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8 練り薬草だよ


 風精霊の宿り木亭に戻って来てから一週間が経った。

 あ、ちなみに一週間は七日間だ。

 なんでも創世神様が世界を六日で作り一日お休みをしたんだって。

 だから一週間は七日間。でもなぜかカレンダーでは休みの日が週の初めになっている。


 そんなこんなで毎日同じ場所で露店を開くようになった。

 知る人ぞ知る、ミレーユ低級ポーション店だった。

 ほとんどの客人は新規さんたち。

 でも数人、毎日のように顔を出してくれる人もいる。


 まだ低級ポーションこの一種類しか出していない。

 でも今日から新商品を出す予定でいる。


 だから露店をくまなく見て回って、商品の品定めをする。

 一度見て通過した露店に戻ってきた。


「あっあのっ! このスライムの干物、えっと五つください」

「はいよ」


 日干しでカラカラになったスライムを購入する。

 半透明で白色の普通のスライムだ。

 ポムにはちょっと悪い気がするけど、他に適材がないので、しょうがない。


 ポーションの実演販売をすると人が集まって来て対応が面倒なので、先に新商品をひっそりと作ろうと思う。


 ひそひそして錬金釜に向かい合う。

 薬草を細かくするのは同じ。それにスライムの干物を砕いて細かくしてから投入する。

 そして水を入れないで魔力で加熱する。

 生の薬草なので少し水が出てくるので、薬草とスライムの混合物を練っていく。


「ねるねる~ね~るねる~」


 だいたい混ざったら物理処理は完了。

 あとは癒やしの魔力を込めるだけだ。


 魔力を込めるとやはり光り出す。

 そして限界まで魔力を込めたら、強く光るので、魔力を止める。

 そうすると光りが収まって、ほぼ完成です。


 あとは練った塊をちぎって、一口サイズに丸めていく。

 全部丸め終わったら、また錬金釜に戻して加熱処理して、乾燥させる。


「はいできました。練り薬草、完成です」


 途中見ていた人もいたけど、ポーションじゃないからか注目度はそれほど高くはない。

 でもこの練り薬草、便利なのだ。


「これはなんだい?」


 おじいさんが質問をしてくれる。

 ちょうど説明するのにいいので、私はよろこんでそれに答える。


「これはですね『練り薬草』です。ポーションほどすぐには効かないんですけど、なんと約半年間、ポーションのような回復効果のあるお薬なんです。乾燥しているポーションみたいなものですね。怪我には即効性がないのでいまいちなんですけど、風邪とか病気にいいんですよ。常備薬にもなります」


 はっと気が付いて、恐らく赤くなっている自分を見てちょっと恥ずかしくなる。

 オタク特有の早口で効果を説明してしまった。


「ふむ。なるほどのう。じゃあ、えっと三つくださいな。おいくらかな」

「えっと三つで銅貨九枚です」

「ほほほ、ポーションより安いんじゃな」

「あ、はい。一個あたりの薬草の使用量が少ないので」

「なるほど、なるほど」


 おじいさんは優しく相手をしてくれたし、説明も納得してくれたみたいだったので、よかった。


 次は落ち着いて説明できるように、気を付けよう。


 他にも二人ほど買ってくれる人がいたけど、すぐには次の人は来なかったので、いつものポーションの実演販売をしてポーションも作っていた。

 ポーションもぼちぼちという感じで、売れていった。


 そしてお昼を挟んだ、午後。

 いつも来てくれるお客さん、名前は知らないけど、ロングの茶色髪の綺麗なお姉さんだった。


「いつもありがとうございます。今日もポーションですか?」

「まあね。それからそれ、なんだい?」

「練り薬草ですか?」

「練り薬草ね。ほう、珍しいもの出してるじゃないか」

「練り薬草ご存知ですか?」

「ええまあ。でも王都で一般的な練り薬草は魔力の効率が悪いとして、あまり作ってくれる錬金術師がいなくてね。あまり知られていないんだ」

「へえ」


 あれおかしい。私の作る練り薬草は魔力の効率はポーションと大差ないと思うんだけど。

 でもなんか不安なので、文句を言ってもしょうがないし、黙っておこう。


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