賞金も貰ってお金も貯まって、発注していた錬金炉が出来上がった。
「見て見て錬金炉だよ」
「おおぉお」
シャロちゃんも関心があるみたいで、興味深く見ていた。
購入したのは携帯用錬金炉だ。炉の中では一番小さい。だから作れるもののサイズも大きくはないんだけど、なんとか実用の範囲内だ。
大きければ大剣とかハルバードとかも作れる。
「そしてお金にモノを言わせて銀を買い集めました」
「おぉおぉ」
銀貨でおなじみの銀だけど、銀貨は実は含有量が少なくて、それで安価になっているという事情がある。
ここにある銀は高純度の値段が高いやつだ。
錬金炉は錬金釜とは違う。錬金釜は主に液体の水っぽいものを扱うことが多い。それに対して錬金炉は液体の金属を扱う。高温に耐えるようにできている。
「ふふふ、ではさっそく」
炉に銀を投入して、魔石も入れて温度を上げるためのエネルギーにする。
魔力を少し使って制御しながら温度を上げていく。
そうして型に入れてできたのが、綺麗な平面をしている銀の円盤。
裏側は花びら模様になっている。
表側はただの銀。真っ平らだ。これだけ平らにするのはかなりの技術が必要なのだ。えっへん。
「すごいです、すごい」
「えへへ」
私もシャロちゃんに褒められるとちょっとうれしい。
こうして最高級品質の、銀の鏡ができた。
普通の鍛冶ではここまでの平面はできなくて、錬金術が優勢を誇っている。
そして、これは非常に技術が必要なので、値段が高い。
完成したので、午前中が終わるちょっと前にメイラさんに見せに行く。
「どうもこんにちは」
「こんにちは。今日は何を見せてくれるの?」
「えっとですね。銀の鏡です」
炉は一度温度を上げると、連続して作ったほうが燃費がいいので、十個ぐらい作ってきた。
「銀の鏡……」
「はいどうぞ」
「ええ、すごくよく見えるわね」
「でしょう、自信作なんです」
「ポーションが専門なのかと思ってたけど、そういえば魔法袋とかも作っていたっけ」
「そうですよ」
メイラさんは鏡を見て、自分の顔をじっくり観察している。
次にはひっくり返して裏の模様とかも見ていた。
「なるほど。裏も可愛いじゃない」
「ですよね」
この裏の花びらの型は、実家で作って持ってきたものだ。
金属用の
ちょっとやそっとで溶けないように鉄とミスリルの合金製だ。
「ただ、ちょっと小さいわね」
「そうなんですよね。でも小さいほうが持ち運びには便利で」
「そういえばそうね。家で使うだけでなくて、持って歩くという発想が無かったわ」
「まあ、そうかもしれません」
「鏡は高いからね」
そうなのだ。鏡は高いのが常識だから、朝お化粧とかするときに使うだけで、家にしまってあることが多い。
でも、これなら持ち運びも便利だから、そうしてほしい。
「小さいほうが値段も抑えられて、それでこれだけ綺麗に見える鏡はなかなかないですよね?」
「そうね。王都中探しても、無いね」
「ですよね、どうです?」
「いいじゃない」
メイラさんのお墨付きをもらった。
まずは半数をメイラさんに納めて売ってもらう。
もう半分はうちの店でせこせこ売ることになった。
お店で実際に売ってみる。
「すごい、この鏡、真っ平ら」
「おお、こんな綺麗な鏡は初めて見るな」
「お値段も小さいからか、そこまで高くないわ」
お客さんにも上々の評判だった。
高いけれど、女性には人気で、売れていく。
初日に置いたのは五個だったんだけど、すぐに売れてしまった。
次の日は倍にしてみたけど、やっぱり売れてしまった。そうしてかなりの数の鏡が売れた。
儲かった。儲かった。
こうしてお店の定番商品に銀の手鏡、ポケットミラーが増えたのだった。
シャロちゃんとマリーちゃん、それからメイラさんも欲しがったので、プレゼントした。
みんなよろこんでくれて、錬金術
持ってきた手鏡が三枚あるんだけど先にあげればよかったね。