目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第325話 構造

鳥篭屋は、少しだけ増えた荷物を持って、

斜陽街を歩いていた。

いつもの鳥篭、小さなものに鈴を入れて、

そして、カセットテープを持っている。

カセットテープには、音屋ではがされた、

鈴の音色が入っている。

「どうしたものだろうね」

鳥篭屋は、足を止めた。

鈴を返そうにも、誰に返すのかわからない。

「聞いとけばよかったかね」

鳥篭屋は、荒くため息をついた。

「しょうがないね」

鳥篭屋は、また、あてなく歩き出した。

手持ちの鳥篭から、鈴のしゃんしゃん言う音がしていた。

それはなんだか心地いい音だ。


鳥篭屋は、電脳中心の前にやってきた。

鳥篭屋は、ネオンで描かれた電脳中心の文字を見ながら考える。

「解析すれば、何かわかるかね」

鳥篭屋は、そう思ったら、電脳中心の扉を開いていた。


「邪魔するよ」

鳥篭屋がつかつかと入って来る。

電脳中心の、電脳娘々は、

コードのいっぱいついたゴーグルとヘッドホンを外しながら、

カウンターにやってくる。

古臭い中国の国民服らしいものを来た、

釣り目の女性である。

「いらっしゃいませ」

妙にイントネーションが、異国風である。

「音色の解析は、できるかい?」

「音色の?」

「変な音を拾っちまってね」

鳥篭屋はカセットテープを引っ張り出す。

「構造解析ですね」

「よくわかんないけどそんな感じだよ」

「了解しました。ちょっと待っててくださいね」

電脳娘々は、カウンターでしゃがみ、

ガチャガチャと音を立てる。

さまざまのメディアを入れる口、

そして、解析するコンピューターをつなげる。

「走」

電脳娘々は命じる。

音が走る。

電脳が解析をはじめる。

鳥篭屋は、かすかに聞こえる鈴の音を聞く。

それに混じって、機械が動作している音が、

細かく聞こえる気がした。


やがて、電脳娘々は、またカウンターの内側でしゃがみ、

カセットテープを取り出した。

「不思議な構造なのです」

電脳娘々は構造解析の結果を、話す。

この鈴は安心させる音色が組み合わさっている。

作られたもの特有の、悩んだ歪みがない。

使うのなら、祝福に使われる音色だろう。

そんなことを、電脳娘々はデータを元に話した。


「祝福ねぇ…」

鳥篭屋はテープを受け取る。

「ちょっと参考になったよ、邪魔したね」

鳥篭屋は、電脳中心をあとにした。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?