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第23話「守護龍・ルフェールと新たな仲間」

 村の広場では、協力してくれることになった守護龍・ルフェールがその巨大な体を横たえ、村の守護者としての役割を果たしていた。傍にはマルクスとペトラが立っておりなにやら二人で話しているようだった。

「お疲れ、二人とも。何かあった?」

 僕の声に気付いた二人がこちらを向く。

「あぁ、レオンさんお疲れ様です。いえ、何かあった訳ではないのですよ。ただ私達の今後について話合っていまして……」

 ペトラがそんな事を言いながら村の中心部分に設置されたクリスタルを見る。術が発動しているのか常にほんのりと光っていた。

「俺達もここにずっと長居できないからな、バタバタしていて期間を延ばしてしまっていたがそろそろ出発しないとなと思って」

 彼らはそう説明してくれる。この村はルフェールとクリスタルの加護があればしばらくは襲われることはないだろうとの事だ。

「ルフェール、お前がいてくれればこの村は安心だな」

 僕が問いかけるとルフェールは静かに頷いた。グルルと静かに唸り、僕の頭に直接響くような声を響かせる。

「お前ならこの世界を救えると感じたまで。私の役割は、この村を守ることだが、光の守護者たるお前に私の一部を託そう」

 その瞬間、ルフェールの体から光が放たれ、その光が小さな龍の姿をとった。真っ赤な龍はつぶらな瞳で僕を見つめ、グルルと一声。

「彼は私の一部だ。彼が共に行くことで、私の力を必要な時に引き出すことができるだろう。お前の新たな仲間だ。名は、レオファングとしよう」

「レオファングか……頼りにしてるぞ!」

僕はその小さな龍の頭を撫でた。アリアも微笑んで、「心強い仲間が増えたね」とレオファングに声をかけていた。彼は自分の力を僕達に見せるように小さく炎の息を吐く。小さくても力強いその一撃から彼がこのサイズでも守護龍の一部である事が分かった。

「そうだ、マルクス。ちょっと相談があるんだけど」

 僕はガルドさんから言われたことを思い出す。彼にその説明をすれば彼は二つ返事で了承してくれた。

「あぁ、それくらいなら。そもそも、この村の現状も含めて本格的に出発する前に王様の所にはもう一度寄ってもらおうと思ってたからな」

「それなら良かったよ。防具が出来るのはまだ先になるみたいだからそれまでに一度一緒に王国に行こう」

「分かったよ。そうだなぁ……なるべく早い方がいいだろう。王様に連絡しておくから明日には出発しよう」

「了解。いろいろとありがとう、マルクス」

僕はそうお礼を言う。彼は笑って答えてくれる。

「いいって事よ。お前らが俺達に最初言っていた話もあるけど、なんかお前たちの事は放っておけないんだ。なんか古い友人みたいに……」

 へんだよな、と彼は笑う。その笑顔が少し寂しかった。早くマルクスとペトラの記憶を取り戻してあげたい。もしかするとこれから先、彼らみたいに記憶を失っているプレイヤーもいるかもしれないし……。僕達が彼らの最後の希望になれるように頑張ろう、そう心に決めた。


 エルミス村で過ごす間、僕とアリアは村人たちとの交流を深めていた。村の子どもたちはルフェールの姿を見て目を輝かせ、龍の威厳に満ちた存在を尊敬のまなざしで見上げていた。一方で、レオファングの小さな姿は子どもたちの人気者となり、彼らはその小さな龍に興味津々だった。

「レオン、この村は平和で暖かいね。すぐに出発する必要もないし、少しこの雰囲気を楽しみましょう」

「そうだな、防具が完成するまでまだ時間もかかるし、しばらくはここで体を休めようか」

 アリアとそう話す。ルフェールは本当に優しい龍だ。子供達が彼に登ったり、触ったりしても嫌な顔一つせず遊んでくれる。そんな姿に最初は警戒していた村の人達もすぐ打ち解けてくれた。

「二人とも本当にすごいね~!英雄になれちゃうよ!」

 リリィちゃんがキラキラとした笑顔で僕たちを見る。

「ありがとう、リリィ。この村を、世界を守るために僕たちは頑張るからね」

「うん!二人なら大丈夫!なんたってリリィを助けてくれた英雄だから!」

 そういって彼女が僕達に小さな布に包まれた何かを渡してくる。

「これね、お守りなの!この村に昔からある安全のお守り!ママと二人で作ったんだ!中身はおまじないだから見ちゃダメだよ!」

 それは小さな布製の袋で首から下げるための長いヒモがついていた。感触的に中には魔水晶でも入っているのだろうか?硬い何かがごつごつをしていた。

「これがあったら二人の事守ってくれるからね!小さい龍の分は……ないけど……次二人がエルミスに戻ってくるまでには用意しておく!」

彼女はそう言って笑う。

「だから絶対に戻ってきてね!」

「うん、ありがとう、リリィちゃん」

 少し悲しそうな声で笑うリリィの頭をアリアが撫でる。子供からしたら旅に出ると言うのは永遠のお別れのように感じるのだろうか。短い時間だったがココの村の人達は家族のように優しくしてくれた。家族との時間があまりなかった自分にとっては本当に温かい村だった。だからこそ、この村が魔王のせいで無くなってしまうのは悲しいと思う。

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