫び、冷気の魔法で砂の嵐を抑えようとしていたが、ザハールの力は凄まじく、その冷気でさえ砂嵐に飲み込まれていく。

「どうすればいい……?」

 僕は自問自答しながら剣を握り直したが、頭の中は焦りと絶望感でいっぱいだった。このままでは何もできないまま、僕たちはここで終わってしまう。

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