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第40話「砂の迷宮での挑戦」

僕達がザハールから出された試練は「砂の迷宮」を突破することだった。だが、ザハールが最初に警告していた通り、そこはただの力比べではなかった。知恵と冷静さを試される、まさに精神力も問われる場所だった。

 僕たちは迷宮の入口に立つ。静かな緊張感が体を包み込んだ。アリアも僕も、レオファングですらも少し身を固めているのが分かる。砂の流れが壁のように動く迷宮の中、その音が耳に響き、心を乱す。

「ここは……ただの迷路じゃないな」

 僕は周囲を警戒しながら、迷宮の奥へと目をやった。

「頭使う感じのギミックだよね……私こういうの苦手なんだよね……ペトラちゃんがいたらなぁ……」

 アリアはぐぬぬ……と頭を悩ませていた。こういったパズル系のギミックはいつもペトラの役割だったからだ。

 僕たちは慎重に一歩ずつ進み始める。迷宮の中は薄暗く、砂の壁が絶え間なく動き続け、まるで生きているかのように僕たちを見守っていた。そして、すぐに三つの道が現れる。それぞれの道には、石碑が立っていて、そこには謎めいた言葉が刻まれていた。

「『砂は風に逆らい、月は影を飲み込む。進むべきは、影の無い道』……?」

 僕は石碑に刻まれた言葉を呟きながら考え込んだ。何を意味しているのか、すぐには分からない。

「影のない道……?影のない……すごく明るいとかそういう感じ……?」

 アリアが首を傾げながら考える。

「影がまったくできない道っていうのは無いだろうけど……確かに明るかったら影も少ないか……?」

 僕は周囲を見渡し、何かヒントになりそうなものが無いか探してみた。右と左の道には薄く影が伸びていたが、中央の道だけはほとんど影がない。それに道の入口にはそれぞれ太陽のマークが描かれていた。

「なるほど、一番明るい時間帯……つまりは一番太陽が高い位置にある時間か」

「この太陽の絵も左右に傾いたりしてるし、じゃあ真ん中の道が正解かな?」

 ここしかないと判断し、僕たちは中央の道を進んだ。少し歩けば後ろの道が崩れて無くなる。僕達には何も無いから正解ということなのだろうか?

 道を進んだ先には、巨大な砂時計があった。その下には三つの扉が並び、砂時計の砂が落ち切るまでに正しい扉を選ばなければならないようだった。どの扉にも異なる記号が描かれている。

「この記号……見たことがあるような……」

 僕は扉の前に立ち止まり、じっと記号を見つめた。先ほどと違って時間制限があるからちょっと焦ってしまう。

「『時間のあるべき道へ進め』……だって」

 アリアが扉の側にある石板の文字をよむ。扉に書かれている記号はどれも三角形を二つ、上下に並べたようなものだ。記号を見て、はっと声を上げた。

「レオンくん、見て! 砂時計の形に似ているわ。ほら、あのおっきい砂時計、時間制限じゃなくてヒントだったのかな?」

 彼女が指し示す扉には、確かに砂時計を逆さにしたような形の記号が描かれていた。

「なるほど、じゃあそれが正解だな」

 僕たちはその扉を選んで進むことにした。扉がゆっくりと開き、先に進む道が現れる。けれども、次のエリアで待ち受けていたのはさらなる難関だった。

「うわ、揺れる……!!」

「気を付けてレオン君、ここ、足場もすごく不安定かも……!」

 突然激しい揺れを感じる。慎重に僕たちが進むと、突然周囲の壁が動き出し、迷路全体が激しく揺れ始めた。砂の壁が迫ってきて、僕たちを閉じ込めようとする。

「動く迷路か!?いや、これは……」

 僕は周囲の壁に描かれた複雑な模様に気がついた。壁に描かれた模様が、どうやら僕たちが進むべき道を示しているようだった。

「これ、ただの迷路じゃなくて、パズルだね。模様が進むべき道を教えてくれてるんだ」

「な、なるほど!レオンくん頭いいね!」

 僕は気付いたことをアリアに共有する。僕達の中の頭脳はペトラだったが、その次にパズルをしていたのは僕だ。知識が形になってくれた。僕たちはすぐに壁に描かれた模様を目で追い始めた。模様の連なりを辿ると、それがまるで糸のように道を示していることに気づく。

「そう言われたらわかりやすいね……!じゃあ模様を追えばいいんだ」

 僕はアリアと協力しながら、模様に従って進む。迷宮の壁は次々に動くが、模様を見失わないように慎重に足を進めた。

 レオファングも翼を広げて上空を飛び回りながら、僕たちの進行を助けてくれている。彼の素早い動きと鋭い目が、壁の変化を素早く見極め、僕たちがどの方向に進むべきかを導いてくれる。

「こっちよ、レオンくん!」

 アリアが指し示した方向に進むと、突然、壁が動くのが止まった。僕たちは最後のパズルを解き、次のエリアに到達したのだ。


 次に僕たちがたどり着いたのは、さらに広大な広間だった。しかし、その広間はただの空間ではなかった。中央には、崩れかけた巨大な砂の像が立っており、像は時を刻むかのように少しずつ崩れていく。そしてその足元には、石板が置かれていた。石板には、またしても謎めいた言葉が刻まれている。

「『砂は永遠に流れ、時を止めることはできない。しかし、真実を見つめる者だけが、時を止める力を得る』……」

 僕はその言葉を繰り返し、頭を悩ませた。

「時を止めるって……砂時計の流れを止めるってことかしら?」

 アリアが思案顔で言うが、僕は一瞬首を振った。砂時計のヒントだとすればもっと単純だろう。しかし、目の前の砂の像はあまりに崩れかけていて、そのままでは何も感じられない。

「違うな。この広間は……砂そのものが満ちている。壁にも、あの崩れかけた像にも、ただの砂以上の意味があるはずだ。たぶん、真実を見極めるっていうのは、ただ見えるものに囚われず、奥にあるものを理解するって意味だよ」

 僕は像の崩れ具合をじっと見つめ、何か手がかりを探していた。

「でも、どうやってこの広間の砂を……」

 アリアが困惑気味に杖を握りしめる。僕も答えがすぐに浮かばなかったが、像の足元に目を向けた時、壁の模様がぼんやりと頭に浮かんだ。

「レオンくん、これ……ただの砂嵐じゃないわ。砂嵐そのものが、何かを示しているかも。像が崩れるのを止めることが、鍵なんじゃない?」

 アリアが鋭い直感を口にする。

「そうか……そうかもしれない!」

 僕はその言葉にヒントを得た。像が崩れているのをそのままにしてはいけない。砂の流れを止めること、もしくは逆にその流れをどうにか制御する必要がある。

「レオファング! 一度、砂を巻き上げてくれ!」

 僕は空高く飛んでいるレオファングに向かって指示を出す。

 レオファングは力強く翼をはためかせると、高く飛び上がり、その鋭い爪と口から熱風のブレスを放った。ブレスが広間の砂を舞い上げ、像を覆う砂が一気に渦を巻いて宙に浮かび上がる。

「アリア、今だ! その砂の流れを制御するんだ!」

 僕は彼女に目配せをし、アリアはすぐさま魔法を発動した。

「フリーズ・シール!」

 アリアが杖を振ると、砂嵐の渦が一瞬で凍りつき、広間全体が静かになった。まるで時間そのものが止まったかのような感覚が広がり、砂の流れはピタリと止まった。

「すごい……砂が本当に止まってる……」

 アリアが驚いた表情で凍りついた砂を見上げる。

「やっぱり、砂の流れを制御すればよかったんだ。『時を止める』っていうのは、砂嵐そのものを止めることだったんだよ」

 僕は剣を構えたまま、広間の静寂を見つめた。像も崩れるのをやめ、完全に止まっている。

「真実って、ただ目の前の状況に捉われるんじゃなく、そこにある隠れた意図を見つけることなんだな」

 僕は自分たちの行動が正しかったことに気づき、アリアに笑顔を返した。

「うん……これでようやく、次に進めるわね」

 アリアも少し疲れた様子だったが、嬉しそうに頷いた。

「よし、次の試練に進もう。レオファング、ありがとうな」

 僕はレオファングに感謝を伝え、次のステージに向かうために再び歩み出した。

 広間の奥には新たな道が開かれており、凍りついた砂嵐の中、僕たちは一歩一歩着実に進んでいった。

「なんだかすごく頭が冴えわたる気がするわ」

「いっぱい頭使ったしな、最終戦闘に入る前に準備整えておくか」

 そう、僕達は自分達のステータスを確認する。頭脳を使ったおかげかINTやMAGなどの知性を使うステータスが少し伸びていた。

「レベルもだいぶ上がってるし、これならザハールにも勝てそうね!」

「油断は禁物だぞ、アリア。最後まで気を引き締めていこうな」

「もちろんだよ!」

 自分達の技や武器の点検をして、準備を終えた僕達は目的地へと足を進めた。

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