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59 エピローグ:錬金術調薬店だよ


 今日も『ミレーユ錬金術調薬店』の朝が始まる。


 シャロちゃんは今日も先に起きて、朝食を作ってくれる。

 シャロちゃんはメホリック在籍なので、紳士のおじいちゃんにより、制服としてミニスカメイド服を支給されている。

 買い置きのライ麦パン。ベーコンと目玉焼き。コンソメ風スープ。サラダ。

 二人で美味しいご飯をいただく。


「今日も、おいしいね。ありがとうシャロちゃん」

「あっ、はい。ありがとうございます。先生」


 マリーちゃんも出勤してくる。

 マリーちゃんは膝丈の普通のメイド服だ。それでも十分可愛い。

 午前中はまずはその日の分の調薬作業だ。


「では、本日もお仕事、がんばりまっしょい」

「「はーい」」

「きゅ、きゅぅ」


 効果が低いといっても、一番需要が多いのは低級ポーションなので、改良型低級ポーションを量産する。シャロちゃんが。

 こちらは黄緑色系統の色をしている。

 モリス草とミルルの実だ。


 私はその間に、モリス草と子供たちから仕入れているスライム粉末で、練り薬草を作る。

 他の錬金術店では魔力の濃度が薄く、効果が低いため、あまり売っていない。


「ぐ~るぐるぐる」


 中級ポーションを作る。

 主に自前の畑の薬草園からルーフラ草とボブベリーを使う。

 中級になると青っぽい。


 それからポム隊員には、中上級ポーションであるポムポーションを毎日六本作ってもらう。

 これが涙なのか体液なのか、それも、アレなのか。謎は深まるばかりだ。

 特級ポーションにより、必要性は下がったけど、ないよりはあったほうがうれしいので、ポムには頑張ってもらわなきゃ。


 特級ポーションも少数だけど、生産してしまう。


「ぐーるぐるぐる。ぐーるぐるぐる」


 混ぜるというのは錬金術では重要な工程なので、簡単そうに見えてもおろそかにしてはいけない。


 以前買い占められていた収納石だけど、たまにぽつぽつとホーランド経由で入手できる。

 今朝は一回分の収納石をマリーちゃんが持ってきてくれたので、それを使う。

 材料のバッグは奥に山になっているので、問題ない。


 錬金釜に収納石と水を溶かして入れる。そこにバッグを浸す。

 そして魔力を込める。かなりの魔力が必要だ。

 こうして魔力が減るまで何個も作っていく。魔力が少ない他の業者の人にはできない作業だ。


 私が色々やっている間に、足りないジンジャーエールとか、桃の匂い付き石鹸、シャンプーなども作ってもらう。

 こういう作業の一部はマリーちゃんもできる。



 お昼をいただいて、私は戦闘服、メイド服に着替える。

 このメイド服はマリーちゃんと同じタイプだ。


「おはようございます。それでは『ミレーユ錬金術調薬店』開店です」


 今でこそ、オープンの時間に並んでいる人はほとんどいない。

 最初は関係者の人が来てくれたっけ。


 表札をひっくり返して「オープン」にする。

 この辺のお店では、一般住宅や閉店中と区別するため、これが決まりだ。


 冒険者の若者が数人飛び込んできた。


「よっしゃああ。今日は当たり。収納のリュックあるじゃん」


 ガッツポーズで感激していた。


「ひ、ひとつ、ください。できれば二つ欲しいけど、お金が」

「ありがとうございます」


 収納のリュックは金貨一枚。

 今でも他店より圧倒的に安い。

 稀に私の作った収納のリュックの中古が金貨二枚とかで、転売されているらしい。

 まあ、そこまでは規制しない。自由にやってちょ。


 しばらくするとポム愛好家が集まってくる。


「ポムちゃぁん」

「ポムちゃん、飴たべるよねぇ」


 お姉さんたちに囲まれて楽しそうなポム隊員。

 鼻の下伸ばしちゃって。どこに鼻があるか分かんないけど。


「ジンジャーエールください」

「こっちもジンジャーエールください」


 元黒服で今はラフな格好のジンジャーエールおじさんたちもやってくる。

 もはや常連と化している。


「コーヒーくださいな、ミルクで」

「紅茶ください」


 コーヒー党、紅茶党の人ももちろんいる。

 別に喫茶店ではないけど、そういう機能もある。


「にゃあ」


 白い仔猫のマリーちゃんが遊びに来た。

 飼い主のプロッテおばさんもいる。

 このおばさん、実はメホリックの諜報員で情報収集担当らしい。


「本当だ、この銀の鏡、信じられないくらい平で綺麗、ください」


 うちの銀の鏡は小さい代わりに、平面率が業界最上位だ。

 小さい分値段も手ごろで、日常で使いやすい。


 なんとか昼間の営業が無事終わった。


 夕ご飯を食べて、むふふ、シャロちゃんとお風呂に入る。

 裸の付き合いだって大事だよ。


 そうして、お布団に入って、今日もお疲れさまでした。


「シャロちゃん、おやすみなさい」

「ミレーユさん、おやすみなさい」


 ――次の日も、またいい一日を過ごせますように。



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