目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
33 お医者さんと教会だよ


 翌日午前中すぐに、メホリック商業ギルドへ行く。

 ちょっと中級ポーションの品薄感がすごいので、様子を見に来た。


「どうもどうも」

「ああ、ミレーユ嬢さま。噂は聞いています。すぐ呼び出します。どうぞ中へ」


 受付のミニスカメイドさんだ。一階の待合室みたいな場所に通された後、老紳士のボロラン・ロッドギンさんがいつものように現れた。


「ミレーユ嬢、朝からありがとうございます。こちらから訪ねようかどうしようか、悩んでおったのですよ」

「そうでしたか」

「理由は、中級ポーションのことですかな」

「そうです。さすが早いですね情報が」

「まあ、ギルド員の数だけは多いですからね。例えばプロッテさんとか」

「ああ、プロッテさんですか、なるほど。なるほど」


 プロッテさんというのはですね、仔猫のマリーちゃんの飼い主のことです。

 熱心に通いに来るな、昨日もそういえば居たな、と思えばメホリックの手の人だったか。

 なるほど、こうやって人はつながっているんですね。ふんふん。


「中級ポーションはうちのギルドでも扱っている。ただ、あんなに客が来るほどのものとは思われていなかった」

「高いから、買えないんですよ。欲しいけど、買えないんです。お金がないから」

「まあそういうことだな。命に別状がないなら、安静にするぐらいしかできない」

「もっと中級ポーション安くしてくださいよ」

「すまんな。それはワシにもできん」

「そんななんで」

「ナンバースリーだからだ。意味は分かるだろうか」

「つまり一番か二番の人の利権ということですね」

「はっきり言われると耳が痛いが、まぁそういうことだね」


 私が革命を起こして安くするんだ、と思っていた。

 でもふたを開けてみれば、大混乱しそうで、すでに値段について上を抑えられてしまった。

 利権を侵すのは、なかなか難しい。今、少なくない人がうちのお店に押しかけているのは、まだ広い王都ではほんの一部分だ。これが王都全域に広がると、お店が機能不全になって潰れてしまうかもしれない。

 簡単にはなかなか行かないのだった。


 うちの中級ポーションも今の量よりも大幅に増やすことはできない。材料の草がそもそもない。


 お医者さんのところにも顔を出した。


「中級ポーションがちょっと高いけど、増産されたんだってね」

「はい、そういうことになってます」

「うちにも新しいのが入ってきたばっかりだよ。なかなか効き目も素晴らしかったよ。正直いえばもっとあるなら欲しい」

「すみません」

「なになに。ないよりマシさ」


 病院では下に広がったのではなく、上へ広がっていた。ちょっと高くしたせいだ。これは取り決めだからしょうがない。


 ちなみにこの国では医療は、民間療法、錬金術の調薬、お医者さん、それから神殿で行われている。

 お医者さんは外科的な手術とかもする。変な骨折とかはポーションだけの力では難しい。

 神殿は神の御業、ヒーラーさんのヒール魔法という回復魔法が使われていた。また一部の人はお医者さんと同じような手術をすることもある。

 この辺の垣根は曖昧で、神殿でポーションを使うこともあった。

 神殿勤務の錬金術師やお医者さんもいる。

 数は少ないけど、冒険者のヒーラーさんとかもいるらしい。


 それで一応というか、縄張りに近いものもあった。

 だから中級ポーションが大量に出回るとパワーバランスが、崩れやすい。

 当然、利益が減って苦しくなる人は、苦笑いならいいけど、怒ってたらどうしよう。


 翌日はありがたいことに、日曜日のお休みだった。

 みんなでお店を閉めて神殿に向かった。


「すごいね」

「でしょでしょ」

「王都の神殿だから、そりゃあね」


 私とマリーちゃんとシャロちゃんで、大きな神殿を見上げた。

 ちなみにだけど、組織を教会と呼んで、建物を神殿と呼び分けることが多い。実際にはけっこう適当なんだけどね。


 ルーセント教、マルタリー教会、聖ラファリエル神殿です。

 ルーセント教は宗教の名前。ここいら知ってる限りの土地はみんなルーセント教だ。

 マルタリー教会は組織の名前。ルーセント教の最大派閥でここ王都の王宮内に本拠地がある。

 聖ラファリエル神殿は王都の庶民が参拝できる支部なんだよ。

 支部だけどさすが王都、すごく大きい。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?