南大通りをまっすぐ行って、途中にある広場、南中央広場で立ち止まる。
確かこの真正面にあるはずだけど、と見回してみたら、ホーランドと看板が出ている新しい建物があった。
石組みで二階建てだ。そして屋根の上に草が生えている。よく見ると全部薬草だ。
「すごいね」
「きゅっきゅっ」
ポムも薬草には興味がありそうだ。上を眺めていた。
「よし、頑張るぞい。いざ、まいりませ。ホーランド商業ギルドへ」
「きゅきゅっきゅ」
ポムまで気合い十分のようだ。
正面入り口の前まで行き、外で立っている御用聞きの人を見上げる。
「あのぅ、す、すみません……」
「なんだいお嬢さん? お使いかい?」
「いえ、メイラ・ホーランドさんにお話を伺いたくて、私はえっと、ミレーユ・バリスタットで、ですぅ」
「ああぁ、あなたが。錬金術師の。伺っております。アポイントはありますか?」
「いえ、そっか予約が必要なんですね」
「はい。ですが予約を取るために予約が必要だと困ってしまいますから、空き時間は大丈夫でございますよ。今、確認してまいりましょう」
店番のお兄さんは笑顔で中に確認してくれる。
すぐにメイラさんが飛んできた。
「やあやあ、こんにちはミレーユちゃん。まさか今日中に会いに来てくれるとは、私は好かれているのかな」
「あえ、あの、早いほうがいいかなって思って。ました」
「そんなに緊張しなくても取って食べたりしないから、大丈夫だよ」
「はいっ」
中に案内してくれた。
商業ギルドの正面は色々な商品が置かれていた。ここはただの商業ギルドではなく、ホーランド商会を兼ねているらしい。
奥に入っていき、階段を上り、二階の応接室に到着した。
高そうな
テーブルを挟んで豪華なふわふわソファーに座る。
「ちょっと待っててね。今、東国産の紅茶というものを出すから」
「は、はいっひっ」
ああ、ひって言っちゃった。
あ、め、めめ、メイドさんだ。初めて見るけど、なんかふりふりの可愛い服にエプロンドレスだった。
大きなおっぱいを強調するみたいな変わった服を着ている。
手にはトレイの上にカップとソーサー、ティーポットを持ってきている。
「きゅっきゅっ」
ポムが反応している。メイドさんが好きなのかな。
私、ポム、そしてメイラさんの前にカップを置くとポットから紅茶を注いで回る。
紅茶というものからすごくいい匂いが部屋に漂っている。
「紅茶は初めて? お砂糖とミルクがあるからお好みでどうぞ。まずはそのまま飲んでみてもいいと思うわ。あ、熱いから気をつけて」
「ひゃい」
少し冷めるまで、待とう。別に猫舌じゃないけど、湯気が立ってるし、熱そうだ。
メイラさんはカップを持ち上げて匂いだけ嗅いでいたので、真似をしてみる。
ああ、紅茶、いい匂い。
これはポーションにも応用が利きそうだ。例えば入浴剤にしたり、芳香剤なんかにしてもいいと思う。
「この紅茶の商品の応用がなかなか難儀していてね」
「ははぁ」
「こうして飲むだけというのも芸がないだろう」
「そうですね」
「何かアイディアはあるかい?」
「はい。お風呂に入れる。芳香剤にする。それからパンに練り込んだりするといいかなって、思います」
「なるほど。お風呂はあまり需要がないが貴族連中は好きそうだ。いいねパン。今度作らせてみよう」
「あ、どうも」
紅茶の話は一応、雑談だったようで本題に入った。
ギルドへの加入への特約は、前話した通り、本来必要な前金一切なし、家賃後払いでお店を貸してくれる。
「それでお願いなんですけど、できれば王都内で持ってきた種とかで薬草園をしたいんです」
「ほほう、それで何という薬草かな」
持ってきた薬草の名前を言っていく。
「んー。あはは。知らない薬草ばかりだな。まいったまいった。これでも錬金術師並に関連商品には詳しい自信があったのにお手上げだよ、まったく」
「なんか、すみません」
「何を謝っているんだい。ミレーユちゃんは何も悪くないではないか」
「そ、そうですね」
「
「そうなんですね」
「ああ。それで薬草園か前向きに探してみるよ」
「ここの上にもありますよね」
「ああ、城壁内は狭いといっても畑くらいはあるんだけど、まあ親父の趣味だね、ここの上のは」
「なるほど。見せてもらってもいいですか?」
「もちろん」