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第303話 白墨

斜陽街三番街。がらくた横丁。

合成屋は、がらくた横丁の店を回って、

果実のジュースが出来たことを宣伝していた。

「合成屋のジュースですよぉ」

狭いがらくた横丁に、ジュースはすぐに広まる。

中でも喜んだのが、

玩具屋に来ていた、子どもたちだ。

合成屋がのんびり宣伝に玩具屋を訪れたら、

黄色い声を上げて喜ばれた。

「はいはい、ジュースですよぉ」

合成屋はマイペースでジュースを子どもたちに分ける。

子どもたちはぐいっと飲むと、

口々においしいと言い出した。

合成屋はうなずく。

「悩んだんですけど、合成した甲斐がありましたぁ」

子どもたちがおかわりを催促する。

もっともっとと騒ぐ。

合成屋は、ちょっと困ったらしい。

「残りがそんなにないんですよねぇ」

もっともっとと、子どもたちは騒ぐ。

そこへ、玩具屋が助け舟を出した。

「ほら、列車のおもちゃ、直ったよ」

子どもたちは玩具屋に駆け寄る。

「昔の列車だな、これ。よく大事に持っているな」

列車の持ち主の子どもが照れたらしい。

「おもちゃを大事にするみんなに、プレゼントだ」

子どもたちの目が輝く。

玩具屋は微笑む。

そして、玩具屋は箱を一つ取り出した。

その中から一本、白い棒を取り出す。

「これはチョークといって、固い地面に落書きできるんだ」

落書きというところが、子どもの心をくすぐったらしい。

子どもたちがちょうだいと騒ぐ。

「はいはい、いっぱいあるから」

子どもたちはチョークを手にすると、

列車のお礼を言って、外に出て行った。


店には、玩具屋と合成屋が残された。

「白墨といいましたっけ」

「そうだな」

玩具屋は煙草に火を入れる。

「あれもおもちゃですか?」

「子どもの手にかかれば、なんでもおもちゃだ」

合成屋はうなずく。

「なんでもおもちゃ」

「複合させてもいいけど、ストレートもいいかもな」

「複合おもちゃはどうなりましたかねぇ」

玩具屋は遠い目をする。

「遠いところできっと遊ばれているはずさ」

「そうですね、そんな気がします」

玩具屋は煙草の煙を大きく吐いた。


外で子どもたちの声がする。

がたんごとん、子どもたちがはしゃいでいる。

列車を使って遊んでいるらしい。

もっと線路を長くしよう。

そんな声が聞こえた気がした。


白墨の線路は、どこまでも続くのかもしれない。

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