ここは斜陽街三番街の、がらくた横丁。
合成屋が、店の倉庫でごそごそしている。
合成屋の倉庫は、
合成を待つもの、合成をされたもの、
材料、使うもの、その他もろもろが置いてあって、
ちょっとした混沌になっている。
合成屋はいつもののっぺらぼうの仮面をかぶって、
義手であちこちごそごそしている。
見えているのかどうかはわからない。
目の穴すらないのっぺらぼうだ。
「あっれー」
合成屋はのんびりとびっくりした声を出した。
「これは旅券じゃあないですか」
きちきち鳴る義手で、旅券をひっくり返したり、
あちこち見てみる。
「期限はまだあるし、どこから紛れ込んだかなぁ」
考える合成屋の足元に、
ひらりともう一枚何か。
「あっれー?」
合成屋は手に取る。
「ペアじゃないですかぁ」
合成屋はうんうん考える。
「どうしましょうねぇ」
考えながら、合成屋は倉庫を出た。
斜陽街の音屋に何かがまぎれることがあるように、
合成屋の倉庫に、紛れることもないわけではない。
しかし、ペアチケットが紛れるなんて、どういうことだろうとは思う。
合成を待つものじゃないし、
合成屋が誰かと出かけるなんて考えたこともない。
「相談しましょう、そうしましょう」
合成屋はこくこくうなずくと、
がらくた横丁に出て行った。
「ペアチケット?」
玩具屋が、くわえ煙草で問い返す。
合成屋はこくこくとうなずく。
「倉庫から出てきました。どうしようかと相談に来ました」
「そうだなぁ…」
玩具屋は考える。
「景品みたいだなぁと思うな」
「景品、ですか」
「くじ引きであたった人にあげるとかどうだ?」
「わお!」
合成屋が妙な声を上げた。
興奮しているらしい。
「くじならこっちにあるから、当たりを一枚入れておくといい」
「わーい」
合成屋はペアチケットを持って小躍りする。
玩具屋は奥から、くじ引きの箱を出してくる。
「暇だったら斜陽街の連中にやらせてみたらどうだ?」
「ナイスアイディーア!」
合成屋は、くじの一枚を取り出し、
つたない文字で当たりを書く。
「それじゃ、皆さんに引いてもらいに、いってきまーす」
合成屋はくじ箱を持ってふらふら斜陽街に出て行った。