風精霊の宿り木亭に戻って来てから一週間が経った。
あ、ちなみに一週間は七日間だ。
なんでも創世神様が世界を六日で作り一日お休みをしたんだって。
だから一週間は七日間。でもなぜかカレンダーでは休みの日が週の初めになっている。
そんなこんなで毎日同じ場所で露店を開くようになった。
知る人ぞ知る、ミレーユ低級ポーション店だった。
ほとんどの客人は新規さんたち。
でも数人、毎日のように顔を出してくれる人もいる。
まだ低級ポーションこの一種類しか出していない。
でも今日から新商品を出す予定でいる。
だから露店をくまなく見て回って、商品の品定めをする。
一度見て通過した露店に戻ってきた。
「あっあのっ! このスライムの干物、えっと五つください」
「はいよ」
日干しでカラカラになったスライムを購入する。
半透明で白色の普通のスライムだ。
ポムにはちょっと悪い気がするけど、他に適材がないので、しょうがない。
ポーションの実演販売をすると人が集まって来て対応が面倒なので、先に新商品をひっそりと作ろうと思う。
ひそひそして錬金釜に向かい合う。
薬草を細かくするのは同じ。それにスライムの干物を砕いて細かくしてから投入する。
そして水を入れないで魔力で加熱する。
生の薬草なので少し水が出てくるので、薬草とスライムの混合物を練っていく。
「ねるねる~ね~るねる~」
だいたい混ざったら物理処理は完了。
あとは癒やしの魔力を込めるだけだ。
魔力を込めるとやはり光り出す。
そして限界まで魔力を込めたら、強く光るので、魔力を止める。
そうすると光りが収まって、ほぼ完成です。
あとは練った塊をちぎって、一口サイズに丸めていく。
全部丸め終わったら、また錬金釜に戻して加熱処理して、乾燥させる。
「はいできました。練り薬草、完成です」
途中見ていた人もいたけど、ポーションじゃないからか注目度はそれほど高くはない。
でもこの練り薬草、便利なのだ。
「これはなんだい?」
おじいさんが質問をしてくれる。
ちょうど説明するのにいいので、私はよろこんでそれに答える。
「これはですね『練り薬草』です。ポーションほどすぐには効かないんですけど、なんと約半年間、ポーションのような回復効果のあるお薬なんです。乾燥しているポーションみたいなものですね。怪我には即効性がないのでいまいちなんですけど、風邪とか病気にいいんですよ。常備薬にもなります」
はっと気が付いて、恐らく赤くなっている自分を見てちょっと恥ずかしくなる。
オタク特有の早口で効果を説明してしまった。
「ふむ。なるほどのう。じゃあ、えっと三つくださいな。おいくらかな」
「えっと三つで銅貨九枚です」
「ほほほ、ポーションより安いんじゃな」
「あ、はい。一個あたりの薬草の使用量が少ないので」
「なるほど、なるほど」
おじいさんは優しく相手をしてくれたし、説明も納得してくれたみたいだったので、よかった。
次は落ち着いて説明できるように、気を付けよう。
他にも二人ほど買ってくれる人がいたけど、すぐには次の人は来なかったので、いつものポーションの実演販売をしてポーションも作っていた。
ポーションもぼちぼちという感じで、売れていった。
そしてお昼を挟んだ、午後。
いつも来てくれるお客さん、名前は知らないけど、ロングの茶色髪の綺麗なお姉さんだった。
「いつもありがとうございます。今日もポーションですか?」
「まあね。それからそれ、なんだい?」
「練り薬草ですか?」
「練り薬草ね。ほう、珍しいもの出してるじゃないか」
「練り薬草ご存知ですか?」
「ええまあ。でも王都で一般的な練り薬草は魔力の効率が悪いとして、あまり作ってくれる錬金術師がいなくてね。あまり知られていないんだ」
「へえ」
あれおかしい。私の作る練り薬草は魔力の効率はポーションと大差ないと思うんだけど。
でもなんか不安なので、文句を言ってもしょうがないし、黙っておこう。