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10 聞き込み調査だよ


 ホーランド商業ギルドとメホリック商業ギルドについて調査しよう。

 露店は一週間の利益がそれなりに貯まったので、一応大丈夫。

 露店を閉めて、いざゆかん。


 あてもなく聞き回るということもできるけど、できれば噂話よりも信用度の高い情報を得たい。


「やっぱりあそこしかないよね、ポムポム」

「きゅっ」


 ポムの同意を得られたので問題のあそこを探しに行く。

 その辺の人を掴まえて聞いてみたら場所はすぐに分かった。噴水の真ん前だ。


 剣と盾の意匠、冒険者ギルドだ。辺境の村、ハシユリ村にも冒険者ギルド支部があるのでお馴染みだった。

 もっとも職員は支部長と受付の二人しかいなかったけど。


 さすが王都の冒険者ギルド、でかい。

 さぞ大量の冒険者と依頼でてんやわんやかなと入ってみたけれど、中は意外なことにそれほど混んでいなくてまったりしている。


 そっか。ここは王都。魔物の森もダンジョンもなく、薬草も畑で栽培している。

 そもそも王都では冒険者の本業がほとんどないようだ。

 その代わり雑用依頼とかが壁の依頼ボードにたくさん貼られていて、冒険者とは名ばかりの若い子たちがチェックしていた。

 剣と盾の冒険者はここにはほとんどいない。


 すいてる受付に直行する。


「すみません。商業ギルドについて伺いたいんですけど」

「ここは冒険者ギルドですけど……」

「分かってます。商業ギルドの一般的な情報が知りたくて、実は――」


 私はこちらの状況をかいつまんで説明した。


 この王都には二つの商業ギルドが存在しているという。

 それがホーランドとメホリックだ。

 もともとは名前のない一つの商業ギルドだったという。

 しかし内紛による内紛を重ねついにホーランド商業ギルドが分離独立した。

 古くからあるほうはこれに対抗してメホリック商業ギルドと名乗っている。

 メホリック商業ギルドは、元からあるギルドなので比較して大きい。特に商人、商店、旅商人が多く在籍しているという。

 ホーランド商業ギルドは主に職人たちが旗揚げしたため、鍛冶屋、パン屋、錬金術師、裁縫屋などが多い。また職人と近い専門店系の商店も加盟者が多いという。

 ホーランドは新興ギルドであり、父親のホーランド会長と副会長のまだ若い娘が主に指揮をとって、ギルドを牽引けんいんしている。

 それに対してメホリックは伝統的な古い家が集まってギルドを運営している。ただ凝り固まった古い考えが嫌で若い人などは近年ホーランドに移籍する人が続出しているそうだ。

 それでもメホリックのほうがギルドが大きいぶん声も大きい。影響力はメホリック優勢だった。


 どちらのギルドも危機感を持っており、貴族側へはどちらの意見も平等に取り扱うように、という対外声明を出していた。

 両ギルドの現在の地位は、対外的には平等ということになっている。


「なるほど、分かりました」

「ご利用ありがとうございました。冒険者ギルド会員ですか」

「はい」


 身分証明書カードを提出する。これは王都に入るときに門で出したのと同じカードだ。

 身分証明書カードは、各ギルドでのギルドカードを兼用している。そのぶんなくしたら大変だ。


「はい確かに。では情報料、銀貨一枚となります」

「ですよね。分かりました」


 お金を取るんだな、と思いつつ、素直に従う。

 冒険者も商人も情報は命だ。ここも商売なので、当然仕事をしたらお金が必要だ。

 正確な情報に対して、対価は必要だろう。


 一日の稼ぎは材料費を引く前で銀貨二十四枚ほど。

 ここから宿代が一日銀貨五枚。それから昼食が銅貨五枚。

 ちなみに黒パンが銅貨三枚。

 銅貨十枚で銀貨一枚。

 銀貨百枚で金貨一枚になる。


 銀貨一枚なら安い方だろう。


「はあ、次はどっちにしようか?」

「きゅきゅ」

「そうだよね。ポムに聞いても分かんないよね」

「きゅっ」


 さてホーランド商業ギルドに先に行くか、メホリック商業ギルドに行くか。

 うーん。先に話しかけてくれたのはホーランドだったし、先に行ってみるか。


「すみません。そういえば、ホーランド商業ギルドってどこですか?」


 冒険者ギルドの受付でついでに聞いてみる。

 南大通りを行った南中央広場前だそうだ。


 ということで、次はホーランド商業ギルド本部へ行ってみよう。


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