試練の最後に待ち受けていたのは、エリス自身だった。長い銀髪が氷の風に揺れ、透き通った青い瞳が冷たく僕たちを見据えている。彼女はまるでこの氷原の女王のように静かに立っており、その存在感は圧倒的だった。
「私の力を借りたいと言うなら、最後に私自身を倒してみせよ」
とエリスは冷静に語りかけてくる。その声は冷たくも威厳に満ちており、彼女がどれだけ強大な存在かを痛感させるものだった。僕とアリアはそれぞれ武器を構え、決意を新たにした。
「ここで引くわけにはいかない。エリス、あなたの力を借りるために、全力で挑む!」
僕は剣を抜き、エリスに対して叫んだ。
「あなたがこの国を守っている魔女なら、私達はそれに勝つのみ……!」
アリアも杖を掲げ、戦闘の準備を整えた。エリスは冷たい視線を僕とアリアに向けると、静かに手をかざした。瞬間、氷の結界が僕たちを囲み、空気が一気に冷え込んだ。結界の中で雪と氷が渦巻き、エリスの強力な魔法が展開され始める。
「まずはその覚悟を試そう」とエリスが静かに呟いた瞬間、巨大な氷の槍が彼女の手から放たれ、僕たちに向かって飛んできた。
「避けろ!」
僕はアリアに叫びながら、素早く横に飛び避けた。氷の槍は地面に突き刺さり、瞬時に大地を凍らせた。
「凄まじい威力……このままじゃやられる!」
アリアは冷静さを保ちながら、炎の魔法を発動させた。
「フレイム・スピア!」
アリアの炎の槍がエリスに向かって飛んでいくが、エリスは淡々と指先を動かし、氷の盾を作り出して炎を防いだ。彼女の魔法は優雅でありながらも圧倒的な力を秘めていた。
「私の魔法を破るには、もっと強力な力が必要だ」
とエリスは冷たく言い放つと、周囲の氷と雪を操り、氷の狼を呼び出した。
氷の狼たちはエリスの命令に従い、僕たちに襲いかかってきた。鋭い牙と冷気をまとった体が猛スピードで接近する。
「レオンくん、狼が来るわ!」
アリアが警告を発する。「分かってる!」と、僕は剣を構え、氷の狼に向かって突進した。僕は狼の鋭い爪をかわし、瞬時に反撃を加える。しかし、狼たちは凍てついた肉体を持っており、簡単には倒れない。アリアが「フレイム・バースト!」と叫び、炎の魔法が氷の狼たちを焼き尽くした。しかし、エリスの魔力で作り出された狼たちは、すぐに再生して立ち上がり、再び僕たちに襲いかかってくる。冷たい風がその場に吹き荒れ、僕たちの動きを鈍らせていた。
「くそっ、こいつら……全然効いてない!」
僕は剣を握り直し、必死に狼たちに斬りかかった。だけど、次から次へと襲いかかってくる狼の群れに圧倒され、僕は徐々に追い詰められていく。村の人達が作ってくれた防具のおかげで凍えることはなかったが、それでもエリスの側ではその守りを貫通するくらいの寒さがある。なんとか剣を振るうが手が冷えてだんだん動かなくなっていく。
その時、レオファングが前に飛び出した。彼の小さな体が光をまとい、炎のブレスを吐き出す。ブレスが直撃した狼たちはついに崩れ落ち、氷の塊へと変わった。
「ナイスだ、レオファング!」
僕はレオファングに感謝の声をあげる。彼は満足そうに「グルル」と喉を鳴らして答えてくれた。
しかし、次の瞬間、強烈な冷気が僕たちを包んだ。エリスが静かに手をかざし、氷の柱が地面から一気にせり上がり、僕の体を吹き飛ばした。
「レオンくん!」
アリアが叫んだが、僕はもう動けない。体が凍りついたように硬直し、指先すら動かせなかった。
「ここまでだ……」
エリスの冷たい声が僕の耳元に響く。視界がぼんやりと暗くなり、意識が遠のいていった。