鳥篭屋は、少しだけ増えた荷物を持って、
斜陽街を歩いていた。
いつもの鳥篭、小さなものに鈴を入れて、
そして、カセットテープを持っている。
カセットテープには、音屋ではがされた、
鈴の音色が入っている。
「どうしたものだろうね」
鳥篭屋は、足を止めた。
鈴を返そうにも、誰に返すのかわからない。
「聞いとけばよかったかね」
鳥篭屋は、荒くため息をついた。
「しょうがないね」
鳥篭屋は、また、あてなく歩き出した。
手持ちの鳥篭から、鈴のしゃんしゃん言う音がしていた。
それはなんだか心地いい音だ。
鳥篭屋は、電脳中心の前にやってきた。
鳥篭屋は、ネオンで描かれた電脳中心の文字を見ながら考える。
「解析すれば、何かわかるかね」
鳥篭屋は、そう思ったら、電脳中心の扉を開いていた。
「邪魔するよ」
鳥篭屋がつかつかと入って来る。
電脳中心の、電脳娘々は、
コードのいっぱいついたゴーグルとヘッドホンを外しながら、
カウンターにやってくる。
古臭い中国の国民服らしいものを来た、
釣り目の女性である。
「いらっしゃいませ」
妙にイントネーションが、異国風である。
「音色の解析は、できるかい?」
「音色の?」
「変な音を拾っちまってね」
鳥篭屋はカセットテープを引っ張り出す。
「構造解析ですね」
「よくわかんないけどそんな感じだよ」
「了解しました。ちょっと待っててくださいね」
電脳娘々は、カウンターでしゃがみ、
ガチャガチャと音を立てる。
さまざまのメディアを入れる口、
そして、解析するコンピューターをつなげる。
「走」
電脳娘々は命じる。
音が走る。
電脳が解析をはじめる。
鳥篭屋は、かすかに聞こえる鈴の音を聞く。
それに混じって、機械が動作している音が、
細かく聞こえる気がした。
やがて、電脳娘々は、またカウンターの内側でしゃがみ、
カセットテープを取り出した。
「不思議な構造なのです」
電脳娘々は構造解析の結果を、話す。
この鈴は安心させる音色が組み合わさっている。
作られたもの特有の、悩んだ歪みがない。
使うのなら、祝福に使われる音色だろう。
そんなことを、電脳娘々はデータを元に話した。
「祝福ねぇ…」
鳥篭屋はテープを受け取る。
「ちょっと参考になったよ、邪魔したね」
鳥篭屋は、電脳中心をあとにした。