ある日曜日。子供たちは普段チームに分かれて活動しているんだけど、今日はちょっと違うらしい。
私は呼ばれて、それを見に行くところなんだ。
フルメンバーの十三人が全員集まっている。それから指導者のジョンさんもいる。
結局、子供たちだけでは危険だ、ということで、有志のボランティア指導者の人が何人か一緒に来てくれている。
普段も、チーム別の時にいちチームに大人ひとりはいるようにしているんだって。知らなかった。
まあ、子供たちだけでも南平原では大丈夫ではあると思うんだけど、万が一はあるかもしれない。
けっこうな頻度で鳥狩りはしているんだけど、無職の親御さんとかもいる貧困街では、全員でお肉を分けるとほんの少ししか食べられない。
だから何回かに分けて、順番に食べるようになったんだって。
子供だけなら一回の鳥狩りでいけるけど、そっか、そうだよね。
そこで考えたのが、他のお肉も取って来るという、まあ普通の考えだった。
「目をつけたのは角ウサギです」
「角ウサギを?」
「はい。捕まえようということになりました」
私がジョンさんから話を聞く。
角ウサギは近づくと逃げていってしまう。そこで全員で輪を作って広がって、囲うようにその輪を狭めていく。
すると反対方向に逃げるわけにはいかないウサギが真ん中に残っている。
「よし、いるぞ」
「もうちょっとだ、頑張れ。まだまだ」
輪をどんどん小さくしていくと、最後には追い詰めることができる。
気を付けないと、囲った子供同士の間をすり抜けて逃げて行ってしまう。
でもウサギは普段狩られることがほとんどないため、かなりの数、草原にはいるのだ。
だから囲んで追い詰めると、一回で数匹はいる。
「よし、かかれ」
「「「わあああああ」」」
みんなでウサギを追いかけまわす。
そして追いついたところで、ナイフを一突き、角ウサギを仕留めることができた。
「なるほどね」
「人数が必要なので、普通の大人のパーティーでは無理ですけど、人数が多くて大金を求めているわけでもない子供たちならではの狩りですね」
「なるほど」
うん。大人でこの人数なら、森へ行って、大型の魔獣を狙ったほうがよっぽどお金になる。
でも子供たちにはそれはできないので、安全でかつ、他の人があまり狙わない、角ウサギに目をつけたのは、素晴らしいと思う。
「お肉を取ってくると、焼くのに薪がいるんだけど、薪代もけっこう必要でね」
「あー、そうですよね」
うん。鳥を焼くのには薪がいる。パンを買って来るだけなら火とか使わないんだよね。
一応として乾燥スライム粉末とスライムの核の代金があるんだけど、全部薪を買っていたらちょっと悲しいことになっちゃうね。
更なる収入が欲しいと思うのも、無理はない。
「お肉、お肉、肉肉うぅ」
「ウサギさん」
「ささっと解体しようぜ」
子供たちはたくましい。もうウサギの解体も覚えている。
このウサギは、皮も売れるし、肉も売れる。食べるだろうけど。
それから角ウサギというだけあって、おでこの角が売れるんだ。それもけっこういい値段で冒険者ギルドが買い取ってくれる。
これは角を削ったナイフとか、角を粉にした民間療法の薬とか、用途がいくつかあるらしい。
茶色い可愛いウサギさんはあっという間に解体されて、お肉と角と魔石を持って帰る。
ちなみに角は固いくせに、攻撃力はあまりない。体が猫サイズというのもあるし、突撃とかしてきても、あまり痛くない。
これが一撃必殺の、攻撃力とかでなくて、よかったね。
ウサギ狩りは何回もやって、今日は七羽捕まえることができた。
この平原にはほぼ無限にウサギが野放しになっているので、大丈夫だろう。
帰り、冒険者ギルドに寄って、ジョンさんが角と魔石を換金していく。
そして薪を買って帰る。
子供たちの活躍は素晴らしい。頑張っているみたいだ。