斜陽街三番街。がらくた横丁。
合成屋は、がらくた横丁の店を回って、
果実のジュースが出来たことを宣伝していた。
「合成屋のジュースですよぉ」
狭いがらくた横丁に、ジュースはすぐに広まる。
中でも喜んだのが、
玩具屋に来ていた、子どもたちだ。
合成屋がのんびり宣伝に玩具屋を訪れたら、
黄色い声を上げて喜ばれた。
「はいはい、ジュースですよぉ」
合成屋はマイペースでジュースを子どもたちに分ける。
子どもたちはぐいっと飲むと、
口々においしいと言い出した。
合成屋はうなずく。
「悩んだんですけど、合成した甲斐がありましたぁ」
子どもたちがおかわりを催促する。
もっともっとと騒ぐ。
合成屋は、ちょっと困ったらしい。
「残りがそんなにないんですよねぇ」
もっともっとと、子どもたちは騒ぐ。
そこへ、玩具屋が助け舟を出した。
「ほら、列車のおもちゃ、直ったよ」
子どもたちは玩具屋に駆け寄る。
「昔の列車だな、これ。よく大事に持っているな」
列車の持ち主の子どもが照れたらしい。
「おもちゃを大事にするみんなに、プレゼントだ」
子どもたちの目が輝く。
玩具屋は微笑む。
そして、玩具屋は箱を一つ取り出した。
その中から一本、白い棒を取り出す。
「これはチョークといって、固い地面に落書きできるんだ」
落書きというところが、子どもの心をくすぐったらしい。
子どもたちがちょうだいと騒ぐ。
「はいはい、いっぱいあるから」
子どもたちはチョークを手にすると、
列車のお礼を言って、外に出て行った。
店には、玩具屋と合成屋が残された。
「白墨といいましたっけ」
「そうだな」
玩具屋は煙草に火を入れる。
「あれもおもちゃですか?」
「子どもの手にかかれば、なんでもおもちゃだ」
合成屋はうなずく。
「なんでもおもちゃ」
「複合させてもいいけど、ストレートもいいかもな」
「複合おもちゃはどうなりましたかねぇ」
玩具屋は遠い目をする。
「遠いところできっと遊ばれているはずさ」
「そうですね、そんな気がします」
玩具屋は煙草の煙を大きく吐いた。
外で子どもたちの声がする。
がたんごとん、子どもたちがはしゃいでいる。
列車を使って遊んでいるらしい。
もっと線路を長くしよう。
そんな声が聞こえた気がした。
白墨の線路は、どこまでも続くのかもしれない。