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第15話「アザルド」

アザルドが残した魔力の痕跡を追って歩けば、そこには古びた建物があった。

「これ……村で使われなくなった教会ですね……」

「ここに隠れてるって事……?」

建付けの悪い扉をあける。教会の中は、ペトラが放つ光でわずかに明るくなったものの、どこか不気味な静寂が支配していた。アザルドの闇の気配が重くのしかかり、まるで空気が固まったかのように動きづらい。

「ここまで追いかけてくるとは、愚か者どもめ……」

 アザルドは低い声で嘲笑した。

「わざわざ墓場に入りに来たか?一度私が見逃してやったというのに……」

アザルドの手に握られた剣が、黒く染まっている。その闇がまるで空間そのものを裂くような威圧感を放っていた。僕は震える体をなんとか落ち着かせて、剣をしっかりと握り締めた。

「行くぞ、アリア、ペトラ!」

「うん!」

「はい、レオンさん!」

ペトラがすかさず呪文を唱える。オートヒールだ。僕の体力を回復し続けてくれる。

「なんだかこの空間……違和感がありますね……魔力の流れが……アリアさん、探れますか?」

「まって、頑張ってみるね……!」

アリアはじっと目を閉じ、アザルドの魔力の流れを探り出した。しかし、アザルドの斬撃が魔力をまとい、次々と襲いかかってくる。まるで生きているかのようにソレは形を変え、容赦なく僕達に向かってくる。

「くっ…大地の加護!」

大地の力を呼び覚まし、身体に防御の力をまとわせるが、それでもアザルドの一撃の重さに圧倒され、苦しみの声を漏らしてしまう。ペトラのヒールが無ければ、すでに立っているのも難しかっただろう。

「レオンくん、気をつけて!……も~!アザルドの魔力の流れがぐちゃぐちゃで良くわからない……!」

「人間ごときが私を探ろうなど……!」

 その瞬間、アザルドの剣が大きく振り下ろされ、その攻撃がアリアに襲いかかる。僕は反射的に体が動き、剣を構えて受け止めようとするが、その衝撃は予想以上だった。

「ぐっ…!」

 後ろに弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。しかし、倒れるわけにはいかない。必死に意識を保ち、アザルドに向かって再び立ち上がる。

「レオンさん!」

 ペトラが駆け寄り、治癒の魔法をかけてくれる。

「お前の目的は僕だろ!アザルド!!」

 彼に攻撃がほとんど通らない事を分かっていても僕は攻撃の手を緩めない。何度か攻撃が彼の鎧に当たるが、その傷が一瞬で回復する。先ほど、村で戦っていた時とは違う……きっと何かトリックがあるはずだ。アリアはその隙を狙って、アザルドの魔力の流れを見極めようとしていた。

「無駄なことを…」

 アザルドが冷笑を浮かべ、大きく剣を振り上げる。

「この闇に抗える者など、存在しない!」

アザルドの剣が再び振り下ろされ、その斬撃が再び襲いかかる。

「大地の……加護……っ!!」

 歯を食いしばり、アリアとペトラを守るためにその攻撃を受け止める。しかし、その痛みに思考が一瞬飛びそうになる。

「レオンくん……!」

「アリア、僕は大丈夫……だから……!」

 絞り出すように声を上げる。反撃のタイミングは彼女にかかっている。

「……!!わかったわ、二人とも!」

 アリアが小声で応じた。

 「あの祭壇……!あそこがアザルドの力の源よ……!」

アリアが指さした先、そこには、古びた祭壇があった。その上に置かれた真っ黒なクリスタルが怪しく輝いている。

「アザルドの力を支えているのはあのクリスタルよ…!あれを壊せば、アザルドの力を削ぐことができるわ!」

「なるほど……確かに、力の供給源を断てば、奴も無力化できるかもしれません!」

僕はアザルドの気を引くために再び立ち上がった。

「僕が奴の気を引く。その間にクリスタルを頼んだ……!」

「任せて、レオンくん!」

 アリアとペトラが頷き、素早く動き出す。僕はアザルドに向かって突進し、大きく剣を振り下ろしてわざと隙を見せ、アザルドの注意を引いた。その瞬間、アリアとペトラがクリスタルに向かって駆け出す。

「シャドウファング・スラッシュ!」

僕は先ほど覚えた技を全力で放つ。巨大な爪が彼を引きさく。防御力を無視するその一撃は彼に軽くだが確かなダメージを与える。その一瞬の隙を突いて、アリアがクリスタルを破壊するために魔法を放った。

「ぐああああ!」

アザルドが苦悶の声を上げる。彼を取り囲むその重々しい闇がどんどんと薄くなっていく。その隙に再び剣を振り下ろし、再びシャドウファング・スラッシュ追撃をする。だが、アザルドはそのまま終わらなかった。

「くそ……次は覚えていろよ……!」

 彼は闇に包まれながらも、なおも逃げることを選び、姿を消してしまった。

「くそ……!また逃げられたか…」

 息を整え、仲間たちを見た。

 「でも、次は…次こそ必ず…!」

アリアとペトラもその言葉に力強く頷いた。次こそ、アザルドを完全に倒すと僕は決意した。

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