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70 小春日和


 冬のある日。


「今日は暖かいですね」

「そーだね」


 マリーちゃんの声に私、ミレーユが応える。


「なんだか、眠くなっちゃうね」

「ははは、そうですね」


 ふわぁあああとあくびをする。


「ただいまぁ」

「シャロちゃんおかえり」

「おかえりなさい、シャロちゃん」

「ミレーユ先生、ほい、買ってきましたよ。今、王都で流行ってるっていう、甘いサツマイモ」

「サツマイモ?」

「はい、知っていますか?」

「サツマイモは知ってるけど、ぱさぱさしたお芋」

「それがですね。このお芋、とっても甘くてホクホクしておいしいんです」

「へぇ」

「なんで、品種が違うんですって。とにかく食べましょう」

「わかった」


 シャロちゃんからサツマイモの焼き芋を分けてもらう。

 もぐもぐ。


「おいち!」

「でしょ、でしょ、すごく甘い」

「美味しいですね。私もなんだかうれしいです。弟と妹にも食べさせてあげたいわ」

「表通りを行って、すぐ右の角で売ってますよ。もう売り切れてなければいいけど」

「そんなに人気なんですか?」

「そうみたいだよ」


 もぐもぐもぐ。お芋は甘くてとっても美味しい。


「でもこれ、ちょっと高くて、えへへ」


 シャロちゃんが舌を出す。

 そうなのか。私たちでは手が出ないかもなぁ。

 庶民でも簡単に楽しめる甘いものがあればいいんだけどね。蜂蜜も使ってるものもあるけど、あれもお高いといえばお高い。


「そうだ、あれ作ろうよ。水あめ」

「水あめ?」

「そう。麦芽糖」

「麦芽糖」


 シャロちゃんがオウム返ししてくる。


「麦の芽が出たところを集めると、甘くなるの」

「へぇ、そんなのあるんですね」

「うん。少し甘いくらいなんだけど、錬金術で集めてですね、そして濃くするととても美味しい」

「いいですね! 先生」


 ということで、さっそく作ってみる。

 とちょっと時間が掛かりましてですね、後日。

 材料が準備を終えたら、鍋で煮詰めていく。


「こうして、こうして、こうじゃ」

「ふむ」

「甘いもの、妹と弟の分もありますかね」

「あるよ、マリーちゃん」

「やったぁ、です。ありがとうございます」

「ううん、いつもお世話になってるから」

「お世話になってるのはこっちですけどね」

「えへへ」


 そうして麦芽糖による水あめが完成した。


「んんっ、甘い甘い」

「どれどれ。んっ、美味しいです」

「ワタシもください。先生! 甘いでーす」

「うむうむ。よくできた」


 これもお店で売ろう。

 ハチミツと違って、小さい子供でも大丈夫だ。


 こうして麦芽糖と水あめが商品に加わった!


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