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第2話「遺跡」

目の前には、巨大な石造りの建物。その扉の表面には古代文字が刻まれ、その雰囲気は一層の緊張感を漂わせていた。

「これが遺跡か……」

バックの中からアイテムを取り出す。虫眼鏡の形をしたそのアイテムは古代文字などのゲーム内で用意された読めない文字を読めるようにしてくれるアイテムだ。

「なになに……?世界の扉を開き……接続せよ……光と……なんだ、読めないな……」

人によっては文字を読む加護を持っている者もいるのだが、僕にはそれがないのでこうやってアイテムに頼るしかないのだ。ただ、アイテムも万能ではなく、僕がもっているような一般アイテムでは突破できないギミックもあるわけで……。

 加護呼ばれるそれは、プレイヤーがゲームを進める中で手に入れることができる特殊能力だ。これらの加護は、特定のクエスト、イベント、レアアイテムを取得することでランダムに得られるのだが、その数がほぼ無限といってもいいくらいあり、まだすべての加護が出ていないとも言われている。

「まぁいいか、とりあえずまずは周辺に隠しアイテムがないか確認しないとな!」

そういって僕は扉から離れて周辺を歩き回る。やっぱり、オープンワールドといえば隠し要素だ。みんなが来るまで待つのももちろんいいのだが、隠し要素というのは誰よりも先に見つけたいものだ。それに、それによって手に入る報酬が全員に配られるとも限らない。いくら仲のいいフレンドとはいえ、やはりここは早い者勝ちと言うわけだ。足元に注意しながら進んでいると、建物の岩壁の隙間に何かを見つけた。苔むした石の一部が不自然に突出している。その位置を押すと、石壁がゆっくりと動き、地面が音をたてて開く。隠し通路が現れた。

「おお……!やっぱりあるじゃん!!」

ピロンという音と共に現れるサブクエストの文字【『忘れられた廃墟』への挑戦】。新しいマップの新しいダンジョンと言う事でもちろん現状突破人数は0。そして難易度も高め。クエスト内容を読んで思わず声が出る。

「ソロ専用クエスト……?まじかよ……この難易度で……!?」

目を疑うような条件だが、こういったクエストは確実に高レアの加護の獲得につながる可能性が高い。見つけたからには挑まないと、ゲーマーとして失格というものだ。

 興奮と緊張が入り混じる中、僕は慎重にその隠し通路を進んだ。奥へ進むほど、空気がひんやりと冷たく、古びた石壁に囲まれた迷宮のような内部が広がっていた。

ダンジョンの内部は、古代の遺跡のようだった。壁には無数の古代文字が刻まれており、微かに輝く魔法のルーンが道を照らしていた。足元には罠が仕掛けられており、わずかな油断も許されない。

「気を引き締めていかないとな……」

一応罠探知系の加護を発動しながら慎重に歩みを進める中で、突如として現れたのは巨大なゴーレムだった。石の体を持つ彼は無言でこちらに迫ってきた。

「おお、来たか……!」

僕は剣を抜き、ゴーレムに向かって突撃した。ただがむしゃらに剣を振り回すだけでは、硬い石の体に阻まれる。ゴーレムの一撃一撃は重く、避けるたびに冷や汗が流れる。回避が間に合わずに潰されそうにもなる。

「こんなところで負けるわけには……!」

攻撃をかわしながら、ゴーレムの隙をついてなんとか一撃を加える。何度も剣を振るううちに、ゴーレムの表面が削れてだんだんと動きが鈍くなっていく。その瞬間に強めの一撃をお見舞いする。ゴーレムはそのままバラインスを崩してドゴン!と大きな音を立てて倒れてしまった。その衝撃でバラバラになってしまい、そのまま静止。今のうちにとゴーレム種特有の弱点、核を探し出し、破壊。

「よし、完了!」

息を整えながら先へ進むと、次はスケルトンの軍団が現れた。

「次はこいつらか……!」

スケルトンたちは素早く、次々と攻撃を仕掛けてくる。剣を持っているもの、弓を持っているもの、攻撃方法は様々だ。

「大地の力よ……我を守りたまえ……!」

呪文を唱えて地面を隆起させ、盾にする。あの量相手のスケルトンに近づくのは命取りだ。スケルトンは防御力は低くても、その分武装しており、数もいる。できれば一層したいのだが……と僕は自分の持っているスキルを眺める。

「お、これなら……。龍の加護よ……!」

丁度よさそうなスキルと加護を見つけたのでスケルトンが突破してくる前に詠唱。力がみなぎる感覚と、持っている剣からかっこいい龍のエフェクトが現れる。少し前に追加された龍種との戦闘で手に入れた加護だ。攻撃力を上げて、複数の敵を攻撃出来るようになる。

「よし、もういっちょ……!」

自身にターゲットを集中させる加護を発動して、スケルトン達の視線を引きつける。一斉に敵がこちらをみて突っ込んでくる。

「……今だ!!」

敵のほとんどが攻撃範囲に入った瞬間剣を振るう。まるで、巨大な龍がその群れに突進してすべてをなぎ倒すかのように敵にダメージが入る。カランカランと音を立てて骨が崩れていく。後衛職のスケルトンが残っているので、先ほど作った土の壁に隠れつつ、今度は雷の呪文を唱えて彼らの頭上に落雷を落とす。僕は剣と魔法を駆使し、スケルトンたちを倒していった。MPやSPが減って疲労する感覚が蓄積してきたが、回復アイテムを駆使してどんどんと進む。今までいろんな難しいクエストをこなしてきたのだ。この程度じゃ僕の心は折れない。「さぁ、どんどん行くぞ!」と自分を鼓舞して僕は進んだ。

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