僕とアリアは村の外で腕試しをしてみる事にした。現状格上の相手としか戦闘していない。この村は最初のスタート地点からも近いし、存在するエネミーもレベルが近いだろう。まずは二人のステータスを再確認する。
【レオン:ステータス】
レオン LV.1
HP:20/20
MP:20/20
SP:15/15
ATK:15
DEF:5
MAG :15
RES :5
SPD:7
DEX:10
INT:5
LUK:5
状態:復活の加護
【アリア:ステータス】
アリア LV.1
HP:15/15
MP:30/30
SP:10/10
ATK:5
DEF:3
MAG:20
RES:10
SPD:8
DEX:7
INT:15
LUK:5
状態:
「やっぱりレオンくんのスピードステータスだけ高いね」
「そうだなぁ……。まぁ、基本的にみんなが心配だし、何回この加護が続くかもわからないからログアウトはしない方針でいたいけど……」
そう思ってふと恐ろしい考えが頭に浮かぶ。
「僕たちの身体って現実世界で眠ってるわけでしょ……?まだそこまで時間がたっていないからいいけど……これ以上時間がたったらどうなるんだろう……?」
人間は生活するのに食事をする必要がある。もちろん、排泄だって必要だし、清潔に保つ必要もある。アリアはまだ家族がいるからいいものの、僕は家族が基本家にいない。今の現状を伝えた方がいいのだろうか……?それにペトラやマルクスのリアルの事情は知らない。現状彼らがNPC化している限り、確かめる方法もない。
「……確かに……現実世界からそもそも生身の身体が行方不明になってる理由も謎だけど、そのまま残ってる私達はどうなるんだろう……。あんまり時間かけない方がいいのかな……?」
「かもしれない……。最悪僕が死んで現実に戻って確認するって方法もあるけど……あまりそれは取りたくないな……」
「なんとかこの世界にいる状態で現実世界と連絡が取れたらいいのにね…そもそもレオンくんは加護のおかげなのはわかるけど私までこの世界で私のままでいれる理由もわからないし……もしかしたら私達みたいに自分のままこの世界に来ている人もいるかもしれないし……はぁ~……まだまだ情報が足りてないね……」
「そうだな……情報収集に修行……やることが山積みだな……」
「……レオンくんちょっとワクワクしてる?」
アリアが怪訝そうな顔をしながら僕の顔を覗き込んでくる。視線が痛い。
「そ、そんなことないよ!みんなの命がかかってるんだよ!?」
「でも、ちょっとノリノリだし……」
「い、いや~……時間がないって聞くと……こう、ゲーマー魂が燃えるというか……この難しい状況の中どう攻略しようかと考えると楽しいというか……」
僕はアリアから視線をそらせていう。危険な状況なのはわかっているけれど……まだ現実味がないせいだろうか。確かに頭のどこかでワクワクしている自分がいた。
「まぁ、落ち込みすぎたりするよりはましだけど……本当に命、かかってるんだから、危険なことはしないようにね?」
「……分かってるよ。それにアリアのお母さんと約束したからさ……アリアの事は守るって」
なんだか妙に恥ずかしくなって小声になってしまった。
「なにそれ!なんか、面白いね。でもレオンくんが守ってくれるなら安心だよ」
アリアはそう笑っていた。きっと彼女も怖いだろう。だからこそ、彼女の恐怖心を和らげるために僕が頑張らないといけない。
「とにかく今は状況確認でしょ!ほら、あそこにツノウサギがいるし、腕試ししてみよ!」
「そうだな……!」
僕たちは気持ちを改めて武器を構える。ツノウサギはウサギと名前がついているが、一本の長い角が生えている危険なエネミーだ。あの角で刺す攻撃は最初の段階だと致命傷になりかねないくらいの威力がある。大きさも子供の半分くらいのサイズでそこそこ大きい。現状僕が出来るのは通常の攻撃がいくつか……といった感じだ。アリアはリリィちゃんを助けたときにも教えてくれたけど、初級の元素魔法がいくつか……といったところ。目の前のツノウサギのレベルは3程度で、そこまで強くもない、初心者向けのエネミーだ。
「距離があるし……まだ気付かれてない。とりあえずアリア、魔法を撃ってみてくれ」
「はぁ~い!……ファイア!」
彼女が呪文を唱えれば火球がツノウサギに向かって飛んでいく。レベルが上がればその発射速度もあがるのだが、レベルが低い状態だと着弾するまでの時間も遅く感じる。それでも向こうに気付かれる前に火球はツノウサギの皮膚を焼く。ギャッという短い悲鳴と共にこちらの存在に気付いたようで、額から生える立派な角をこちらに突き刺そうと、走り出す前のポーズをとる。
「ダメージ値的に一桁ってところかな……まぁ、そんなもんか……ウサギ種は毛皮も熱くて魔法の通りわるいもんね」
アリアが分析する。そういうエネミーの特徴はもといたエルドラを変わらないらしい。
「それなら……!」
と、走り出したツノウサギをギリギリまでひきつけ思い切り胴体を狙って持っている剣を突き立てる。しかし足の速いウサギ種なだけあって、その勢いに追いつけず、切っ先は地面を突きさしていた。
「くそ……!思った以上に早いな……いつもなら遅いくらいなのに……!」
いつもと違う感覚に戸惑ってしまう。なんとかツノウサギの攻撃はよけたものの、また、向こうはこちらに突っ込んで来ようと構えている。
「じゃあ足止めしてみるね……!フリーズ!」
アリアが氷の呪文を唱える。ひんやりとした空気と共に、ツノウサギの足元が氷付いた。
「よし、いまだ……!」
動きが止まったツノウサギに向かって剣を振るう。全力の力を込め体を両断しようと思ったが、実際はその横っ腹を剣で殴っただけで、完全に切断されることはなくツノウサギは少し吹っ飛んだ。
「やっぱり初期ステータスだから弱いな……!」
いつもならワンパンの相手なのに……と思いながらトドメがさせてなかったようで立ち上がろうとするツノウサギの身体に今度は剣を突き立てる。ザクリと伝わる感覚。すこしぞわっとした。
「……なんか……感触がリアルだな……」
「なるほど……?」
剣から伝わってくる感触に違和感を覚える。
「そもそもエルドラ自体リアルなゲームだったけど、それ以上にリアルというか……これがこの世界に取り込まれている……現実を侵食してるってことなのかな?」
「なにかも……私も魔法使った時の……MPを消費したときの疲れる感じがいつも以上に感じるし……」
戦闘面も今まで以上にリアルと言う事だろうか……?もしそうだとしたら、困る部分もある……が、
「戦闘面での動きに関しては……戦略が広がりそうだな。ステータス差がある相手にも戦略で勝てるかもしれないし」
まぁ、まだ試すには怖い段階だけど……と付け加える。
「とりあえず、しばらく狩り続けてレベルアップとかステータスがどんな感じに上がるか様子見してみよう」
「そうだね!運よくなのか分からないけど、アイテムは元のエルドラから引き継がれてるからポーションはたくさんあるし!」
そういって彼女は鞄の中からポーションを取り出して飲み干す。僕もそれに続いて飲み干した。体の疲れが一気に無くなる。
「よし、次いこうか」
僕たちは再び次のツノウサギを探し、しばらく狩り続ける。数時間後、僕たちは一息つくために木陰で休むことにした。
「だいぶ狩ったな……!」
二人で20匹くらい狩っただろうか。全部アイテム鞄の中に入れてステータスを確認する。
「あれ……?」
「これって……」
二人で同時に声を上げた。そこそこの数を狩ったのだ。確かにレベルが上がっており、ステータスもあがっているのだが
「なんか渋いね……」
今までとは伸び方が違うのだ。今までのゲームなら3レベは上がっててもおかしくないのだが、たったの1レベしか上がっていない。
「でも、ステータスの方は変な伸び方してるね」
僕は筋力関係、アリアは魔力関係が以上に伸びていた。
「もしかしてレベルはあんまりあがらないのか……?本当に動きの経験値が繁栄されてるのか……?」
強くなっている感覚はある。もうウサギくらいだったらワンパンできるようになったし……。しかしそれは強さというより確かに自分たちの技術力が上がっただけな気もする。
「だからレオンくんが戻ってきた時もスピードが上がってたのかな?現実で全力で走ったからその技術が繁栄された……みたいな」
「なのかな……まだ謎な事がおおいな……とりあえず、ここら辺だともう強い魔物もいないし、ゴブリンたちがいる森まで行ってみるか?例の魔法陣も気になるし」
「そうだね。まだ時間もあるし行ってみようか」
そういって僕たちは森の中に行くことにした。