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64 西の森へ行こう


 今日はちょっと作りたいものができたので、西の森へ行こうと思います。

 実はメイド服、シルクスパイダーという魔物の白い糸でできていて、防御力が布装備の中ではかなり高い。

 だからメイド服そのものの値段もちょっと高いんだけどね。

 そこは商会の力だね。


 普通は西の森といえば冒険者だ。

 ということでベテランである隻腕のジョンさんにもご同行をお願いした。

 子供たちの引率は他にも何人かで持ち回りだから今回は大丈夫だよ。


「それじゃあ、ジョンさん、よろしくね」

「ジョンさん、お願いします」

「ジョンさん、よろしくお願いします。あなたにも神のご加護があらんことを」

「ご丁寧にどうも」


 シャロちゃんが教会風にお祈りをするとジョンさんも頭を下げる。

 ちょっと照れてるジョンさんもなんだかかわいいところがある。


 今回は危険な西の森へ行くんだから、ちょっとだけ気合の入れ方が違った。


「それでは出発っ」

「「「おー」」」


 一緒に行きたがった子供たちをなんとかなだめて西門へ向かう。

 さすがに連れていくと子供たちの安全だって保障はできない。


 西の森にはくだんのシルクスパイダーも生息している。

 他にはフォレストウルフ、ゴブリン、オーク、ジャイアントスラッグなど。


 ジャイアントスラッグならハシユリ村の近くにもいる。

 すごく大きい貝の一種で、食べると美味しい。

 美味だよ、美味。

 見た目はちょっとアレだけどね。


 それで今回のターゲットなんだけども。


「アカシメジだよ」

「「「アカシメジ」」」


 アカシメジはキノコの一種でして、真っ赤な笠が特徴的なんだ。

 生で食べると毒性がある。

 一度干してカラカラにしたものを戻して鍋に入れると最高に美味しい。

 だけどどうも、王都では毒キノコとして認識されているみたいで流通していないんだ。

 冒険者ギルドで確認してきたけど、生息自体はしているそうだ。

 この国であの真っ赤なキノコといえばアカシメジだしね。

 ハシユリ村では毒抜きして食べたけど、こっちではやらないんだって。


「山へさ、行くべさ~、ほいっささ♪」

「山へさ、行くべさ~、ほいっささ♪」


 みんなで子供の歌を歌って森へと入っていく。

 森は王都の保護林なので、城門を出てすぐ先から広がっている。

 昔の人は先見の明があったのだ。森を保護しないと丸裸になってしまうって。


「ほんと昔の王都の人たちは偉い偉い」

「保護林ですもんね」

「そうだよ。それで取れる資源がいっぱいあって、今でも王都の生活がいいんだよ」


 フォレストウルフ、オーク、ジャイアントスラッグなんかはお肉が取れる。

 あぁシルクスパイダーもカニみたいな味がして美味しいらしいね。

 見た目も白と赤のあの色なんだって。


「ほい、アカシメジ」

「本当だ!」

「やりましたね、先生」


 私はマジックバッグに株ごと採ったアカシメジを入れる。

 そうしてまた歩く。


「ゴブリンだ」

「ほい、アイスミサイル!」

「ぷぎゃあああ」


 ゴブリンを私のアイスミサイルで一撃で倒す。


「さすがミレーユさん」

「えへへ」

「そういえば、強いんでしたね」

「そうだよ。辺境の森なんて強い魔物いっぱいいたからねぇ」


 ちょっと遠くを眺めるようにして、視線を逸らす。

 別に暴力女ではない。ちょろっと錬金術師は魔力量とコントロールが人並外れているため、攻撃魔法もお手の物なのだ。

 ただし私も回復魔法は苦手だ。その代わり錬金術でポーション作成で補っている。


 ゴブリンはあまり価値がないので、そのまま放置して次へ進む。

 皮も薄いし肉も食べるものではない。

 全部粉にして混ぜて肥料くらいにはなるかもしれないけど、間に合ってるみたいだし。

 なんとなくゴブリンの不衛生なイメージが商品価値を損失しているんだよね。


「ちゃらん、ちゃんちゃん♪」


 違う歌も歌う。

 森の中では間違ってハンターに射撃されたりしないように、音を出すのを推奨されている場合がある。

 弱いモンスターも基本的には音を出すと寄ってこない。

 のだけどバカなゴブリンは自分たちの力量も測れないのか、出てくることがある。

 とても強いモンスターは逆に襲ってくるから、塩梅が難しい。


「はい、アカシメジちゃんです」

「マリーちゃんサンキュ」

「はいです」


 またアカシメジを採ってマジックバッグに入れる。

 これで合計五株目かな。


 えへへ、私たちは収穫に満足して、ホクホク顔で返りました。


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