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40 片腕の人と鳥狩りだよ


 貧困街の人たちとの話はまだ終わっていない。


「なんか病気とかひどい怪我とかしている人を教えてくれる?」


 そう質問すると、こっちこっちと何人も紹介してくれる。

 低級ポーションとそれから中級ポーションを、ひっそり取り出して使った。


「これは秘密ですけど、中級ポーションです」

「ありがたや、ありがたや」


 偽善っぽいけどいいんだ。やらぬ善よりやる偽善というし。

 ただしなるべく秘密ということで、お願いしたい。


 その怪我をしている人の中で、片腕を失って、その傷口がまだ残っている人がいた。

 急いで中級ポーションを使って、傷を癒やした。

 傷はふさいだものの、もちろん失われた右腕は生えてきたりしない。


「ありがとう。もう右腕から全身ダメになるかと思った」

「いえいえ」


「やはり右腕の怪我が原因で?」

「そうだ。前は冒険者だったんだが、利き腕をやられちまってな。左は苦手で引退したんだが、仕事がねえ。片腕だと見せると仕事もさせてもらえない」


 こういう怪我の人への風当たりはかなり強い。


「なるほど」

「傷はふさいでもらった。ありがとうよ。なんか俺にできることがあれば、手伝うけど」

「そうですね。子供たちの訓練と引率をお願いしてもいいですか。南平原での」

「いいよ」

「あと、スライムを乾燥させて、それから粉にしてほしいんです。その粉を集めてうちの店まで定期的に持ってきて換金する仕事をお願いしたいんです」

「おお、思ったよりまともな仕事だな」

「はい。お金なので、さすがに子供たちだけというわけにもいかないでしょう」

「そうだな。俺がちゃんと管理してやるよ」

「ありがとうございます」


 この隻腕の人とは話がついた。


「ではスライムもいいけど、他にも策があるんです」

「え、何々おねえちゃん」

「とっとと言えよ」

「はやく、はやく」


 子供たちに囲まれてたじたじだけど、次を言う。


「鳥を捕まえようと思います。お肉食べたいよね?」

「え、お肉!!」

「お肉、お肉、おーにーくー」


 子供たちを連れて自分たちの畑へ向かった。

 先日、せこせこと鳥籠とりかご型の箱罠はこわなを六個作ったので、昨日ここの畑に設置してあったのだ。

 箱罠はそれぞれ離して設置してある。


「罠は簡単です。箱になっていてふたがあって、鳥が入ると閉まって出られなくなります」

「ふんふん」


 実際に箱の前で説明する。すでになんか動いている音がする。


「すごい、鳥が入ってる」

「すごい、すごい」


 そして箱を回収して、中の鳥をナイフで息の根を止める。

 子供たちに解体の仕方を説明していく。

 今後は自分たちでやってもらわなければならない。


 鳥さんイワリスズメを解体するのは、ちょっとショックの子もいるみたいだけど、お肉になるという誘惑には抗えないようだ。


 こうして鳥さんは無事お肉になった。

 イワリスズメが全部で五羽。ひとつだけ罠には掛からなかった。


 イワリスズメは中型の鳥なので、少ないながらも食べるお肉が取れる。

 土着の鳥で一年中見られるので、いつでも食べられるということだと思う。


 畑の隅で火をおこし、焼き鳥にした。

 味付けはシンプルに塩だけだ。貧困街の子にしてみれば、塩だってけっこう高い。

 胡椒こしょうは私たちも食べてるけど、貧困街では手が出ないと思うので、今回はやめた。


 全部で十三人。五羽を分けると、それなりに食べられた。


「お肉おいしー」

「おいしーおいしーね」

「お肉お肉」

「すごくおいしー」


 もうお肉と美味しいとしか言わない。夢中になって食べていた。

 私も一口だけ貰った。お肉はやっぱり美味しい。

 普段は干肉とかだけだから、こういう新鮮な柔らかいジューシーなお肉は、王都に来てからほとんど食べる機会が無い。

 田舎村では、魔獣などを狩ってくることがたびたびあったので、お肉は塊で手に入ったし、よく食べた。

 実は食生活は、貧乏だと思っていたハシユリ村のほうが、ずっと豪華な食事だった。食事以外は貧乏そのものだったけどね。


「ここの畑に限り、箱罠を置いていいから、鳥を取っていいよ」

「「「やったー」」」

「「「すごーい」」」

「「「お肉」」」


 こうして子供たちの食生活に、お肉が加わった。


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