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5 ミルルの実だよ


 お金はあまりない。でも宿屋とご飯を節約しているから、昨日くらいの売り上げでも、なんとか黒字で最低限の生活ならできる。


 ただ、せっかく王都に来たんだから、綺麗で可愛いふりふりの服、ワンピースやスカートとかも欲しい。

 これからの時期、夏だけど、それを超えたら秋、そして冬にもなる。

 一応、冬服も一式持っているものの、田舎臭いダサいのしか持っていなかった。

 田舎村では若い子向けの服なんて仕入れていなくて、ご婦人方と同じセンスの服ばかりしかも色もデザインも少なくて、という感じでとても残念だったから、王都では張り切りたい。

 女の子である以上は服装くらいはこだわりたいもの。


 そして服はそれなりに値段が高いので、お金欲しい。


 ということで、朝からフリーマーケットの露店を見て歩く。

 昨日と同じ人が同じ場所のところもある。でもその隣は昨日と違ったりしていて、入れ替わりがあるみたい。


 昨日は午後に到着してその後に露店を出したけど、あまり売る時間もなかったから、売り上げも少なかった。


「あ、この薬草いいですか、えっとこれとこれとこれ、ください」

「はいよ、毎度あり」


 見ていたらちょっと品質高めの薬草を見つけたので、買っていく。

 なんというか、シャキシャキしていて、シナシナしていないのが新鮮でいい薬草だと思う。

 品質は落ちちゃうけど、ちゃんと乾燥させた、乾燥薬草も種類としてはある。生ポーションは十日しか持たないから、乾燥薬草を持ち歩いたり、民間療法としてポーションにしないでそのまま粉にして飲んだりと、使い方もさまざまだ。


「ああ、これ、ミルル草の実ですよね」

「そうだよ」

「あるだけください」

「え、全部かい? 買ってくれるならうれしいけど、そんなに何に使うんだい?」

「えへへ、モリス草のポーションに少量加えると薬効が高まるんです」

「へぇ」


 薬瓶も買って、ミルル草の実を買ったらもう持ち金はほぼ空っぽになった。

 でもミルルの実は昨日は売ってなかったし、他でも見なかったから、たぶんこの辺ではちょっと珍しいのかもしれない。

 錬金術の材料を教えてしまうのはよくないと思うかもしれない。でもミルルの実を入れて錬金するのは、それなりの魔力の入れ方が難しくなってしまうため、材料だけ知っていても意味がないので、大丈夫。

 簡単にまねされてしまうくらいなら、むしろもっとポーションを安く売れるようになると思うので、そのほうが世の中のためだ。そうしたら私は別の製品を作る仕事をすると思うんだ。


 今日も空き場所で露店を確保して、錬金釜を取り出す。

 リュックサックは持ち歩いている。ただし持ってきた植木鉢は邪魔なので宿屋に置いてきてある。

 代替薬草のモリス草を細かく刻んで水と一緒に錬金釜へ。ここは昨日と一緒だ。


「ぐるぐーる、ぐーるぐる、なんですよぅ」


 私は錬金釜で薬品を混ぜて反応させる工程が好きだ。たまに材料とは全く違うものができる組み合わせもあって、神秘的だし、とっても不思議で興味深い。

 緑の薬草ジュースができたら、今日はミルでミルルの実をすり潰して加える。

 更にひと煮立ちしたら、前半は終了。あとは癒やしの魔力を込めて完成だ。

 発光するポーション液は、幻想的だ。


「はい、完成です」


「わーすごーい」

「ほう、なかなかの手際だったな」


 今日も観戦している人がたくさんいて、人だかりができていた。

 まだ恥ずかしいけど、外で作っている以上、隠れようもない。

 それに昨日、実演販売は集客効果が高いことも、分かったので、ワザと今日も目立っちゃって恥ずかしくて、柄じゃないけど、でも背に腹は代えられないもの。


 午前中の販売は順調に進んだ。

 みんな作成途中を見ているので、ただの「薬草水」とは違うことを理解してくれている。

 薬液をポーション瓶に移し替える作業をするそばから、ポーションが売れていく。


 基本的に試験管型瓶に一杯分が適量だ。少なく感じるかもしれないけど、エキスが濃縮されさらに癒やしの魔力の増幅効果で、軽い怪我くらいなら十分な効果が出るはず。


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