お金はあまりない。でも宿屋とご飯を節約しているから、昨日くらいの売り上げでも、なんとか黒字で最低限の生活ならできる。
ただ、せっかく王都に来たんだから、綺麗で可愛いふりふりの服、ワンピースやスカートとかも欲しい。
これからの時期、夏だけど、それを超えたら秋、そして冬にもなる。
一応、冬服も一式持っているものの、田舎臭いダサいのしか持っていなかった。
田舎村では若い子向けの服なんて仕入れていなくて、ご婦人方と同じセンスの服ばかりしかも色もデザインも少なくて、という感じでとても残念だったから、王都では張り切りたい。
女の子である以上は服装くらいは
そして服はそれなりに値段が高いので、お金欲しい。
ということで、朝からフリーマーケットの露店を見て歩く。
昨日と同じ人が同じ場所のところもある。でもその隣は昨日と違ったりしていて、入れ替わりがあるみたい。
昨日は午後に到着してその後に露店を出したけど、あまり売る時間もなかったから、売り上げも少なかった。
「あ、この薬草いいですか、えっとこれとこれとこれ、ください」
「はいよ、毎度あり」
見ていたらちょっと品質高めの薬草を見つけたので、買っていく。
なんというか、シャキシャキしていて、シナシナしていないのが新鮮でいい薬草だと思う。
品質は落ちちゃうけど、ちゃんと乾燥させた、乾燥薬草も種類としてはある。生ポーションは十日しか持たないから、乾燥薬草を持ち歩いたり、民間療法としてポーションにしないでそのまま粉にして飲んだりと、使い方もさまざまだ。
「ああ、これ、ミルル草の実ですよね」
「そうだよ」
「あるだけください」
「え、全部かい? 買ってくれるならうれしいけど、そんなに何に使うんだい?」
「えへへ、モリス草のポーションに少量加えると薬効が高まるんです」
「へぇ」
薬瓶も買って、ミルル草の実を買ったらもう持ち金はほぼ空っぽになった。
でもミルルの実は昨日は売ってなかったし、他でも見なかったから、たぶんこの辺ではちょっと珍しいのかもしれない。
錬金術の材料を教えてしまうのはよくないと思うかもしれない。でもミルルの実を入れて錬金するのは、それなりの魔力の入れ方が難しくなってしまうため、材料だけ知っていても意味がないので、大丈夫。
簡単にまねされてしまうくらいなら、むしろもっとポーションを安く売れるようになると思うので、そのほうが世の中のためだ。そうしたら私は別の製品を作る仕事をすると思うんだ。
今日も空き場所で露店を確保して、錬金釜を取り出す。
リュックサックは持ち歩いている。ただし持ってきた植木鉢は邪魔なので宿屋に置いてきてある。
代替薬草のモリス草を細かく刻んで水と一緒に錬金釜へ。ここは昨日と一緒だ。
「ぐるぐーる、ぐーるぐる、なんですよぅ」
私は錬金釜で薬品を混ぜて反応させる工程が好きだ。たまに材料とは全く違うものができる組み合わせもあって、神秘的だし、とっても不思議で興味深い。
緑の薬草ジュースができたら、今日はミルでミルルの実をすり潰して加える。
更にひと煮立ちしたら、前半は終了。あとは癒やしの魔力を込めて完成だ。
発光するポーション液は、幻想的だ。
「はい、完成です」
「わーすごーい」
「ほう、なかなかの手際だったな」
今日も観戦している人がたくさんいて、人だかりができていた。
まだ恥ずかしいけど、外で作っている以上、隠れようもない。
それに昨日、実演販売は集客効果が高いことも、分かったので、ワザと今日も目立っちゃって恥ずかしくて、柄じゃないけど、でも背に腹は代えられないもの。
午前中の販売は順調に進んだ。
みんな作成途中を見ているので、ただの「薬草水」とは違うことを理解してくれている。
薬液をポーション瓶に移し替える作業をするそばから、ポーションが売れていく。
基本的に試験管型瓶に一杯分が適量だ。少なく感じるかもしれないけど、エキスが濃縮されさらに癒やしの魔力の増幅効果で、軽い怪我くらいなら十分な効果が出るはず。