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第319話 戦争

どこかの扉の向こう。

斜陽街でないどこか。


アキ姫は穏やかに日々を過ごしていた。

竜神の間に行ってから、歴史に少し興味を持った。

それなのに、歴史学者はなかなか来なかった。

アキ姫は不満だったが、

歴史以外の勉学などに励むことで解消した。


竜神。

それがずっと引っかかっていた。


ある日の午後。

アキ姫は中庭に猫とともにいた。

猫が不安げに鳴いた。

アキ姫は空を見る。

空が…割れた気がした。

真っ赤になって割れた気がした。

アキ姫は、不安にかられ、猫を抱きしめた。

「誰か!」

アキ姫は叫ぶ。

割れた空から、赤い星が落ちるようだ。

轟音がする。

「誰か!」

中庭が、城が揺れる。

「アキ姫!」

シュバルツが駆けてくる。

「アキ姫!ご無事でしたか!」

「シュバルツ、これは、これは…」

「アキ姫、落ち着いて聞いてください」

アキ姫はうなずく。

「これは、戦争です」

「せん、そう」

「隣の国が、竜神の力を使って、攻めてきました」

「そんな」

「王族を殺そうと、国王様を、アキ姫様を狙っています」

「うそだ」

アキ姫はカタカタと震える。

シュバルツは、苦い表情をする。

「隣の国の竜神は、この国を滅ぼそうとしています」

「滅ぼす…?」

「星が…落ちてきたのを見ましたか?」

アキ姫はうなずく。

「あの星は、火の星、大地を飲む火だそうです」

「大地を…それでは、国民は」

シュバルツは、アキ姫の手を取った。

中庭から、テラスへと出る。

「見てください」

熱風が吹く。

そこは火の海。

アキ姫の見ていた緑あふれる平和な国は、

先ほどの一瞬で、地獄になっていた。

叫びが聞こえる。

嘆きが聞こえる。

大地を飲む火が、国を飲み込んでいる。

「隣の国が、竜神を解き放った結果です」

「この国は…終わりなのか」

シュバルツはアキ姫の肩を抱く。

アキ姫は瞬きも出来ず、真っ赤な国を見ている。

「アキ姫、聞いてください」

アキ姫は呆然としている。

「この国も、反撃をしようと、竜神の器を使おうとしています」

「竜神の…だと?」

「竜神の血を引くもの、王族を、戦の力にしようとしています」

シュバルツは続ける。

「私は、アキ姫が竜神になることを、反対します」

アキ姫は、手を握った。

「奇遇だな、私も、反対、だ…」

アキ姫は、精一杯強がった。

それが、王族としての誇りだと、アキ姫は信じていた。

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