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第34話「再戦」

エリスに一度敗れ、現実世界に戻った僕は、24時間の修行を経て再び「エルドラ」の世界に戻ってきた。眼を覚ませばフィアラヴェルの宿屋の中だった。アリアとレオファングは、僕が戻るのを信じて待ってくれていたようだ。

「レオンくん!」

 アリアが僕を見つけて駆け寄る。彼女の目には、再会の喜びと安堵があふれていた。レオファングも僕の周りを嬉しそうに飛び回り、「グルル」と力強い咆哮を上げた。

「心配かけたな、アリア。今度こそ、エリスに勝つための準備は整えた」

 僕は息を整え、冷静な口調で彼女に言った。

「そう……!今度こそ、エリスを倒しましょう!」

 アリアも決意に満ちた表情で頷いた。まずはステータスを確認する。何度かの戦闘で僕もアリアもレベルが上がっている。アリアは戦闘中に思い出した魔法がいくつかあるようで、習得スキルの欄がだいぶ増えていた。僕はというと……

「お、狙い通りだ!やっぱり現実での修行がこの世界に繋がるみたいだよ!」

 まず、スキルとして「氷耐性」と「集中」を手に入れていた。「集中」は「一時的に自身の命中率やクリティカル率、回避率を上昇させる」スキルだ。これで寒さで思考が鈍ることがなくなろうだろう。あとは過酷な修行で精神が鍛えられたのか魔力や魔法防御に関するステータスも伸びている。エリスは魔法系の攻撃を主に扱うからこれはいい結果だろう。

「これでまた挑戦できるね……!」

「アリアは大丈夫だったか?僕がいなくなった後……」

「それは大丈夫だったよ!レオンくんが攻撃されて動かなくなった後レオファングが守ってくれて……、私とレオンくんを安全な場所まで運んでくれたの。そこからなんとかして街まで戻ったわ。それにレオンくんの加護もあったし……」

「それなら良かった、レオファングもありがとう」

 エリスも僕達を殺そうとしているわけではない。これがもし魔王軍との戦いならきっと危なかっただろう。危険を察知できるようにならないと……と僕は思った。

「よし、少し休んでからまた再挑戦しに行こう。次こそ勝てると思う。それにいくつか作戦もまた考えてきたんだ。その話し合いもしたいしね」

「そうだね!お腹がすいてはなんとやらだし、まずはご飯だね!」

 僕達は食堂の方へ向かった。そこで僕がした修行や作戦について話し合った。


 僕たちは再びエリスのもとへ向かう。彼女は前回と同じように冷たい表情で、僕たちを待ち構えていた。

「戻ってきたか……あのまま尻尾を巻いて逃げるようなやつだったらどうしようかと思ったよ。さぁ、始めよう」

 氷のように冷たい声が耳を刺す。エリスが手をかざせば周囲の空気が一気に冷たくなった。そして、氷と風が巻き起こり、巨大な氷竜がその場に現れた。氷竜の口からは、冷気が吐き出され、僕たちに襲いかかる。

「私だってちょっとだけ修行したんだから……! インフェルノ!」

 アリアが炎の盾を作り出し、冷気を防いでくれる。しかし、エリスの力は強い。僕たちは氷竜に押され気味だった。

「レオンくん、ここからどうするの……!?」

 アリアが焦りの声を漏らした。

「大丈夫だ。今度は準備してきた。現実世界で修行して得た力を見せる!」

 僕はそう言って、剣を強く握りしめた。

 現実世界での修行を経て、僕の体は氷耐性を手に入れ、寒さに対して強くなっていた。今までのように冷気に動きを封じられることはない。そして、冷静さを保つスキル「集中」の感覚が、僕の中に流れ込んできた。

「アリア、レオファング! 俺がエリスに突っ込むから、氷竜を引き付けてくれ!」

 僕は二人に指示を飛ばし、剣を構えた。

「わかった!フレイム・バースト!」

 アリアが再び炎の魔法で氷竜に攻撃を仕掛け、レオファングも炎のブレスで応戦した。炎が冷気を弾き、氷竜の動きを一瞬鈍らせる。

 その隙をついて、僕はエリスに向かって全力で突進した。冷気は僕を包むが、体に凍りつくような感覚はもうなかった。

「行くぞ……シャドウファング・スラッシュ!」

 新たな集中力で放った剣技が、エリスの氷の結界に直撃した。しかし、結界は硬く、簡単には壊れない。

「アリア、援護を頼む!」

 僕が叫ぶと、アリアは素早く反応して炎の魔法を結界に放った。炎と冷気がぶつかり合い、結界に小さな亀裂が入った。

「今よ、レオンくん!」

 アリアの叫びに応じ、僕はもう一度全力で剣を振り下ろした。

「シャドウファング・スラッシュ!!」

 再び剣が結界を叩きつけると、アリアの炎が追い打ちをかけた。そしてついに、氷の結界が音を立てて砕け散った。


 エリスは、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷静な顔に戻り、静かに呟いた。

「……見事だ」

 その言葉とともに、彼女は魔法の力を収め、戦闘を終えた。

「お前たちの力、そして互いへの信頼を認めよう。これまでの試練を乗り越えたのだから、私の力を貸すに値する」

 エリスは厳格な態度を崩さず、僕たちに向けて歩み寄ってきた。

「エリス……ありがとう。俺たちは、この国を救い、世界を救うために来たんだ。あなたの力が必要なんだ」

 僕は息を切らしながら感謝の言葉を伝えた。

「分かっている。私の力をお前たちに託そう。だが、これから先もお前たちを待ち受ける試練はさらに厳しいものとなるだろう。それでも進む覚悟があるか?」

 エリスの言葉には、再び冷たい威厳が込められていた。

「もちろんだ。俺たちは絶対に諦めない」

 僕は力強く答えた。アリアも同様に強く頷いた。

 こうして、僕たちはエリスとの試練を乗り越え、彼女の信頼を得ることに成功した。現実世界での修行と仲間との連携によって、僕たちはさらなる力を手に入れた。だが、この戦いは、まだ序章に過ぎない。エリスの力を手にし、次なる試練へと歩み出すための準備が、今始まった。

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