桃色髪のツインテールのシャーロットちゃんが弟子になった。
「じゃあシャーロットちゃんは布団と枕を持ってきてくださいね」
「え、あ、はい」
弟子の布団まで買うお金はないから持ってきてくんなまし。貧乏な師匠でごめんよ。
でもご飯はちゃんと食べさせてあげるね。
あ、誕生日は私のほうが二週間早いから、お姉さんだよ。ねー。
「では、届けさせるように手配してきます」
「はいはい」
シャーロットちゃんが出ていく。
自分で持ってくるのではなく、届けてもらうんだな。まあそうか布団大きいもんね。
今は夏布団だけど、冬はどうしようかな。
ささ、シャーロットちゃんが来る前に、料理をしないと。
ちょっと高かった葉物野菜を使ったサラダも作った。
それから普通のパン。パンはごめんね普通だよ。
高い白パンは高級品で、値段が倍以上するから、ちょっと手が出にくい。
これはライ麦パンだよ。これでも十分に美味しい。ちょっとだけ固いのが好みが別れるみたいで、私は固いのも食べごたえがあっていいと思う。ちなみに買い置きで普通の人はパンを自作したりはしない。
「ただいま戻りましたぁ」
シャーロットちゃんの甘い声が聞こえる。
後ろには大きいおじさんが布団を抱えてきていた。
あ、なんか布団高そう。いいやつに違いない。あれ、この子ブルジョア族なのだろうか。
底辺の売れない錬金術師の家で、貧乏で、毎日のご飯もやっとの生活が、とか思ってたのと違う。
まあ裕福なら裕福で、別に問題そのものはない。
ただイメージと違っただけだよ。他意はないよ。
あ、自分の実家と重ねてたんだね。分かった。王都の錬金術師はちゃんと生活できていたんだ。よかったよかった。
向かい合うとシャーロットちゃんのほうが小さい私よりさらにちょっと小さい。
ほんのちょっとだけど、私のほうがお姉さんだ。
そう思うと、とたんに可愛く思えてくる。
「はい、おかえりぃ。いいこいいこ」
頭をなでなでする。お、触り心地も悪くない。これはいいものですぞ。
ポムも忘れてないよ。ちょっと主張してくるから、次に撫でておいた。可愛いやつめ。うりうり。
こうしてスキンシップをしたりして、そして。
ミレーユ家恒例の一緒にお風呂タイム。
私とシャーロットちゃんとそれからポムでお風呂に入る。
むむ。胸が私より、ちょっとある。私のほうがお姉さんだと思ったのに、違ったらしい。惨敗だった。
さらにお肌はすべすべで、さすがだった。
二つ並んだベッドで、それぞれお布団に入る。
一緒の部屋で誰かと寝るというのは、なんだか懐かしい気分だけど、ほとんど記憶がない。
人がいるっていうだけで、ちょっと安心。
これが怖い人とだったら不安なのだろうけど、シャーロットちゃんは、いい人そう。
勝手な想像だけど、一緒にこれからやっていけそうな気がする。
安心して寝た。
「おはようございます」
「あーおはよう、ございます」
ちょっと朝、目が覚めたらもうシャーロットちゃんは起きていた。
「シャーロットちゃんは朝早いの?」
「いえ、ちょうど起きただけですよ」
「そうなんだ。私より早いからびっくりしちゃった」
「朝ご飯はワタシが作りますね」
「あ、うん。ありがとう」
シャーロットちゃんが作ってくれるらしいので、せっかくだから甘えてしまおう。
とくに苦手とかも言ってないから大丈夫だろう。
普通にパンとスープとそれから燻製肉のベーコンと目玉焼きが出てきた。
ういうい。料理もある程度はできると。
優秀、優秀。逆に何にもなくて、困っちゃいそうなぐらいだね。
別にお姑さんじゃないけど、粗探しとかしたくなったらどうしよう。
「うん、美味しい、ありがとう」
「料理は任せてください。錬金術はあんまり自信がないんですけど……」
ちょっと悲しいような顔をするシャーロットちゃん。
「あはは。いや十分だよ。十分。そこそこできればいいから。今は」
「今はですか」
「まあね。将来は秘薬とかも作ってほしい」
「秘薬ですか、すごいですね」
「作り方は結局基礎ができてるなら一緒だから、大丈夫だよ」
「それだと助かります」
少しは励ませたみたいで、安心した顔になった。
そういう顔は可愛いから好きだよ。
こんな感じで、一緒に生活することになった。
いい子ではありそうで、助かってる。
お姉さんも頑張んなくちゃね。