冬のある日。
「今日は暖かいですね」
「そーだね」
マリーちゃんの声に私、ミレーユが応える。
「なんだか、眠くなっちゃうね」
「ははは、そうですね」
ふわぁあああとあくびをする。
「ただいまぁ」
「シャロちゃんおかえり」
「おかえりなさい、シャロちゃん」
「ミレーユ先生、ほい、買ってきましたよ。今、王都で流行ってるっていう、甘いサツマイモ」
「サツマイモ?」
「はい、知っていますか?」
「サツマイモは知ってるけど、ぱさぱさしたお芋」
「それがですね。このお芋、とっても甘くてホクホクしておいしいんです」
「へぇ」
「なんで、品種が違うんですって。とにかく食べましょう」
「わかった」
シャロちゃんからサツマイモの焼き芋を分けてもらう。
もぐもぐ。
「おいち!」
「でしょ、でしょ、すごく甘い」
「美味しいですね。私もなんだかうれしいです。弟と妹にも食べさせてあげたいわ」
「表通りを行って、すぐ右の角で売ってますよ。もう売り切れてなければいいけど」
「そんなに人気なんですか?」
「そうみたいだよ」
もぐもぐもぐ。お芋は甘くてとっても美味しい。
「でもこれ、ちょっと高くて、えへへ」
シャロちゃんが舌を出す。
そうなのか。私たちでは手が出ないかもなぁ。
庶民でも簡単に楽しめる甘いものがあればいいんだけどね。蜂蜜も使ってるものもあるけど、あれもお高いといえばお高い。
「そうだ、あれ作ろうよ。水あめ」
「水あめ?」
「そう。麦芽糖」
「麦芽糖」
シャロちゃんがオウム返ししてくる。
「麦の芽が出たところを集めると、甘くなるの」
「へぇ、そんなのあるんですね」
「うん。少し甘いくらいなんだけど、錬金術で集めてですね、そして濃くするととても美味しい」
「いいですね! 先生」
ということで、さっそく作ってみる。
とちょっと時間が掛かりましてですね、後日。
材料が準備を終えたら、鍋で煮詰めていく。
「こうして、こうして、こうじゃ」
「ふむ」
「甘いもの、妹と弟の分もありますかね」
「あるよ、マリーちゃん」
「やったぁ、です。ありがとうございます」
「ううん、いつもお世話になってるから」
「お世話になってるのはこっちですけどね」
「えへへ」
そうして麦芽糖による水あめが完成した。
「んんっ、甘い甘い」
「どれどれ。んっ、美味しいです」
「ワタシもください。先生! 甘いでーす」
「うむうむ。よくできた」
これもお店で売ろう。
ハチミツと違って、小さい子供でも大丈夫だ。
こうして麦芽糖と水あめが商品に加わった!