春のある日。
「王立植物園へ行こう」
「え、何しに行くんですか? ウメはもう散っちゃったし、サクラはまだで来週くらいかなぁと思います」
「えへへ、あのね。ちょっと食材探しに」
「そうなんですか?」
「まぁ行ってみようよ」
メイドのマリーちゃん、弟子のシャロちゃんを連れて王都の中を歩いて移動する。
もうだいぶ暖かくなってきてコートの人も少ないか。
若い子はここぞとばかり春ワンピースなんて着ちゃったりして、みんなオシャレなもんだ。
「ルンルンルン♪」
「おや、ミレーユさんご機嫌ですな」
「春の味覚! 今しか食べられない!」
「全く、先生は食いしん坊さんですからね」
「ぐへへ」
ダラッとした顔を見せるとみんな釣られて笑った。
春の暖かさはなんだが、みんなを笑顔にして幸せいっぱいにもしてくれる気がする。
「到着!」
「ふう、結構、歩きましたね」
まぁ、いいではないか。
早速中を探索する。
「本当だ。サクラはまだ。ウメは終わってる」
「ですねぇ、先生何する気なんですか?」
「ウメではなく、その下。スギナが生えてるでしょ」
「はい」
「ツクシを取って食べようかと」
「なるほど」
誰も採らないから採っていいんだって。
なんだか聞いてみたところ、王都の人はそもそもツクシを食べたりしないんだそうで、もったいない。
「ほらこっち」
「こっちにも、生えてますよ」
「あらこっちにも」
ウメの林の下にいっぱいツクシが顔を出していた。
三人で手分けをして採る。
「あのあの、ヨモギもお願いね」
「この雪の結晶みたいな形した、葉っぱですね」
「そうそう」
ハサミで切り込みを入れたみたいな形とでもいうのだろうか。
ちなみに裏に毛が生えていて白く見える。
両手いっぱいにヨモギの収穫もできた。
「暖かくて気持ちいいですね」
「そうだね、マリーちゃん」
「来てよかったです」
「だねえ、シャロちゃん」
のんびり採取を進める。
「よし、では撤退」
いそいそと家に着くなり、小麦団子に茹でたヨモギを混ぜていく。
すると白いお団子がみるみる緑色になっていく。
その作業の間にマリーちゃんにツクシの頭と
あとは一度水で晒してから、お湯で茹でて、再び氷水で冷やす。
ハシユリ村から持ってきた秘伝のタレで味を付ければ完成。
「ヨモギ団子とツクシのおひたしでーす」
「本当にあれ、食べるんですね」
「そうだよ。マリーちゃんだって色々なもの食べたいでしょ」
「そりゃそうですけど、道草ですもん」
「道草、確かに!?」
アハハと笑う。
「では」
「「「いただきます」」」
パクリといただく。
「うん、いつも通りだ。おいち」
「あら、ヨモギ団子は草のいい匂い。ツクシはなんだか大人の味。でも美味しいです」
「私も錬金術だから草は詳しいけど、こんな、味になるんですね」
「そうなんだ。シャロちゃんよ」
とまぁこんな感じに春の味をいただいた。
別に普段からサラダとかは食べてるから野菜不足とかでもないんだよ。
でも今しか食べれない季節物って無性に食べたくなるときがあるんだ。
もぐもぐ、おいち。