最近出番があんまりない、我が家のポム隊員。
実はスライムの平均寿命はその大きさから推定して、二、三年ぐらいだと思う。
スライムはポムを観察した限りでは年齢を重ねるごとに大きくなる。
ポムは今、三十センチぐらいかな。この大きさで十歳ぐらいだと思う、たぶん。
明らかにポムはスライムとしては長生きのほうだと思う。
テイム歴の長いスライムならみんなそうなのかもしれないけど、野生では珍しい。
私の推論だと、薬草を普段から食べているのが長寿の秘訣だと思うんだ。
まだまだ元気で長生きしそうだし、観察し甲斐があるというもの。
「ポムポム~紅茶飲む?」
「きゅっ」
ポムはお紅茶も好きだね。ミルクと砂糖を触手を伸ばして器用に入れる。知能も高い。
ある日、そんなポム君なんだけど、未使用の薬瓶を食べようとした。
「ポム何してるの?」
後ろを向いてこそこそ、もぞもぞしている怪しい。
「ぽーむ」
くるっと回ってこっちを向いたポムの両手、いや触手には、なみなみと中身の入ったポーションが握られていた。
もちろんちゃんとご丁寧に蓋までしてある。
「なにそれポーション?」
「きゅっ」
そうだ、とキメ顔またはドヤ顔だろうか。スライムなのでよく分からないけど。
液体の色はポムに似た黄緑色をしていた。
「うんうん。すごいすごい、ちょっと見せてね」
「きゅっ」
ポムからポーションを預かる。手で持って漏れている魔力から含有魔力量を推定するんだけど、あん、んん??
なんか私の作る中級ポーションよりも倍近い魔力を感じるんだけど。
秘薬より魔力は少ないけど、現状手に入るポーションとしては断トツだろう。
「どうしたんですか、そんな真剣な顔してミレーユ先生」
「シャロちゃん、これすごいよ」
「え、なんです、わわ、何この魔力量」
シャロちゃんにも確認してもらったけど私の感覚と同じだった。
恐るべきポーション。
「よし、名前をつけよう。ポムポーション」
「「ポムポーション」」
「きゅっ」
マリーちゃんもやってきて、一緒にびっくりしている。
ポムは最近、中庭の中級ポーションの材料であるルーフラ草がお気に入りで、よく私の目を盗んで、畑の新鮮な葉っぱを食べているのを知っている。
別にポムが食べるくらいならいいかなと放っておいたんだけど、なるほどなるほど、こうやって還元してくれるわけですね。
「ポムちゃん。ポムちゃん。そのポーションってあと何本つくれるの?」
「きゅきゅ」
空のポーション瓶をポムに渡すと、ひそひそと後ろを向いてポーションに「謎の液体」を注いでいるようだ。
瓶は五本渡したんだけど、中身が入って戻ってきたのは最初のを含めた合計で三本だった。
「三本か。こりゃ貴重だわ」
「きゅっ」
「毎日作れるのかな、ポムちゃん」
「きゅっ」
頭を上下しているから、肯定だろう。
上級ポーションに匹敵する、ポムポーションは定期的に数は少ないけど作れることが分かった。
急いでホーランド商業ギルドのメイラさんを訪ねに行く。
「メイラさんメイラさん」
「なんだい、急いで」
「緊急なんです」
「おやおや」
メイラさんは相変わらず美人だ。でも口調とかはちょっと男っぽいというか中性的というか、あんまり女らしくはない。
ポーションを取り出して、見せる。
「おや、見た感じは低級ポーションだけれど」
「そうですね、はい」
以前中級ポーションを渡したときに、魔力量を測っていたので、この人は錬金術師と同じで自分で測れる「分かる」人らしい。
「うわあ。なんだこれ、ちょっとどころじゃないじゃないか」
「あ、え、はい」
「なんという魔力量。上級ポーション並みだ」
「そうですね」
「どこでこれを? いや自分で? どうやって?」
「あの、私じゃなくて、こっちのポムが」
私が行くところには、ほぼポムがついてくる。
「ほう、ポム君?」
「きゅっ」
またしてもキメ顔で答えるポム隊員。
「つまりスライムのポーションということかな」
「そうですね」
「ちなみに中身は何でできてるんですかね」
「さあ」
体液、血液、涙、唾液、それから鼻水、おしっ……
う、うん。可能性はいろいろだよね。まあ考えちゃだめだよね。
飲むことで回復することが多いとはいえ、掛けても使えるんだし、まあ嫌なら飲むな、というか。
死にかかっていて、嫌とか言ってられないよね。
こうして中上級ポーション、ポムポーションが爆誕したのでした。