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第3話「隠しアイテム」

ダンジョンの奥深くで僕はふとした違和感を覚えた。石壁にかすかに見える紋様……それが何かを示しているように見える。

「もしかして……」

僕は石壁を調べ、その紋様を押してみた。すると、壁が静かに動き、現れたのは隠し部屋への入口。

「やっぱり、ここに何かある!」

僕は慎重に隠し部屋の中に入る。そこには、淡い光を放つ小さな宝箱が置かれていた。緊張しながらも期待を胸に、僕は宝箱を開ける。宝箱の中には、一つの輝くクリスタルがはめられたネックレスが入っていた。それは「復活の光」と呼ばれるアイテムらしく、レア度は……

「伝説級……!?トッププレイヤーが一つ持ってたらいい方のレアアイテムじゃないか……!すごいラッキーだな……」

装備すれば、温かい光が僕の体を包み込んだ。その瞬間、力が湧き上がる感覚が広がり、全身に新たなエネルギーが満ち溢れる。

「名前通り蘇生系の加護なのかな……新マップの装備品だし、すごいお宝だといいなぁ……!」

光り輝くクリスタルを眺めていると、ふと誰かの気配を感じる。もしかして誰か入ってきたのか?と思って振り向けばそこには……

「驚かせてしまってごめんなさい……どうしても伝えたいことがあって……」

と、誰かが立っていた。ただ、その姿に僕は驚く。古めかしい遺跡に似合わない現代風の服を着たソレはまるでホログラムで投影されているかのように荒く、ノイズがかっていた。かろうじて眼鏡のようなものをかけているのはわかるが、ノイズの激しさのせいでそれ以上の情報は分からないのだ。

「その装備を――にした貴方に言いたいことがあります。それは――で――の――――です……」

録音されている声を流しているのだろうか?その声はノイズに阻まれて聞き取れない。相手は必死に何かを僕に伝えようとしているのだが、何も聞き取ることができない。

「とにかく――――では、危険――――!」

「危険……?」

その言葉が嫌に耳に残った。イベントNPCだろうか、それにしては異質すぎる……そう思った時だった……。隠し部屋の外から近づく不気味な気配。それを察知したのか、それともそれだけのイベントだったのか、ぱっと、その人はノイズと共に消える。振り返ると、黒い霧に包まれた巨大な影が現れた。どうやら、このダンジョンを守るボスモンスター「暗黒の守護者」らしい。アイテムを獲得することで発生するイベントだろう。彼の目は赤く光り、漆黒の甲冑が不気味に輝いていた。

「おっと……たぶんあのボスを倒さないとここから出られない仕様だな……!」

僕は剣を握りしめ、戦う準備をする。暗黒の守護者は、巨大な漆黒の剣を振りかざし闇を纏った攻撃を繰り出してくる。一撃一撃が重く、広く、確実に僕の体力を削り取っていく。さらに、彼の周囲に漂う黒い霧から無数の黒い触手が生えてきて僕に襲いかかる。

「まずいな……!」

僕は触手を避けながら、守護者の攻撃をかわし続けた。しかし、次の瞬間、守護者が手を掲げると、僕の足下に魔法陣が現れる。

「おっと……!これは……!」

光る魔法陣から黒い炎が吹き上がり、僕を焼き尽くそうとする。僕は素早くその場を飛び出し、距離を取った。息が荒く、体中が痛むが、ここで諦めるわけにはいかない。

「冷静に……一つずつ確実に……!」

心の中で自分に言い聞かせ、再び守護者に向かって突進した。彼の攻撃をかわしながら、隙を見つけて一撃を加える。しかし、守護者はすぐにバリアを張り、攻撃を防いでしまう。

「こんな……!」

焦る僕に、守護者はさらに強力な魔法を放った。黒い稲妻が僕に向かって襲いかかる。

「ぐあっ……!」

致命的な一撃を受け、視界が暗くなり、瀕死時に流れる警告音が脳を支配する。

「ここで……終わるのか……?」

その瞬間、首にぶら下がっていた「復活の光」が輝き始めた。先ほど感じた暖かい光が僕の体を包み込み、再び力が湧き上がる感覚が広がる。確認すればHPがマックスに戻っている。やはり、名前の通り蘇生系の加護らしい。クールタイムは24時間。一日一回の即時蘇生というわけか……?

「まだ……終わらないぞ……!」

僕は再び立ち上がり、守護者に向かって突進した。復活の光の力で再び立ち上がった僕は、まるで新たな力を得たかのように動きが冴えていた。守護者の攻撃をかわし、隙を見つけて一撃を加える。しかし、今回はさらに力強い攻撃を繰り出すことに決めた。

「炎の剣!」

僕は剣に火の魔法を纏わせ、一気に守護者に突進する。燃え盛る剣が守護者のバリアを貫き、その体に深い傷を負わせた。

守護者は苦痛の咆哮を上げ、彼を取り囲む黒い霧がさらに濃くなった。その中から無数の矢が僕に向かって放たれる。

「防御結界!」

僕は素早く魔法の結界を張り、その矢を防いだ。結界が矢をはじく音が響く中、僕は次の攻撃を準備する。

「雷撃!」

手を天に掲げ、雷の魔法を呼び起こした。空から降り注ぐ雷が守護者に直撃し、その動きを一瞬止める。

「今だ!」

僕は加速のスキルを使い、守護者の背後に回り込む。そして、再び炎の剣を振り下ろした。

「これで……終わりだ!」

最後の力を振り絞り、渾身の一撃を守護者に叩き込んだ。暗黒の守護者が倒れ、静寂が広がる。息が荒く、体中が痛むが、勝利の実感が僕の心を満たしていた。

「やった……これで遺跡の入口まで戻れる……!」

HPとスタミナ回復系のポーションを飲み、新しく床に現れた魔法陣の上に立つ。クリアしたダンジョンに現れる転移魔法だ。入口まで戻った僕は、まだ何かないかとぐるっと遺跡の周りを一周してみたが、これ以上目新しい物はなく、先ほど入った隠しダンジョンも消えていた。

「さて……と、ここからが本題か……」

僕は改めて遺跡の入り口まで戻る。丁度みんなも到着した所だった。

「お、レオンどこ行ってたんだよ~!」

そういって太陽よりも明るい笑顔で笑いかけてくる赤毛の男……名前はマルクス。ごつい鎧に身を包み、その装備に似合う大剣を背負ったその格好は騎士という言葉に相応しい見た目をしている。

「もしかして隠しコンテンツ探しでもしてました?」

彼女はペトラ。綺麗な水色の髪の毛と真面目そうな眼鏡。白を基調とした装備の彼女はメインでヒーラーをしている。よく、高難易度クエストに一人で潜っては苦戦しているパーティーに勝手に混ざり回復させて離れていくという辻ヒールが趣味らしい。実際、僕たちともそれで仲良くなった。

「レオンくんそういう所はやいからなぁ~!」

シンプルながらも煌びやかな宝石による装飾がおしゃれな黒いワンピースを着た金髪の少女は、その緑色の目を僕に向ける。彼女は優秀な魔術職で、このゲーム内で数少ない僕のリアルの友達だ。名前はアリア。この三人が僕がよくこのゲーム内でパーティーを組む人たちだ。

「僕が一番乗りだったしね~、やっぱりしちゃうよね」

「なんだよ~!待っててくれてもいいじゃねぇか!」

マルクスがずるいぞと言いたげに背中をたたいてくる。僕は「ごめんごめん」と笑いながら

「でもソロ専用のクエストだったし、僕がダンジョンから出たら無くなっちゃったんだよね」

「もしかして人数限定のクエストですか?なかなかたどり着けない珍しいやつじゃないですか~!うらやましいなぁ~」

「で、何を手に入れたの?」

三人は興味津々といった様子で僕を見る。僕は首から下げているあのネックレスを持ち上げて

「これだよ、加護付きの装備品だった。ただ、まぁちょっと手に入ったばっかりだし、分からないことは多いかなぁ~。蘇生系の加護でクールタイムは24時間ってことだけは分かってるよ」

「24時間か~……確かに蘇生魔法を使える仲間がいないときとかは便利そうだな」

「でも、復活系のアイテムって今までもあったし、クールタイムの事も考えたら今更感はあるよね」

「そう。だからもっとすごい力が眠ってるんじゃ無いかなって思ってる」

そう説明する。さっきのダンジョンでは意図せず発動したので他に何か付随した効果があったのかどうかの確認が出来ていない。

「もしかするとこれから先で何かすごい効果を発揮するかもしれませんし、どちらにせよラッキーでしたね!」

「私も何か隠しアイテム見つけれたらいいな~!」

そう会話をして、改めて遺跡の入り口に視線を向けた。マルクスが全員の顔を見て準備が整った事を確認する。

「よし、じゃあ行くぞ!」

大きな大剣を抜き、マルクスが先に扉に手をかけ、慎重に押し開く。中へと足を踏み入れると、ひんやりとした空気が入るものを拒絶するかのように漂っていた……。

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