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第327話 鳴砂

斜陽街番外地。砂屋。

南のほうのアジアの感じの、

すだれのかかっている店だ。

店の中には、区切られて、さまざまの砂があり、

浅い円錐形の編み笠をかぶった、砂屋の主人がいる。

砂屋の主人は、砂の意思が読める。

読んで、砂を彩ることが出来る。


洗い屋でさっぱりした羅刹が、

番外地を歩いていたのは、たまたまだ。

澄んだ音色がする。

羅刹がそちらを見ると、

砂屋の主人が、すだれの近くに風鈴をつるしていた。

「やぁどうも」

砂屋の主人は、会釈をする。

羅刹も浅く礼をする。

「砂のところに行く予定はあるかい?」

羅刹は考える。

羅刹の仕事は、殺意を形にすること。

殺意があればどこにでも行くが、

なければどこにも行かない。

「わからない」

羅刹は、そう答えた。


「砂を探しているんだ」

砂屋は話し出す。

「鳴砂というやつを探しているんだ」

「なきすな?」

羅刹は聞き返す。

「とても繊細で、踏むときゅうとなくんだ」

羅刹は首をかしげる。

そんなものを聞いたことがない。

「美しい海岸にあるといわれているよ」

「そんなところに行く予定はありませんよ」

「どうかな」

砂屋は、編み笠を少し持ち上げる。

そして、羅刹をじっと見る。

「砂に縁があるよ。そのうち行く事もあるさ」

「縁?」

「砂に関するところに行くだろう。そんな縁さ」

「どうせ殺しに行くんですよ」

羅刹はぷいとそっぽを向く。

歩き出そうとする。

「鳴砂は、すごく純粋だよ」

砂屋が後ろから声をかける。

「羅刹君の目のように、純粋だ」

羅刹は足を止める。

そして、サングラスを確認する。

見えるはずがない。

「純粋な殺意、純粋な鳴砂。きっと惹かれあうはずだよ」

「そんなことわかりませんよ」

羅刹はわからない。

少し、いらだった。

砂屋は構わず続ける。

「もし、鳴砂のある場所がわかったら教えてくれ」

「どこ行くかわかりませんよ」

「きっと砂が呼ぶよ。今、そんな縁を持っている」

「もっと、外に行く人に頼めばいいじゃないですか」

「たまたま、縁があったからね」

「わかりませんよ、そんなこと」

羅刹は、すたすたと歩き出した。


ちりーん


風鈴が鳴る。

羅刹は振り返る。

砂屋は店に戻ったのか、

その姿はなかった。

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