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3 初めての露店だよ


 お水を飲んで一服したら、行動開始だ。

 馬車を乗り継いできたので、軍資金に乏しい。このままだと何日もしないうちにおまんま食い上げだ。


 大通りの横にある長細い公園みたいな場所がフリーマーケットになっていた。

 さっそく一軒ずつ丁寧に見て回る。


「ポーションも売ってるね。でも……」


 うん。なんか品質があまりよくないようだ。

 フリマだから使用期限が近いものかと思ったけど、そうでもないみたいだし。

 初心者さんの練習用の製品なのかな。


 確かに薬草も売ってはいるけれど、低級というかちゃんとした薬草がない場合の代替用の草ばかり。

 この薬草でもちゃんと処理をして、錬成すれば低級ではあるけれど、それなりのポーションになるはずなのに、他のポーションはどれも質が悪い。


「薬草ください。えっと、ここからここまで、全部」

「はいよ、まいどあり」


 薬草の束を購入する。お値段はそんなに高くない。

 この露店の薬草は、今朝取れたばかりに見えるし、品質そのものはそれほど悪くない。

 そうなんだ、悪いのはポーションにする処理のほうだと思う。


 それから薬瓶を購入する。


 ポーションを作って売るつもり。

 王都に来てから初めての錬成だ。ちょっと緊張する。


 薬草をナイフで刻み、なるべく細かくなるようにしていく。

 かばんから携帯用簡易錬金釜を出して、お水と薬草を投入する。


「気合い入れるよ!」

「きゅぅ、きゅぅ」


 ポムも応援してくれるようだ。


 棒でかき混ぜながら、錬金釜に魔力を注いでいく。

 お水はお湯になり、薬草も溶けだしてくる。


「ぐーるぐる。ぐーるぐる」


 注意深く見ながら、かき混ぜる。


 熱の魔力から、癒やしの魔力に切り替えをする。

 ここからが正念場だ。


 緑色だった薬液がほのかに青く発光している。

 ぎゅぎゅっと癒やしの力を込める。


 さらにちょっと強く光った。これが完成の合図だ。

 魔力を止めると光も収まる。


「できたぁ!!」

「きゅきゅぅ」


 漏斗ろうとで試験管型の薬瓶に緑の透き通ったポーション液を注いで、木のふたをすれば完成です。


 ぱちぱち、ぱちぱち。


 ふと周りを見れば、何人もの人が見学していて、一緒に褒めてくれる。

 かーっと恥ずかしくなってくる。

 まさかこんなに大勢に見られていたとは思わなかった。


「お嬢ちゃん、錬金術師なんだね。すごいね」

「よ、錬金術師様」

「お姉ちゃん、すごーい」


 大人も子供もみんな絶賛だった。


「はい、ではポーションの販売をします」


「一本くれ」

「こっちにも一本」

「子供が調子悪くてね。二本ちょうだい」


「あ、すみません。ごめんなさい、一人ずつ順番にお願いします。はい並んで~」


 こうして見学していた人たちにポーションが売れていく。


 これは基本的な低級ヒーリングポーション。

 ポーションは液体の薬全般を呼ぶこともあるし、代表してヒーリングポーションのことを指す場合も多くて、ちょっと紛らわしい。


 そして厄介なのは使用期限だ。

 ポーションはおおむね、十日前後ぐらいしか効果を保持できない。

 水薬は往々にして足が早いんだ。


 その代わりに、即効性があり、怪我も病気もすぐに治る。

 ただしひどい怪我にはそれなりのポーションでないと中途半端な治療になってしまう。


 だから一般の人はあまりストックを持ったりしないで、必要なときだけ買いに来る。

 それなのにあれよあれよと、売れていって完売してしまった。


「きゅぅ、きゅぅ」


 ポムが残りの薬草の周りを飛び跳ねている。

 そこそこ売れて落ち着いてきたら追加を作ろうと思っていたのに、それどころじゃなかった。


「あ、ポム。お腹空いたよね。いいよ食べて」

「きゅっ」


 ポムが触手を伸ばして、薬草を食べ始める。

 ポムは薬草ばかり食べているからか半透明の緑色だ。

 それに対して、多くのテイムされたスライムはくすんだ白かやや水色をしている。

 ポムの半透明はかなり澄んでいて、とても綺麗だ。


 食べた薬草が体の中に入って見えている。しばらくするとこれが分解されて見えなくなるから不思議だったりする。


 ポーションの値段はパンよりも高い相場だったので、かなり儲かった。

 薬草は安いのにポーションは高い。だから錬金術師はかなり儲かる職業だろう。それなのにたくさんいないのは、魔力の問題なのだろうか。

 最低限必要な錬金釜もそれなりのお値段がするから、適性もないのに買えるようなものじゃない。

 錬金釜による魔力での錬成は経験と勘がものを言う技術職だ。

 私は小さい頃から仕込まれたので、子供とあなどるなかれ、それなりのベテランなのだ。


 錬金術師がだだ余りで、王都では駄目な職業とかではなくて安心した。

 なんとかやっていけそうだ。


 今日の売り上げを持ってホクホク顔で宿を探す。

 もう時間は夕方で、日も傾いている。もうすぐ暗くなる。


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