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第301話 歯車

斜陽街三番街、がらくた横丁。

螺子師はお客からの持込の品を見ていた。

「歯車屋ってないですからね」

螺子師はそういうと、品を手にとってしげしげと見た。

手のひらサイズの歯車だ。

きれいな銀色をしていて、

その歯もきらきら輝いている。

客は不安そうな顔をしたらしい。

「大丈夫ですよ」

螺子師は笑った。

「この手の仕組みは得意なんです」

客はちょっと安心したらしい。


螺子師が店を持つには、

仕組みの資格試験のようなものがある。

あらゆる仕掛け仕組みの原点に返り、

その仕組みを螺子でどうにかするものや、

また、他の仕組みの具合の見方などを試験する。

螺子師というのは、そういった試験をクリアしてきた、

一応エキスパートなのだ。


螺子師は歯車をくるくる回す。

普段使わない器具を引っ張り出して、

歯車の調整に当たる。

鋭い目をして、螺子師は歯車を見る。

「ああ、欠けてるのか」

螺子師は歯車を止めると、

器具をガチャガチャいじりだす。

「埋めるには…この素材だと…」

ぶつぶつ独り言を言いながら、確認する。

細かい作業になるようだ。

螺子師は歯車にかかりきりの姿勢になった。


小さな音がする。

螺子師が歯車の調整をする金属音。

相当集中しているらしい。

何も聞こえないような状態だ。


外を子どもがかけていく声がする。

静かな店内に、

螺子師は集中して、

どこかのお客は椅子に座って待っている。


やがて、螺子師は一息ついた。

大きくため息をつく。

「こんなものかな」

螺子師は機材をどかすと、

作業場をちょっと整えた。

「お茶入れますか?」

螺子師はお客に問う。

お客はうなずいた。

「探偵の助手に、いいお茶屋を紹介してもらってね」

螺子師は奥に行くと、

お茶を2杯入れて戻ってきた。

お客はお茶を飲み、ほうとため息ついた。

螺子師は微笑んだ。


「しかし、丈夫な歯車ですね」

螺子師は感想を述べる。

「相当使い込む歯車でしょうね」

お客はうなずき、

「…風のシステムの歯車なのです…」

と、消え入りそうに答えた。

螺子師はうなずき、茶を飲んだ。

「それじゃ、念入りに調節しときますよ」

螺子師は空の湯飲みを置くと、また、仕事場に戻った。

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