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41 南平原だよ


 王都の西には森がある。

 そして南にはかなり広い平原が広がっているのだ。ここも昔は森だったのだけど、薪や建築資材として伐採した結果、平原になったらしい。


 隻腕のおじさん、ジョンさんとともに私と四人の子供たちで南平原に向かう。


「お、子供連れで平原ですか」

「はい。ちょっとスライム狩りに」

「珍しいですね」

「まあそうですね、行ってきます」


 城門で、衛兵さんに挨拶して通してもらう。


 西の森は保護森林なので、伐採は許可されていない。そして魔物、魔獣などが出る。キノコ、薬草など錬金術にも使う資源も多いけれど、危険も大きい。

 対して南平原には、魔物はスライム、角ウサギしかまず見かけない。


「あーすごい。牛さんがいる」


 黒、白、灰色、茶色と色も種類がいる。

 ロイヤルミルクティーに使うミルクはこうして放牧されている牛のものだ。

 耳には管理票が付けられていて、持ち主を判別できる。

 最大の脅威はこの家畜の牛だ。怒らせると角で攻撃してくるし、後ろ足で蹴られて死亡することもある。


「だから牛さんは怒らせてはいけないよ」

「「はーい」」

「牛はまじで危険だ。気を付けてくれ」


 ジョンさんも同意らしい。


 角ウサギも遠くのほうにたまに見かけるけれど、人を見かけるとすぐに逃げていきすばしっこいため、捕まえるのは困難だ。

 もしウサギが取れたら、お肉もいっぱい食べられるのに、残念だ。


 あと牛のお肉も流通しているけれど、けっこう高い。干肉も流通していて、こちらはなんとか私たちでも手に入るぐらいのものだ。

 ステーキとかになるとすごく高い。


 一度でいいからレストランの牛ステーキを食べてみたいとは思うんだけど、村で普段から魔獣のお肉は食べ放題だったから、期待はあんまりしていない。


 スライムはいるにはいるけど、まばらにしかいない。まず見つけるのが大変だ。

 みんなで移動しながら探す。


 そのときに五メートル間隔に広がって、足元もついでに探す。これは主に薬草ともう一つの目的、魔力の実を探すためだ。


 魔力の実は一センチぐらいの青い実で、一度に十粒くらいなっているはず。

 ただ背も低い草で小さいので、離れていると見つけられない。


 だから広がって探すしかない。

 大人が並んで探しても、日当の代金を払うと赤字なので、普通はわざわざ探したりしないのだった。

 そのせいで値段が高めなくせに品薄で、取ってきてくれる人もいない。


「あった、青い実!」

「よくやった」


 みんなで一度集まって、青い実を見る。

 草の実物は冒険者ギルドにもなかったので、子供たちは初めて見る。


 こうして青い実を探しながら、スライムがその辺にいないか見て歩く。


「スライム発見!」

「おし、よく見ててね、お姉さんから見本を見せるね」


 私がナイフでスライムを追いかける。

 接近して、ナイフをぶすっと刺す。核をくり抜いて引っ張り出すと、もう動かなくなる。


「はい、簡単でしょ」

「うぉおお」

「スライムさんっ!」


 ポムもついてきているが、微妙な表情だ。

 ごめんねポム。でもスライム以外に選択肢はない。


 スライムを収納して持って帰った。

 この日は雨の後だったこともあって、けっこうな数のスライムを狩れた。


 貧困街に戻ってきて、後の処理を説明しないと。


「スライムの核は、冒険者ギルドに売りつけましょう」

「「はーい」」


 魔物の核、それすなわち魔石だ。スライムは最低等級だけど売れないこともない。魔道具の燃料などになる。


「スライムの体のほうは、こうやって広げて干して乾燥させます」

「「はーい」」


 スライムを広げていく。もちろん子供たちにも手伝ってもらう。今度からは子供たちだけで、できるようになってもらわないと。


「こんなふうに乾燥したら完成です」

「「おーお」」


 リュックから乾燥スライムを取り出す。


「このすり鉢をあげるので、乾燥スライムをこれですりつぶしてください」

「「はーい」」

「まずは手でちぎっていって、すり鉢に入れて、ごりごりするんだよ」

「「はーい」」


 言った通りの作業をする。みんな大人しく見てくれる。


「粉になったらジョンさんに渡して、ジョンさんがミレーユ錬金術店に持ってきてくれたら、お金になります」

「「お金!」」


 リュックから銀貨を見せる。

 そうそうお金になるんだよ、このスライムが。

 お金はご飯を買ったりするのに、使えるね。


 こうして午前中や日曜日に子供たちを順番に狩りにつれて行って、チームを作る。

 その後は、ジョンさんのチーム、私のチームに分かれて指導を続ける。

 スライム狩りと魔力の実は、人海戦術が有効なので、人数は多いほうがいい。


 一か月後には、年長者多めで子供たちだけのチームも作って、スライム狩りをするようになった。ジョンさんは複数のチームを順番に見て回っている。


 こうして子供たちの作った乾燥スライム粉末は、無事にうちの店に売られるようになったのでした。


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