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42 魔力ポーションだよ


 魔力の実はちょっと高いわりに取ってくるのはもっとめんどくさいために、ほとんど流通していなかった。

 ホーランド商業ギルドも普段取り扱いしていない。

 それをスライム狩りのついでに子供たちに頼んだので、なんとか少量だけど手に入れられるようになった。

 まったく子供たち様様だ。


「ということで、シャロちゃん」

「はいっ」

「魔力ポーションを作ります」

「お~お」


 魔力の実には魔力がもっている。というわけではない。なんというか無属性の魔力を溜める能力があるのだ。


 魔力の実をすり潰して、水と一緒に錬金釜へ入れる。そして煮る。ボブベリーも入れて、無属性の魔力を込める。

 ヒーリングポーションは癒やしの魔力だったけど、属性を偏らせないで、無属性を注ぎ込むのが重要なポイントだ。

 もし癒やしの魔力を注ぐと普通のヒーリングポーションになってしまう。しかも薬効との相乗効果がないので気休め程度になる。

 そして無属性の魔力を扱うのはかなり難しいので、これができる錬金術師は少ない。


「はい完成です」

「おーお」


 魔力ポーションは、青い色をしている。

 中級ヒーリングポーションは水色なので、ちょっと違った。


 魔力ポーションを売っている錬金術師は、魔力の実を取ってきてもらうのに人を雇っているために、ポーションはかなりのお値段になるという話だった。

 それでも魔法使いやヒーラーの生命線なので、喉から手が出るほど欲しがる人はいる。

 そしてポーションの例に漏れず、薬効があるのは十日間ほどというシビアなものだった。

 もし保存期間がもっとあれば、と思うのは無理もない。


 あと魔力ポーションは、結局錬金術師が込めた魔力を使って回復するものなので、自分で作って自分で使うと、最終的には赤字になる。

 無限増殖可能なチートポーションではないという点もポイントなんだよね。


 もし魔力の実自体に魔力があるなら、魔力の実を持てる限り持って、錬金術師を戦場の最前線に送り付けると、効率がいいけど、そうではないということだ。

 はあ、前線に送り込まれなくてよかった。

 といっても東の果てに魔族の国はあるものの、現在は落ち着いていて、戦闘も活発ではないらしい。

 人間同士も、それほどひどい戦争は近年起きていない。


 冒険者ギルド中央店は、日雇い労働と駆け出ししかいないんだけど、実は西の森に近い、冒険者ギルド西門支店がある。

 だから腕に自信がある冒険者が王都に全くいないというわけではない。中央店にはいないけどね。


「あぁ、魔力ポーションじゃん。やったー」

「いいもん置いてあるじゃん。じゃん」

「すげー。青いポーション、これが魔力ポーションですか」


 携帯食グラノーラと中級ポーションを買いに来る冒険者だ。そういう人たちは、魔力ポーションを持って、森へ行く人もいるので、それなりに売れた。

 他のお店はほとんど予約制らしく、一般にはあまり出回らないそうだ。


 乾燥スライム粉末も、子供たちから主に買うようにしてよかった。

 というのも乾燥させ方とかがあって、普通に買うと処理が甘いものがある。子供たちにはちゃんとした乾燥のさせ方を教えたので、かなり品質のいいものが手に入るようになった。

 それでお値段は普通だから、ちょっと得している。もう少し買取金額を今度上げよう。

 ギルドを通した一般流通品は、どうしても品質にムラがあるように思う。

 でもさ。業者より、子供たちのほうが品質がいいって、それ駄目な業者だよね。子供たちを見習ってくださいよという話だよ、本当に。


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