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66 ハッピーニューイヤー


 シャロちゃんの家で正月休みを過ごす。

 あれからアカシメジ鍋パーティーをこちらでも一回開催した。

 大好評をいただいて、今ちょっと注目されている。

 これを王都料理として広められないだろうかという話らしい。

 キノコは西の森にたくさん生えているという話だし、別に悪いことではない。


 やっぱり食に対する気持ちというのは、どこでも一緒なのだ。

 美味しい料理は食べたい。新しい料理にも興味がある。


 そうして過ごして数日。


 ゴーン。ゴーン。ゴーン。


 一月一日、午前六時ごろだ。

 教会の鐘の音が響いている。お正月だ。


「ハッピーニューイヤー、シャロちゃん」

「ハッピーニューイヤー、ミレーユ先生」


 ふたりして新年のご挨拶。他のお弟子さんたちにも挨拶を繰り返す。

 本当なら師匠や親は子供にプレゼントを上げるのが習わしなんだけど、私たちは同い年だからね~~という話になって有耶無耶になった。


「はいどうぞ」

「ありがとう、ママ」

「ありがとうございます」


 私もシャロちゃんのママからプレゼントを貰っちゃった。

 中身はマフラーだった。温かい。これは嬉しい。マフラー持ってなかったから。

 ハシユリ村はここより標高は高いけど、だいぶ南にあるから、もう少し暖かくてマフラーをする文化がなかったのだ。


 ちなみにこの連休中、中級ポーション改の品質を上げるべく、お弟子さんたちを私は毎日しごいている。


「ね~るねるねる、ねるねるね、はい」

「「「ね~るねるねる、ねるねるね」」」


 魔力を練るのは重労働だ。一朝一夕では務まらない。

 今回は短期集中コースなのでスパルタなのだ。


「うぇ、先生、もう無理ですぅ」

「もう少しだけ、頑張るぞお」

「げふげふ」


 まあ、みんなすぐへばってしまって。

 今まで魔力を節約する癖がついていて、それで魔力量の少ないポーションばかり作っていたんだよ。

 それがイコールで品質が低いものになっていたから矯正しないといけないんだ。


「ね~るねるねる、ねるねるね、はい」

「「「ね~るねるねる、ねるねるね」」」


 ねるねる街道は険しいのだ。千里の道も一歩から。

 彼の古代帝国の道もそうやって一本ずつ作られて、それで「ユグドラシルの都市には全世界から道がつながっている」というふうに言われるようになったんだから。

 もちろんそれが今の私たちがいる王都なんだから、歴史が古いわけだ。


 さて、やることもないので師匠はちょっとお昼寝を。


「ポーム。お昼寝しよ」

「きゅっきゅ」


 ポムを抱いて暖かい暖炉の前でお昼寝を決め込む。

 むふふ。

 ねるねる街道を行く弟子たちを尻目に惰眠をむさぼるぞ。

 ぴーすか。ぷーすか。


 シャロちゃんちのご飯は今日も豪華だ。

 いや、今まで自分たちが貧乏店だったのがいけないのだけど。

 なんだか最初の貧乏が染みついてしまっていた。

 もう少しご飯にも気を使おう。


「イカリナのフライ、美味しいですね」


 私も感想を言う。

 シャロちゃんちでは定期的に出ているのかもしれない。

 私が来てるから豪華なのかな、違うよね。


「今日は特別にお正月なので、ステーキです」

「「「わーい」」」


 みんなでステーキを食べる。

 これは牛肉ではなくオーク肉のステーキだね。

 大きな二足歩行の豚さんなので食べるお肉も大きい。

 なかなか美味しい。


「よいしょ。ごくごく」


 寝る前には今日だけ、低級ポーションを飲む。

 栄養ドリンク代わりだ。今日はちょっと色々行事とかしたので、疲れてしまった。


『今年も一年間いいことがありますように』


 神様にお祈りをする。


 新年の今日は教会でも大規模なミサが開かれたはず。

 偉い人たちが集まって、歌ったり儀式をしたりするんだって。

 ハシユリ村では村自体が小さいから、そういうのはちょっと興味あるかも。

 でも人混みもちょっと怖いから、見に行くのはパスしちゃった。


 それじゃ、おやすみなさい。


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