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25 畑だよ


 契約では畑もレンタルすることになっていた。

 それが整ったので、みんなで畑に来ている。


「ここがミレーユさんの畑です」

「ありがとうございます。メイラさん」


 今日はメイラさんが立ち会っている。マリーちゃんももちろん今日は来ていた。


「思ったより広いですね」

「そうね。王都内だけど隅の方だし、まあね」


 マリーちゃんの質問にメイラさんが答える。


「ほえぇ。ここをワタシが耕すんですか、さすがに一人だと腰が」

「いやいや、さすがにシャロちゃんは管轄外だよ。ただ緊急時には収穫するかもしれないから、今日は見学」

「よかった」


 ほっとするシャーロットちゃん改めシャロちゃん。仲良くなったので短く呼ぶことになったんだ。


 後ろの方から犬耳のおじさんとおばさんがやってくる。


「よう、若い娘ばかりだね」

「はい。よろしくおねがいします」

「あいよ」

「この人たちがここの管理人をしてくれるマルボロさん夫婦です」

「おお、よろしく」


 どこにでもいる獣人夫婦だった。笑顔がまぶしい。やり甲斐がいを感じているらしい。


「ただの畑ではなく、みんなを癒やすお薬を作る仕事だというから、名誉なことですたい」

「まあそうですね」


 自分たちだけでお店をしつつ畑も耕してさらに製品作りまでやると、ちょっと忙しいどころではなくなってしまう。

 ということで専属の人にお仕事をしてもらうことになった。

 ちょっと給料が痛いけど、王都のポーションの値段が高めなのもあって、なんとか大丈夫の予定だよ。


「そーれ、鬼ごっこだ。いくよシャロちゃん」


 マリーちゃんが叫んで逃げていく。


「ああ、待ってください。そんなワタシ……」


 シャロちゃんが追いかけていく。

 二人は顔を合わせてから日が浅いけど、歳も同じだし、すぐ仲良くなった。


 広い畑を走り回っていく。


 ここの畑もクズ魔石を粉々にしたものをいて、魔素を濃くする予定だ。


「あそうそう、あのオレンジの木とレモンの木、切り倒したりしなくていいので、そのままでお願いします」

「はいよ」


 土地の隅のほうにオレンジとレモンが植わっていた。そのまま活用しよう。

 とくにオレンジはポーションのオレンジ風味に使うので、普段から使用量がそれなりにあった。


「実は、ちょっとずつ収穫していきましょうか」

「はいよ。ミレーユ嬢さま」


 必要な分だけ実は順次収穫していって、使っていこうと思う。今もけっこうな数のオレンジとレモンがなったままになっている。

 借主がいないと、こういう木は基本放置なので、木も放置されていたらしい。それで今年は収穫時期に誰も手を出していなかったようだ。

 ホーランド商業ギルドが地主だから、農家に土地を貸したり、農家を雇って収穫とかすればいいんじゃないかと思うんだけど、タイミングとか事務処理とか色々あるのだろう。

 よく分からないけどね。



 この前試験で大量生産されたポーションは、うちのお店のポーションとしては増幅剤が入っていない低級品なので、特価で販売した。

 王都としては普通の性能のポーションが特価、半額で売り出した。

 しかしどんなにお得で王都といっても、宣伝しないとお客さんは来ない。

 ポーションは必要がない人には本当に不要なので、なかなか口コミも広がらず、ものすごい売れまくりとかには、ならなかった。

 それでも普段の倍くらいのペースで売れていって、最後のほうはすぐに売れてしまった。

 ポーションの使用期限内に全部さばけて、万々歳だった。



「はぁはぁはぁ、疲れましたミレーユさん」

「遊んだ遊びました。ミレーユさん」


 疲れたのはシャロちゃん。うれしそうな顔なのはマリーちゃんだ。

 マリーちゃんのほうがおてんば娘なのだな。見た目は黒髪さらさらでお嬢様風なのにねえ。

 シャロちゃんはピンク髪ツインテールで元気いっぱいに見えるけど、逆でこちらがお嬢様らしい。


 体力づくりも必要なら、定期的に鬼ごっことかしてもらってもいいかな。

 私はハシユリ村で山の中を延々歩いたりしたので、体力にも自信がある。

 王都っ子はそういう意味では、運動とか苦手そうなイメージがあるね。


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