斜陽街番外地。
八卦池と呼ばれる池がある。
スカ爺と呼ばれる仙人のような老人が、
いつも池を覗き込んでいる。
電脳につながっている池らしいが、
詳しいことは、よくわかっていない。
いつものようにスカ爺は、八卦池のほとりで、
池の中を覗き込んで、うんうんうなずいたり、
杖で中をかき回したりしている。
眠っているようにも見えるし、
そうでないようにも見える。
スカ爺がたたずんているそこに、
路地から声が聞こえた。
子どもの声だ。
子どもたちがはしゃぎながら、
チョークで線路をつなげている。
列車を走らせている子どももいる。
子どもたちはきっと、列車遊びをしているのだろう。
スカ爺はいつものように、たたずんだままだ。
子どもたちも気にしない。
気にしなけれど、チョークで八卦池の近くあたりに、
何かを描いている。
がたんごとん、がたんごとん、
ぷしゅー
子どもたちが一休みする。
線路役の交代の相談や、
列車役の相談、
どこへ向かおうかの相談。
あっちがいいのこっちがいいのと、
きゃいきゃい大騒ぎになる。
大事にされているチョーク。
大事にされている列車。
楽しげな子どもたち。
そして、まもなく役を変えて、
列車と線路が動き出す。
がたんごとん…
子どもたちは線路を描き、
また、路地を入っていった。
スカ爺は八卦池のほとりから、
子どもたちが休んでいたところに降りて来る。
そこには、駅が描かれていた。
読みにくいが、多分ここを駅にしたのだろう。
周りには、駅のほかに、
花や人やらの落書きがされている。
花いっぱいの駅というのも、いいのかもしれない。
列車の旅を、子どもたちはしている。
この斜陽街を出て行った先でも、
きっと、列車の旅は、似た様な物だとスカ爺は思う。
スカ爺は、子どもたちが描いた駅を杖でつつく。
なんとなくではあるが、
子どもたちのたくさんの思い出の一つに、
こんな風景があってもいいかもしれないと思った。
スカ爺は八卦池のほとりに戻り、
ゆっくり池をかき回した。
スカ爺に、情報が映し出される。
何が伝わるのかは、他の人にはわかりにくい。
それでもスカ爺は、微笑らしきものを浮かべ、
八卦池にたたずんでいる。
がたんごとん。
遠くで列車の音がした気がした。