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第355話 籤

ここは斜陽街三番街の、がらくた横丁。

合成屋が、店の倉庫でごそごそしている。

合成屋の倉庫は、

合成を待つもの、合成をされたもの、

材料、使うもの、その他もろもろが置いてあって、

ちょっとした混沌になっている。

合成屋はいつもののっぺらぼうの仮面をかぶって、

義手であちこちごそごそしている。

見えているのかどうかはわからない。

目の穴すらないのっぺらぼうだ。


「あっれー」

合成屋はのんびりとびっくりした声を出した。

「これは旅券じゃあないですか」

きちきち鳴る義手で、旅券をひっくり返したり、

あちこち見てみる。

「期限はまだあるし、どこから紛れ込んだかなぁ」

考える合成屋の足元に、

ひらりともう一枚何か。

「あっれー?」

合成屋は手に取る。

「ペアじゃないですかぁ」

合成屋はうんうん考える。

「どうしましょうねぇ」

考えながら、合成屋は倉庫を出た。

斜陽街の音屋に何かがまぎれることがあるように、

合成屋の倉庫に、紛れることもないわけではない。

しかし、ペアチケットが紛れるなんて、どういうことだろうとは思う。

合成を待つものじゃないし、

合成屋が誰かと出かけるなんて考えたこともない。

「相談しましょう、そうしましょう」

合成屋はこくこくうなずくと、

がらくた横丁に出て行った。


「ペアチケット?」

玩具屋が、くわえ煙草で問い返す。

合成屋はこくこくとうなずく。

「倉庫から出てきました。どうしようかと相談に来ました」

「そうだなぁ…」

玩具屋は考える。

「景品みたいだなぁと思うな」

「景品、ですか」

「くじ引きであたった人にあげるとかどうだ?」

「わお!」

合成屋が妙な声を上げた。

興奮しているらしい。

「くじならこっちにあるから、当たりを一枚入れておくといい」

「わーい」

合成屋はペアチケットを持って小躍りする。

玩具屋は奥から、くじ引きの箱を出してくる。

「暇だったら斜陽街の連中にやらせてみたらどうだ?」

「ナイスアイディーア!」

合成屋は、くじの一枚を取り出し、

つたない文字で当たりを書く。


「それじゃ、皆さんに引いてもらいに、いってきまーす」

合成屋はくじ箱を持ってふらふら斜陽街に出て行った。

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