目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第36話「デザリアへの旅立ち」

エリスから強大な力を手にした僕たちは、次なる目的地「デザリア」へ向かって旅を続けていた。デザリアは、砂の王ザハールが治める広大な砂漠の国。そこは日中は灼熱、夜は極寒の過酷な環境に覆われているという。僕たちは、フィアラヴェルでもらったお守りのおかげで、何とかその厳しい環境に耐えながら前に進んでいた。

 眼前には、果てしなく広がる砂の大地。強烈な日差しが頭上から容赦なく降り注ぎ、砂はまるで焼けた鉄板のように熱を持っている。遠くに見える陽炎が、まるで蜃気楼のように揺れていた。

「砂漠って、ここまで厳しいとは思わなかったな……」

 僕は額の汗を拭いながら呟いた。砂漠の風は、吹いても冷たさを感じるどころか、まるで熱風のように皮膚を焦がす。砂が靴の中に入り込み、歩くたびに足を重くする。この暑さの中解けないフィアラヴェルのお茶が本当に救いだった。不思議なもので、小さい四角い形をしたこの氷は口に放り込むと溶け始めその冷たさを体に浸透させ、喉を潤してくれる。

 アリアは少し疲れた表情を浮かべながらも、僕に向かって優しく笑みを見せる。

「でも、ザハールの力があればこの砂漠だってきっと乗り越えられるわ。どんな試練も、私たちなら大丈夫よ」

 その言葉に少し安心しながらも、僕はまだ先が見えないこの旅路に、緊張感を隠せなかった。フィアラヴェルでもらったもののおかげで動くことは可能だが、それでも完全には暑さを防ぎきれない。少しでも風が吹けば、砂が舞い上がり、目や口に入り込んでくる。呼吸すら苦しくなってくるほどだ。

「ザハールがこの国をどうやって治めているのか……知恵も魔力も、相当なものなんだろうな」僕はぼんやりとそんなことを考えながら、足を前に運び続けた。

 レオファングは、僕たちの周囲を飛び回りながらも、常に警戒を怠らない。小さな体だが、風を感じ取り、何かが近づけばすぐに知らせてくれる。その翼が時折砂を巻き上げ、少し涼しい風を届けてくれるのが、心底ありがたい。

「ありがとうな、レオファング」と僕が感謝の言葉をかけると、彼は「グルル」と低く鳴きながら僕のそばを飛び続けた。

「デザリアまではまだ遠いのかしら?」とアリアがふと口にした。

「地図上ではそう遠くないはずだ。だが、この砂漠のせいで進むスピードがかなり遅くなってる。油断はできないな」

 砂漠の空気は、昼間の暑さとは裏腹に徐々に冷たさを帯び始めていた。日が沈めば、今度は冷たい風が僕たちを襲うことになる。それが砂漠の恐ろしいところだ。激しい気温差が体力を奪い、気を抜けば命を落としかねない。

「ここで立ち止まるのは危険だ。少しでも進んで、安全な場所を探そう」僕は決意を固め、さらに足を前に進めた。

 アリアは頷き、僕に続いて歩き始めた。疲れはあるものの、僕たちはただじっとしているわけにはいかない。デザリアの住民たち、そして砂の王ザハールに会い、次なる力を手に入れるためには、この砂漠を突破しなければならないのだ。

 歩くたびに砂が足にまとわりつき、まるで僕たちの行く手を阻むかのようだったが、僕はそれでも前を向いて進むことをやめなかった。

「この砂漠を抜ければ、ザハールの国が待っている……絶対に乗り越えよう」

 僕は心の中でそう誓いながら、アリアとレオファングと共に、果てしない砂の大地を歩き続けた。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?