目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
58 あれから


 夢の薬「特級ポーション」。

 あれから中上級ポーション通称ポムポーションでは治らない病気やケガなどで苦しんでいる人から、特級ポーションを買えないか問い合わせがあった。


 本当にどうしても必要な人には、ボロランさんの計らいで、中上級ポーションと同程度の値段で販売されることになっていた。

 使うのは王家の世界樹ではなく、メホリック商業ギルドの裏庭の木のものだ。


「助かりました」

「特級ポーション、素晴らしい」


 貴族からはストックが欲しいとは言われていたけど、ポーションは二週間しか効果が持たないため、ずっと維持するのは無理ですよ、と言ったら諦めていった。


 残念ながら、現在のレシピの特級ポーションでも、部位欠損などは治らない。

 そういうものに効果があるとされる本当の秘薬、エリクサーという霊薬もあるとされている。

 作ったことはない。が、レシピとされるものは暗記している。


 世界樹の葉、ユニコーンの角、妖精の鱗粉りんぷん、精霊水、処女の聖女の血、他にも必要とされるものがいくつかあるらしい。

 ユニコーンは聖獣だけど、どこにいるかは定かではない。少なくともこの国トラスティア王国周辺には居ないようだ。

 妖精は、あ、うん一度だけ森の奥のほうで見たことがある。しかしその鱗粉を貰えるとはとても思えない。

 精霊水、これはそう呼ばれている泉がある。

 血はうーん。聖女って誰って問題がありそうだ。

 そして、さらに必要なものがいまいち、「なんだか草」だったり、知らない名前の薬草。


 特級ポーションは、現在も少数ではあるものの、日常で生産を続けている。

 保険的意味合いもあるし、必要とする人はぽつぽついる。


 怪我の重傷者という需要はほとんどいない。

 冒険者は喉から手が出るほど欲しいだろうけど、持ち歩いても二週間だ。その間に怪我をしないなら丸々無駄になるため、コストパフォーマンスが悪い。


 出先で重症を負って、もし運ばれてきたとしても、うちのお店に着く前に死んでしまっている確率のほうがずっと高いだろう。


 ということで怪我の重症に、特級ポーションが最適だといっても、状況が許してくれない。



 メホリックのボロランさんのところでお茶を飲む。


「紅茶、美味しい」

「そうですな」


 紳士風のボロランさん。

 しかしこのギルドの内部、私たちの後ろでは白黒メイド服の幼い少女たちが働いている。

 胸を強調するデザイン、ミニスカート。ちょっとエッチだと思う。

 それを見て、満足そうにうなずくボロランさん。ちょっと変態だと思う。


 上二人が追放されたことで、メホリックそのものの取り潰しは避けられた。

 ボロランさん自ら王宮へ出向いたからだ。

 もし私たちだけで行っていたら、今頃メホリックは潰れてホーランドに統合されていたという。

 どこまで狙っての行動なのか分からないけど、この変態紳士も、なかなか侮れない。




 ホーランドのメイラさんのところにも、定時報告にくる。


「紅茶美味しい」

「ふふふ。メホリックのとどっちほうがいいかい?」

「う、げほげほ」

「あはは」

「えっと、同じくらい美味しいです」

「まあ、輸入元は同じところだから、そりゃあ同じだろうな」

「なんだ……」


 メイラさんには家の手配とか、薬草の手配とか、商品の販売とか、色々とお世話になっている。

 敏腕の女性で今日も美しいお姉様だ。


「そういえばメイラさんは結婚とかは」

「あーうん、今のところ釣り合うやつがいない」

「そうですか。あっこのあいだの王子さまとかは」

「それはよすぎるだろう、いくらなんでも」

「そうですかね。第三王子ですから、お似合いですよ」

「そういうミレーユちゃんは?」

「女の子で間に合ってますね」

「そうか」


 この前の名誉女男爵を貰った時の晩餐会にメイラさんも参加した。

 貴族や王子も参加していたので、第三王子にメイラさんはダンスを申し込まれて、一緒に踊っていた。

 その姿はとっても素敵で、なんとも言えない高貴な感じだった。


 お似合いだと思う。


 私はまだ、シャロちゃんとマリーちゃんがいるからいいの。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?