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26 いい匂いだよ


「オレンジいい匂いですね」

「だよねぇ」


 今日は試しにお風呂にオレンジの入浴剤をいれてみたのだ。いい匂い。

 オレンジの匂いのポーションを元に、オレンジの芳香剤、それから石鹸せっけん、さらに入浴剤を錬金術で作ってみた。

 こういう特定のものの特性を抽出して使うみたいなことは錬金術の得意分野だ。


 翌日から売り出してみて、とくに石鹸が人気だった。かなり売れた。


「他のも作ってみよっか」

「はいっ」


 シャロちゃんとも協力して、色々な商品を作る。

 レモン系、あと以前話していた紅茶の匂い、それからラベンダー。

 私が個人的に好きなのは桃の匂いだった。


 石鹸とは別に液体石鹸の桃の匂いのシャンプーも作った。


 はすはす。すーはーすーはー。

 お風呂上がりのシャロちゃんの桃色の髪の毛の匂いを嗅ぐと、この桃の匂いがした。

 甘い感じのとってもいい匂いだった。

 これは売れる。


 桃のシャンプーや石鹸、それから入浴剤は、飛ぶように売れた。

 ちょっと生産が追い付かないくらい。まあ他の製品も作っているんだけど、午後でも裏でひっそり追加生産したくらい。


 王都にはいくつかのお風呂屋さんがあるんだけど、そのうちの一か所で、この桃の匂いのお風呂が作られた。

 そこの銭湯は、たまたま浴槽が温度とかでいくつかに分かれている構造だったのだ。

 私たちの桃の匂いセットに注目して、導入してくれた。


 そのお風呂屋さんは、今やみんなに大人気だ。

 もちろんお風呂に興味ない人もいるにはいる。とくに男だけの冒険者君たちとかね。

 みんなにもお風呂入ってほしいなぁとは思っているんだけど、アピールする機会も場所もないんだよね。


「みんなでお風呂ですね、ミレーユさん」

「そうだね。楽しみだね」

「はいっ」


 シャロちゃんもお風呂好きでよかった。

 他にも、マリーちゃん、それからメイラさんも誘ってみた。

 女の子ばかり四人で連れたってお風呂に向かう。

 まあ、男の子がいてもお風呂内は男女別だから一緒に入れないしね。

 ボロランさんは男だけど、誘ったら来るかな。あ、一人別でも来そう。お風呂上がりの女の子をじろじろ見たりしそう。誘わなくてよかった。


 銭湯に到着した。

 入口で人数分の料金を支払って、中に入る。


 このところの売り上げ上昇で、懐にもちょっとだけ余裕があった。

 まあ月末に布団代と不動産料を支払わなければいけないんだけども。


 みんなで脱衣所でぬぎぬぎする。どの子もお肌つるつるすべすべだ。


 掛け湯をして、洗い場に向かう。

 そこで設置されている桃の匂いの石鹸とシャンプーで頭や体を洗った。


 周りもお年寄りから若い子まで、たくさんの人が利用していた。よかった。石鹸もシャンプーも好評のようだった。

 そしてやはり桃の匂いのお風呂に入る。


 とってもいい匂い。


 温かくて、広くて、のびのびできる。とっても快適。


 基本的に一般庶民は、お風呂セットとか持っていないので、全部コミコミになっている。

 持ち込み制にしたほうが安くできるけど、ここはちょっとだけ高くても利便性が良かった。

 タオルとかもレンタルに含まれている。

 ほとんど何も持ってこなくていい。すごい。


「あ~あ~あ~」

「いい匂い~~」

「極楽だよぉ~」


 みんなの声がお風呂に響く。とってもいいお風呂でございました。


 しいて問題点を挙げるとしたら、食用にもとっても美味しい桃を、加工に使っているという点だろう。

 食べたら美味しいだろうと思う桃が、石鹸とかにされていく。

 作業してても、食べたくなってしまう。

 これはまずいですよ。

 そういいつつ、シャロちゃんとマリーちゃんと一緒に、おやつに桃を失敬して、食べたりした。

 いやあ、我慢できなかったんだよね。材料だけどちょっとだけ食べた。


 美味しかったです。


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