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第39話「砂の王ザハールとの出会い」

砂の巨獣を倒して戻ってきた僕たちは、デザリアの街に大歓迎を受けた。住民たちは僕たちの活躍を聞きつけ、歓声を上げながら出迎えてくれた。

「本当にありがとう! これで安心して暮らせるよ!」

 ある若い女性が感激の声を上げ、彼女の隣では老人が深々と頭を下げている。

「お前たちがいなければ、この街はどうなっていたか……ありがとう、心から感謝するよ」

 彼の名前はカムラ。砂漠で最も尊敬される長老の一人だ。彼の深い声に、街全体の感謝が込められているのが感じられた。

「いえ、僕たちがやるべきことをやっただけです。皆さんが安全に暮らせるなら、それが一番ですから」

 僕は少し照れながら、街の人々の暖かい歓迎に応えた。アリアも微笑みながら住民たちと言葉を交わしていた。

 その夜、デザリアの街では特別なお祭りが開かれた。砂漠の国では、危機を乗り越えた時や大きな出来事があった時、皆で集まり祝うのが伝統だという。街の広場では色鮮やかな装飾が施され、住民たちは音楽に合わせて踊り、歓声を上げていた。小さな子供たちが手を取り合って走り回り、年配の人たちも温かい笑みを浮かべている。

「こんなに賑やかな祭り……デザリアの人々って本当に強いわね」

 アリアが笑顔で言いながら、広場を見渡していた。僕たちは戦いの疲れを忘れ、しばらくそのお祭りの雰囲気に浸っていた。美しい音楽と温かい食事、そして何よりも人々の笑顔に包まれた夜だった。

「さあ、砂の王ザハール様がお待ちだ。宮殿へ行かねばならんぞ」

 祭りの終盤、カムラが僕たちに声をかけた。どうやら、ザハールが僕たちを招待してくれているらしい。住民たちは拍手と感謝の声を送りながら、僕たちを送り出してくれた。


 砂の宮殿に到着すると、その光景に僕たちは圧倒された。外観はもちろん、その中に広がる景色はまるで砂で作られた彫刻のようだ。宮殿の壁や床、天井までもが砂の結晶で形作られ、淡い光がどこからともなく差し込んでいる。砂漠の荒々しさとは正反対の、静かで神秘的な雰囲気に包まれていた。

「これが……砂の王ザハールの宮殿か」

 僕は目の前の光景に、ただ呆然と立ち尽くしていた。

「砂がこんなにも美しいものだなんて……」

 アリアも驚きの声を上げ、宮殿の内部を見渡していた。

 やがて、僕たちは玉座の間へと案内された。そこには、圧倒的な威厳をまとった砂の王、ザハールが玉座に座っていた。彼の長い金色の髪が光を反射し、彼の周囲には柔らかい砂の流れが常に漂っている。力強い眼差しが、僕たちを静かに見据えていた。

「よくぞ来た、旅の者たち。お前たちが砂の巨獣を倒してくれたこと、深く感謝する。デザリアは再び平和を取り戻した」

 ザハールは低く落ち着いた声で言い、その一言で僕たちは強い安心感を覚えた。

「私の国を救ってくれたこと、本当に感謝する。しかし……さらなる試練を望むのならば、私はお前たちに試練を与えねばならぬ。力とは、それ相応の犠牲と覚悟が必要なのだ」

 彼の声には圧倒的な威厳と、何かを見透かすような鋭さがあった。

 僕は一歩前に出て、彼の視線をしっかりと受け止めた。

「僕たちはさらなる力が必要です。あなたの力を借りたい。だから、その試練に挑む覚悟はできています」

 ザハールは少し目を細め、僕たちをじっと見つめた後、ゆっくりと口を開いた。

「よかろう。お前たちが私の力に相応しいかを見極めよう。だが、その試練は過酷だ。覚悟はできているか?」

「はい、僕たちはどんな試練でも乗り越えてみせます」

 僕は力強く頷き、ザハールに返事をした。

 彼は一瞬だけ微笑み、冷静な眼差しで僕たちを見つめ続けた。

「では、私の宮殿の奥にある砂の迷宮に挑むがいい。そこにはお前たちの知恵と力、そして心が試されるだろう。それを乗り越えた時、私はお前たちに砂の王としての力を授けよう」

 玉座の間の奥に続く道が静かに開かれ、その先には巨大な迷宮が広がっていた。


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